[一覧へ戻る

 番号 日付  題名 投稿者 返信元  読出数
157 5/25(日)
23:24:50
 症状報告(16) ― 再々入院その後  メール転送 芦田宏直  No.124  3664 

 
 「多発性硬化症」の治療自体は単純なものだ。入院するたびに毎回「髄液検査」(http://www.ne.jp/asahi/sairingi/home/ippan/ippan-sonota-1.htm)「MRI」検査(http://www.nagasaki-u.ac.jp/nyugaku/setsubi/igaku_byo01.html)を行い、「ミエリン」の異常箇所(http://mmh.banyu.co.jp/068/s068_01.html)を確認しながら ― 「多発性硬化症」とは、諸神経繊維を“絶縁”機能的に包む「髄鞘」が免疫異常のために何らかの“損傷”を受けるというもの(「髄鞘」を形成する「ミエリン」というタンパク質を免疫系が自己攻撃してしまう)、そのため神経伝達が異常を起こし、運動機能や諸感覚を麻痺させてしまう ― 、「ステロイド点滴」(1回3日間連続でそれを断続的に行う)で治療を行うというものだ。

 一番、刺激的な検査はやはり「髄液検査」だ。骨髄に直接(太い)針を打ち込み、髄液を抜き取る。その中のタンパク質の変化を見て取る。「ミエリン」の異常をここで特定できる。こんな検査を誰が思いついたのだろうか。問題は、骨髄に直接(太い)針を打ち込むという外科的な技術。これは下手すると血が噴き出し、黒澤明の時代劇のような惨状を呈してしまう。骨髄にまとわりつく血管を針の出し入れの際上手に裁く腕がいるのだ。血が混じると髄液の濁り具合自体がわからなくなって、何度も太い針を打ち直さねばならなくなる。家内はすでに日赤の神経内科医3人くらいの医師の検査を“体験”しているが、神経内科部長の武田先生はさすがの腕らしい。

 家内はもはや慣れっこになっているが、髄液検査の際の、お尻に近い背中の背後の看護婦、担当医の緊張感がとにもかくにも異常なくらいに高まるのがわかるらしい。3月に入院したときの生まれて初めての髄液検査の時は、「大丈夫ですからね」と婦長自らに思いっきり体全体を押さえつけられたらしい。それで余計に怖くなったらしいが(「大丈夫」だったら押さえつけないでもいいじゃないか、というふうに)、独特な痛さではあるが、何度やっても関係者は緊張しているらしい。イソジン(私はうがい薬のイソジンしか知らなかったが)をしつこいくらいに背中に塗るときから看護婦の手が震えているとのこと。たぶん、これは見ない方がいい検査なのだろう。
 
 それ以外は、外科的にはどうということもない内科的な治療だが、(家内の場合には)ステロイドがよく効くといっても(ステロイド治療はこの病気の場合、もっとも初歩的で軽度の治療法だ)、現代の内科的な治療は副作用との戦いだ。
 
 ステロイド治療には、私が思いつくままにあげても、@コレステロール値があがり、肝機能障害が起こる A皮膚がかさかさになる B顔や上腕部がふっくらする C骨が弱り、骨粗鬆症が進行しやすくなる D感染症にかかりやすくなる E胃酸が多くなる F興奮しやすくなる G血管が収縮し高血圧化するなどなどの副作用が起こる。

 これらの副作用を押さえるために、リピトール、バクタ、バイアスピリンなどの薬が併用されることになる。これらの薬もまた副作用を有しているだろうに。副作用自体の進行や程度は先の“症状”が出る前に血液検査と尿検査で大概はわかる。ステロイド点滴に血液検査と尿検査を並行させながら、副作用(や副々作用)を最小限に押さえる治療が続くことになる。

 幸いなことに、家内の場合はこの2ヶ月間のステロイド治療のほとんどにおいて副作用は出ていない。わずかに顔がふっくらしたくらいか。もともと痩せているからそれもほとんどわからない(この病気の患者には太った人がいない、というのも特徴)。もともと低血圧で、胃腸や肝臓が強い(大して体力もないのに内臓は検査上は強いらしい)、というのも有利だった。

 どちらにしても退屈な治療だが、足が動かないというのはそれはそれで大変。土曜日の朝入院したときには、自宅の中からもはや自分で歩けない。車椅子も用意していないから、クルマまで連れて行くこと自体が大変だった。

 足が使えない人間を動かす,というのどんな感じか、わかりますか。私は介護の経験がないから、脇から抱えようとしましたが、これが結構、力がいる。家内の身長は162センチ。体重は45キロくらい。でも片脇から抱えるのでは、限界がある。それに足(が動かない)と言っても腰から下がダメなので、腰を抱えると“壊れる”ような気がしてどうも腰を抱えたり、腰にさわる気がしない。

 1階玄関のエレベータのところまでは、正面から両脇を引き上げながら降りることができたが、そこから15メートル先に止めたクルマにまでどうしようもなくなり一歩も動けなくなった。これほど愛車が遠くに見えたことはない。さすがに私もどうしようもなくて笑ってしまったが(土曜の早朝ということで誰にも見られていなかったのが幸い!)、こうなったら、“だっこ”しかない。一気に身体全体を投げ上げ、48歳8ヶ月の彼女を“だっこ”(私の記憶では35年を越える家内との交際歴の中で一度あるかないかの出来事だ)。これがうまくいった。体力(とスポーツ)にはそれなりに自信があったが、久しぶりの男技(オトコワザ)だった。家内は「大丈夫? 大丈夫?」と悲鳴をあげ連呼していたが。

 神経が通じていない左足は、ただぶらっとしている(この病気の症状の一番ひどいとき)。これは風景としても奇妙。どっちに向いているのかさえ本人がわからないため、下手をすると(構造的に動けない方へ曲がってしまって)関節をダメにし、骨折をする。だから症状がひどいときは家内も自分の手で自分の足の向きを整えたりしている。こういった患者を抱えて歩かせる、というのは、かなり気を遣う。“だっこ”が一番(邪魔くさくなくて)便利だが、20メートルを超えると体力的に持たない。寝たきり老人の介護などをしている人はどうなのだろう。私の家内の場合は、単なる症状の諸段階の一つに過ぎないが、動けない人間ほど扱いにくいものはないだろう。サポートの域を超えている。

 私は自宅マンション・エレベータまえの1F共用玄関で立ちつくしただただ笑うしかなかった。これに似た経験が一度だけあることにそのとき気づいていた。京都若狭湾の高浜(http://masudahp.hp.infoseek.co.jp/NPark/qnpark03.html#np7)という海水浴場で小学5年生の頃、おぼれかけた20歳くらいの少し太った人にあてにされて抱きつかれ(その人の重さで一気に5メートルくらい沈んでしまって)、自分自身がおぼれそうになったことがあった。そのとき、おぼれかけている人に安易に近づいてはいけないという(小学生ながらも)教訓を得た。その教訓が、この自宅マンションの玄関で活かされていないことに気づくのが遅かった(「遅かった」は田口トモロヲ調http://www.nhk.or.jp/projectx/narrater/narrater_top.htm)。

 今夜あたりから、はやくもステロイドが効き始め、足の一部が再び動き始めたらしいが、今度ばかりは徹底して治さないと体力的(体力回復的)にも悪循環になってしまうだろう(これまでのような早期の退院は期待しないほうがいい)。リハビリとステロイド治療が相乗効果的に効き始めると本格的な回復過程にはいるのだろうが、それがどの時期から始まるのか、誰にもわからない。ステロイドよりははるかに再発を止める効果のあるインターフェロンの投薬も選択肢の一つだろうが、そこまで深刻でもないとの判断も(医師グループの中には)あるようだ。こんくらべの時期なのだろう。

 早期の退院は期待しないでおこうと思っていたら、今回はなぜか(運良く? 運悪く?)個室が空いていて「芦田さん、個室が空いていてよかったわね」だって。一日2万円もする。病気というのは、収入も減るし、出費もかさむ。体も弱るが社会的にも弱体化する。しかし渋谷は知ったし、広尾も(広尾ガーデンヒルズも聖心女子大学も東京女学館も)制覇した。一日2万円で何を学ぶのかが、私と家内(とついでに言えば息子)の課題だ。


124 家内が緊急入院しました。 メール転送 芦田宏直 ↑この記事を引用して返信を書く
    ┣ 125 症状報告 メール転送 芦田宏直
    ┣ 128 症状報告(2) メール転送 芦田宏直
    ┣ 134 症状報告(3) メール転送 芦田宏直
    ┣ 135 症状報告(4) メール転送 芦田宏直
    ┣ 136 メール転送
    ┣ 137 症状報告(6) ― フライパンとフライパンカバー メール転送 芦田宏直
    ┣ 138 症状報告(7) ― 退院が決まりました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 139 症状報告(8) ― 自宅前の桜 メール転送 芦田宏直
    ┣ 140 返信: 家内が緊急入院しました。 メール転送 岡村 和恵
    ┣ 144 症状報告(9)― 再入院しました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 145 症状報告(10) ― この病こそ、気の病。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 147 症状報告(11) ― 分別ゴミの思想と治療の言葉 メール転送 芦田宏直
    ┣ 148 症状報告(12) ― 料理、受付、再退院 メール転送 芦田宏直
    ┣ 149 症状報告(13) ― 仮退院 メール転送 芦田宏直
    ┣ 150 再入院!大変ですよね。 メール転送 岡村
    ┣ 152 メール転送
    ┣ 153 症状報告(14) ― 本日(14日)、退院します。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 155 症状報告(15) ― 再々入院 メール転送 芦田宏直
    ┣ 157 症状報告(16) ― 再々入院その後 by 芦田宏直
    ┣ 159 症状報告(17) ― そして息子が倒れた メール転送 芦田宏直
    ┣ 162 症状報告(18) ― 〈人生〉を語ってはいけない メール転送 芦田宏直
    ┣ 163 症状報告(18)補遺 ― 人生を語ってはいけない メール転送 芦田宏直
    ┣ 164 症状報告(18)続・補遺 ― 人生を語ってはいけない メール転送 芦田宏直
    ┣ 169 症状報告(19) ― 松阪牛騒動と食器洗い機 メール転送 芦田宏直
    ┣ 170 症状報告(20) ― 女子高生を許さない メール転送 芦田宏直
    ┣ 174 症状報告(21) ― 『サミット』と『さえき』 メール転送 芦田宏直
    ┣ 175 症状報告(22) ― 仮退院の三日間はスリリング メール転送 芦田宏直
    ┣ 177 症状報告(23) ― 鹿児島小平さんからのメール メール転送 芦田宏直
    ┣ 179 症状報告(24) ― 鹿児島・小平さんからの返信 メール転送 芦田宏直
    ┣ 181 症状報告(25) ― 退院後の検査 メール転送 芦田宏直
    ┣ 190 症状報告(26) ― また入院してしまいました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 191 症状報告(27) ― 感謝します。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 192 症状報告(28) ― 先生と家内に呼ばれた メール転送 芦田宏直
    ┣ 194 症状報告(29) ― 多発性硬化症ではない? メール転送 芦田宏直
    ┣ 216 症状報告(30) ― 『免疫革命』の革命性 メール転送 芦田宏直
    ┣ 237 症状報告(31) ― 日赤は救急病院だった。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 238 症状報告(32) ― 突然の来客と東京女子医大への転院 メール転送 芦田宏直
    ┣ 240 返信: 家内が緊急入院しました。 メール転送 山田千果
    ┣ 241 返信: 家内が緊急入院しました(千果さんへの返信)。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 243 症状報告(33) ― 拾う神 メール転送 芦田宏直
    ┣ 244 症状報告(34) ― 16日に東京女子医大に転院 メール転送 芦田宏直
    ┣ 245 症状報告(35) ― 転院、無事終了 メール転送 芦田宏直
    ┣ 246 症状報告(36) ― 牡蠣フライはもう作らない メール転送 芦田宏直
    ┣ 248 返信: 症状報告(36) ― おいしい牡蠣フライの作り方 メール転送 芦田宏直
    ┣ 249 症状報告(37) ― フジテレビ跡地の公園 メール転送 芦田宏直
    ┣ 254 症状報告(38) ― 休むための大掃除 メール転送 芦田宏直
    ┣ 257 症状報告(39) ― お正月と紅白のその後 メール転送 芦田宏直
    ┣ 258 症状報告(40) ― 母親が泣いていた メール転送 芦田宏直
    ┣ 259 症状報告(41) ― 「お見舞い」ではなくて、「看病」 メール転送 芦田宏直
    ┣ 260 症状報告(42) ― 新治療方針 メール転送 芦田宏直
    ┣ 263 症状報告(43)  ― いちごは腐っている メール転送 芦田宏直
    ┣ 266 症状報告(44) ― 本当の「症状報告」 メール転送 芦田宏直
    ┣ 267 症状報告(45) ― 帰ってきました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 268 症状報告(46) ― とりあえず、「合格」しました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 269 症状報告(47) ― また帰ってきました(ナガシマは入院しましたが) メール転送 芦田宏直
    ┣ 280 症状報告(48) ― また再発しました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 281 症状報告(49) ― 「また再発しました」続編 メール転送 芦田宏直
    ┣ 284 症状報告(50) ― 長嶋監督に会った。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 290 症状報告(51) − 明日、帰ってきます。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 301 症状報告(52) ― 退院します。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 302 症状報告(53) ― こんな返信がありました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 311 メール転送
    ┣ 317 症状報告(55) ― またパルス メール転送 芦田宏直
    ┣ 318 症状報告(56) ― 説明に誤りがありました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 319 症状報告(57) ― 検査結果は「異常なし」 メール転送 芦田宏直
    ┣ 320 症状報告(58) ― 「暗い」と言われた メール転送 芦田宏直
    ┣ 345 症状報告(59) ― またまた点滴 メール転送 芦田宏直
    ┣ 348 症状報告(60) ― まだ良く生き延びている メール転送 芦田宏直」
    ┣ 362 症状報告(62) ― 特技は難病 メール転送 芦田宏直
    ┣ 375 症状報告(63) ― 気分は高木ブー メール転送 芦田宏直
    ┣ 407 症状報告(64) ― 帰り道が危ない メール転送 芦田宏直
    ┣ 1053 症状報告(65) ― 退院後1年経ちました。 メール転送 芦田宏直
    ┣ 1076 症状報告(66) ― 台風とキリスト教 メール転送 芦田宏直
    ┣ 1115 症状報告(67) ― またまた再発、再入院 メール転送 芦田宏直
    ┣ 1116 症状報告(68) ― 家内も私も元気です。 メール転送 芦田宏直


 [一覧へ戻る]

157番まで読んだとして記録しました。[新着]モードで未読を表示します。