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260 1/14(水)
23:31:25
 症状報告(42) ― 新治療方針  メール転送 芦田宏直  No.124  4101 

 
東京女子医大に入って、約一ヶ月。ほとんどの精密検査は終わり、今日は治療方針の発表の日だった。血管異常や膠原病などの疑いもあったが、ほとんどその“疑惑”は消え、やはり「多発性硬化症」と判断するのがもっとも自然(担当医)、という或る意味当たり前の結論となった(こんなあたりまえのことを確認するだけでも検査報告書は4,5センチの厚さのファイルだった)。しかも脊髄の炎症箇所は完治しているとのこと。グリア細胞(http://www.watsonkun.com/shujunsha/200304.html)が損傷箇所のほとんどを修復しているらしい。長いステロイド治療が功を奏したらしい。たしかにMRIの映像をみてもきれいに神経の“通路”が復活している。

「しかしこれだけ見事に復活していても、再発する可能性があるということですね」と私は、先生の診断の発言を追った。「そうですね。それは誰にもわかりません」。

前半はそういった説明に終始した。しかし私にはその説明を聞けば聞くほど不可思議に思うことがあった。そうであれば、今家内の胸から下(そしてもちろん足)にきつい縛りのある意味が説明できない。以前と同じように歩けない意味が説明できない。「炎症が完治している、ということ。にもかかわらず、張りがあるということは、張りは炎症の症状ではなくて、その後遺症ということですね」と尋ねた。「そうですね」と主治医。「ということは、後は、治療の問題ではなくて、リハビリと再発予防の問題だということですか」。「そうですね。リハビリと再発を防止することですね」。

「もう一つ言えることは、炎症もひどい場合にはミエリン梢だけにとどまらず、軸索(神経の束)そのものにまで損傷を与えている場合もあり(http://mmh.banyu.co.jp/068/s068_01.html」、それがリハビリでどこまで復活するのかもリハビリの課題になりますね」(担当医)。「神経の蘇生はリハビリでどこまで可能ですか」(私)、「それは難しい質問ですが、健康な神経が欠損している神経を補うように成長するということはよくあることです。もう一つ言えることは、芦田さんの場合は、長い病院生活で筋肉そのものが衰えていますから、今、神経の損傷と純粋なリハビリの対象とがどんな関係にあるのかはむずかしい問題ですね」(担当医)、「要するに、それは説明の問題ではなく、とにもかくにもリハビリに集中するということですね」(私)、「そうですね」。

あとは、再発予防の問題だ。「今のミエリンの炎症の“完治”がなお内服しているステロイドのおかげだ、ということは有るわけですよね」「そうです。あとはステロイドからインターフェロン(http://www.yomiuri.co.jp/iryou/renai/20030130sr11.htmhttp://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/sinnai/ms_ifn_j.html)に変える時期の問題です」。「ステロイド治療とインターフェロンの投薬とは何が違うのですか」「一言で言うのは難しいですが、ステロイドは免疫力全体を減衰させますが(だから、色々な病気に効くのですが)、インターフェロンベータは多発性硬化症の特定の免疫抗体に対して有効に作用します。従って長期投与しても差し支えない。再発防止には適しています」。「それでは、なぜ、最初からインターフェロンを投与しないのですか?」「炎症が一気に起こった時には、全体の免疫力を減衰させないと対応しきれないからです」「なるほど」「だから、両者を並行して投与する場合もあります」。「なるほど」。要するにインターフェロンに移行することができる程度に症状は回復してきたということだ。

「インターフェロンの副作用は、どうですか」「最初の内風邪の初期症状のように熱が出たりします。或いは心理的には抑鬱状態が出たり … 。しかしそれに対応することはできますから心配はないと思います。これも人それぞれです。ほとんど気にならない人もいますから」「要するに、これもやってみるしかない、ということですね(私は内心、ステロイドで顔が腫れるよりはましだな、と思っていた)」「そうですね」。

これで今日の話の結論は決まった。リハビリに専心することとインターフェロンの投与を開始するということだ。「インターフェロンはいつから投与しますか」「来週から始めたいと思います」。「わかりました。ではよろしくお願いします」。

家内は、神経損傷(軸索損傷)の話を先生がしているとき、勝手に泣いていた。私は「泣いてもしようがないじゃない」と言いながら先生と話を続けていたのだが(もうひとりの女医さんが大丈夫ですか、と家内を気遣っていてくれていた)、それは、昨年末までの闘病に少しばかりの後悔を感じていたかららしい(後で家内から聞いた話)。そんなことで泣いていてはしようがない。それがわかっただけでもありがたいことだ。

担当医とのお話はお昼の一時間を超えた時間だったが、臨席していたその女医さんが夜九時を越えて帰る前に、わざわざ家内のところに立ち寄り、「歩けるようになっておうちに帰りましょう。これから頑張りましょう」と握手をしてくださったらしい。これもありがたいことだ。ここ一年、私は、〈感謝〉という言葉を学びなおしている。


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