番号 | 日付 | 題名 | 投稿者 | 返信元 | 読出数 |
210 | 10/12(日) 02:06:26 |
神戸の夜とシェラトンホテル | 芦田宏直 | No.207 | 6457 |
新神戸の駅をおりて、まず、失敗したのが、バス停。神戸ベイシェラトンまで専用のバスで行こうと、バス停で待つことにした。インターネットで調べると、毎時間6分と36分に出発するとあったので(http://www.sheraton-kobe.co.jp/page/accessmap/index_access.html)、それを信じて、25分から、36分発のバスを待っていた。ところが36分を10分過ぎてもバスが来ない。そこでホテルに電話して、「こういうことはよくあるのか」と聞いたら、「10分くらい遅れることはありますが、15分過ぎても来ないようであれば、もう一度お電話下さい」とのこと。10分と15分との違いがもう一つ納得いかなかったので、次は、バス会社(みなと観光バス)に電話した。「遅れているとの連絡は入っていませんが、運転手と連絡を取ります。お客様の電話番号(携帯)をお教え下さい」。この対応は、ベイシェラトンよりも親切。ベイシェラトンも、私の電話があった段階で、こう対応すべきだった。1分も経たない内に電話があった。「お客様、15時台には36分発はございませんが … 」。「あっ、そう。スミマセン。私の早とちりでした。6分、36分と覚えていたので、そんな空隙、見落としていました」。バカな間違いをしたものだ。最初からタクシーで行けば良かったのだが、財布には1680円しかなかったので、バスに決めていた。 そこで今度は銀行を探さねばならない。フロアーを上がって、小さな駅の書店に立ち寄り、レジの中年のおばさんに、キャッシュコーナーはないかと尋ねた。仕事をさしおいてレジで熱心に雑誌を読む、この下がり眼鏡のおばさんに最初からいい印象はなかったが、「その階段をおりて、そこで人に聞けばわかる」なんて、答えが返ってきた。バカヤロー、と思いながら、銀行へ行く気もなくなった。そこで、電車を乗り継ぐことに。 事前の調べでは、たしかまず「三宮駅」を目指せばいいはず。地下鉄を使って一駅、200円。三宮駅からがわからない(思い出せない)。そこで、地下鉄から地上へ上がるエスカレータの途中でおいしそうにナッツ付きのチョコレートアイスクリームを食べていた中学生風の子供に(口の周りにチョコレートが付いていたが)、尋ねた。「ここから六甲アイランドに行きたいのだけど、どう行けばいい?」。「そんなん、駅の人に聞いたらええやん」。「あっ、そう」。このくそがき。当たり前のことをいいやがって。そこでそのガキの忠告に従って、駅の人に聞いた。が、この駅員も大きなマップを取り出してきた。ちいさな神戸の街で、六甲アイランドに行く乗り物がわからないとはどういうことだ(しかもJRのターミナル駅「三宮」の駅員が)。関西の人間は、行き先を教えるのが下手(路上でも)、というのは前からわかっていた。というよりも、行き先を教えるのは東京の人がうますぎるのだ。田舎者の集まりである東京人は、自分が(大都会東京で)行き先に不安を覚えた経験から、道を聞く人に親切なのである。尋ねる人も多いから、教え慣れている。関西は、すべての道が自分の道だと思っているから、それをいちいち教えるのが面倒くさいのだ。 しかし、「三宮」の駅員が六甲アイランドへのアクセスを知らない、ということで、私は少々動揺した。そんなに六甲アイランドは遠いのかと。やっぱりタクシーの方が良かったのかもしれない。そう思いながら、JR「住吉駅」で「六甲ライナー」に乗り換えればいい、というのがわかった。ホームに出ると、京都方面行きに乗ればいいというのがわかったが、快速や普通があるようで、「住吉」に止まるかどうかがすぐにはわからなかった。待っていたサラリーマン風の男性に、入ってきた電車が住吉駅に止まるかどうか急いで聞いたが、「わからない」と言われ、ショック。いったい、この物知り風に立っているサラリーマンはどこの人間なのか? それをそばで聞いていた人が、(私のショックをわかっていたように)親切に「止まりますよ」と笑みをこぼしながら答えてくれた。きっとこの人は、大学時代、東京にいた人だ、と勝手に思いこんでしまった。関西人に道やアクセスを聞いてはいけない(私も関西人だが)。 新神戸から三宮(5分以内)、三宮から住吉(10分以内)。住吉から「六甲ライナー」で「アイランドセンター駅」(10分以内)。六甲ライナーはモノレール。これは乗り心地がわるかったが、景色はよかった。神戸という街が、無粋な工場地帯に隣接しているのがよくわかる。しゃれた街並みとは落差が大きい。こういった隣接の仕方は、東京や横浜ではあまり見られない。 それに六甲アイランドは、高層マンションが乱立しており、完全な人工都市。江東区や幕張新都心、お台場あたりの人工都市に(このアイランドだけを切り取れば)似ている。こんな人工都市、住みづらいだろうな、と思った。散歩も人工的な「緑道」を歩かされているという感じだ。寄り道する風景がどこにもない。この都市を設計した人間は、「歩く」ということがどういうことであるのかを何もわかってはいないのである。 それに高層マンションが風景がいい、というのがウソだ、というのも発見だった。私は神戸ベイシェラトンの19階から見えるいくつかの高層マンションを見ていたが、多分、高層の視線が快感であるのは、自分だけが高層であるときなのであって(神の視線のように)、同じ視線がいくつもあるときには、かえって、間近にある他の高層の視線が(直接に目があったりはしないが)目障りなのである。神経的にノイズになってしまう。夜はまだましだが、昼は他の高層ビルが邪魔でしようがない。視界は(客観的には)充分に開けているのに、邪魔でしようがない。視線が開けている方にではなくて、高層建物の方に吸引され、目障りなものになってしまう。心理的に落ち着かない。高層階の居住者は、たぶん神経症で悩まされるのではないだろうか。たった1泊でも気分的にまいった。 それに、神戸の街とこの島とは「六甲ライナー」と何本かの道路によって繋がっているのだが、19階から見える、そのラインは、まるで一気に両者(神戸の街と島の住民)の行き交いが狭い通路に押し込められるような狭所神経症的な風景に見えた。それも異常なことだ。 神戸の夜景がきれい、というのにも解説が必要だ、この街の夜景はどこまでも人工的だ。東京の夜景は、人々が仕事をしている灯りであったり、生活をしている灯りだが(深夜遅くまで灯りがついているとしたら、それは実際に人がまだ活動している灯りだが)、神戸の夜景は夜が遅くなって深夜に至っても(みんなが寝静まっても)、灯りが変わらない。変だなと思ってよく見てみると、常夜灯のような灯りが道沿いにかどうかわからないが点々と続いている。そういった灯りが、神戸の夜を彩っている。これは人々の活動の灯りではなく、(人の生死に関係のない)人工的な夜景だ。六甲アイランドの人工的な灯りと同じ夜景が六甲山の住宅地を含めた中腹まで続いているのである。これを「美しい」というのは、せいぜい若い女の子とのデート止まりでのことだろう。 シェラトンホテルのサービスについてだが、私が、こういった出張について一番悩むのは、ワイシャツの携帯。カバンに入れるといかに丁寧にハンガーで収納してもしわや折り目が付く。一番いいのは、ホテル(現地)でクリーニングに出すことだが、一泊の出張では、このシェラトンの場合、朝10:00仕上げが一番早い時間。講演開始は、朝9:20だから間に合わない。そこで私は、東京から電話して、しわや折り目を取るアイロンがけをしてくれないか、聞いてみた。「クリーニング部門では、そのようなサービスはございませんが … 」とフロントの今田さんの弁。「誰でもいいから(誰でも私よりはうまいだろうから)、アイロンがけしてくれないかな」。「少々、お待ち下さい」。(しばらくして)「ルームサービスの者の作業になりますが、それでよろしければ、アイロンがけさせて頂きます」。「あっ、そう。それはありがたい。どうすればいいですか」「フロントにお着きになったら、ワイシャツをお預け下さい」。「わかりました。ありがとうございます」、と、この件は解決。 フロントにチェックインしたのは講演の前日16:00くらいだったが、「芦田様で御座いますね。今田です。ワイシャツをお預かりいたします」。私が、今田さんおられますか、と尋ねる前のこの対応。ふだんファミリーレストランの顧客対応くらいしか経験していないものだから、なかなか気持ちのいいものだ。「今夜11:00くらいに頂けますか」。「わかりました。お部屋までお持ちいたします」。 シェラトンホテルの室内はそこそこのものだったが、一番許せないのは、テレビ、冷蔵庫、クロゼットなどが大きな扉付きの本立て(横2.5メートル、縦2.3メートルくらいの)のような箱に集中的に閉じこめられていて、これが使いつらい。設置場所もツインベッドの足先になっているから余計に使いつらい。そもそもテレビが目線よりも高いところにあるというのが不自然。昔公園でプロレスを見るのに人がたかっていたのを思い出す高さだ。要するにベッドで寝ながら見なさい、ということだろうが、そんなバカな強制はない。この位置は、私が講演原稿を練っているデスクの後ろになるため、いちいち席を立って身体を回さないとニュースなどが見れない。不便だ。 久しぶりのホテルで勉強したことがある。お風呂に入ったのだが、バスタブから、透明の硝子に囲まれたシャワールームが見える。ここはシャワールームがあるんだ、と納得していたら、数分後にそうではないことがわかった。お風呂で身体を洗おうと、手を後ろに回してカーテンを引こうとしたら、カーテンがない。あれっ、と思ってふと考えた。そうか、洗うのは、あのシャワールームで、やれということか、と気づいた。ここは浸かるだけなんだ、とわかった。何という田舎者か(あとで、学校で旅行好きの山田先生に聞いたら、「そんなの当たり前のことよ」と威張られてしまった)。そこで身体をぬらしたまま、シャワールームへ。ところが数分後に、腹が立ってきた。シャワールームの弱点は座ることができないということだ。だから、足(の裏)が洗えない。立ったままでどうやって洗うのだ。無理に洗おうとすると、石けんですべってしまって、危ない。しかも周りはガラス。おっとっと、おっとっと、を繰り返しながら、シャワールームで片足立ちできるのはフラミンゴぐらいだろう、と思うしかなかった。 そこで、足の裏は、バスタブで洗おうとしたが、これもやはり身体が硬いためかなかなか洗いづらかった。要するに“外人”はたぶん足(の裏)を洗う風習がないのだと思う。石けんですべるシャワールームで足(の裏)を洗うのは神業に近いからだ。 しかしそれにしても、日本のお風呂は本当に合理的だ。狭いスペースで洗うことと浸かることとを両立させている。おけと椅子で、無理な体型を強いずに身体の全身を洗うことができる。わざわざ、バスタブとシャワールームを分けてまでコストをかけている割には、身体が充分に洗えない、この不自由さはなんだ? 次の日、講演が終わって、(参加者から)少し頂き物をもらったが、私は、荷物を持つのが大嫌い。カバンは仕事が終わったらいつも宅急便で送ることにしている。iPod(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=22)だけを手元に残して、後はすべてカバンの中に閉じこめた。iPodはスーツの内ポケットにはいるから、帰りは手ぶらで済む。財布もクレジットカード類をすべて抜いてカバンの中に閉じこめる(現金は2千円程度をポケットに残してすべて銀行に預け入れる)。だから、頂き物の処理に困ったが、一部はカバンの中に入れて、一部はホテルの人にお世話になったお礼に差し上げることにした。 丁度19階には専用の受付ロビーがあり、そこにおられた女性の方に「これ、頂き物ですが、受け取ってください。お世話になりました」。「芦田様で御座いますね。ワイシャツの方はいかがでしたか」なんて、聞き返された。あのワイシャツ騒動は結構有名になっているみたいだ。「いやいやこの通り、助かりました」。「ありがとうございます。またのご利用をお待ちしております」。 その足でエレベータで下りて、チェックアウトを済まそうとしたら、ロビーでは、「頂き物、ありがとうございます」、とすぐさまのご挨拶(4、5人おられたみなさんに挨拶される)。これには恐縮した。19階からフロントに降りてくるたった数分間の出来事だったが、なかなかの“コミュニケーション”だ。気持ちの良いチェックアウトができた。 シェラトンホテル、ここまでは90点以上だった。東京から、帰路の新幹線に乗っていたら、学校から電話があり、シェラトンに忘れ物をしたらしい。ICレコーダと128MBのメモリースティックだ。すぐに宅急便で送りますとの連絡が学校にあったらしい。金曜日の午前中に校長室に届いたが、その宅急便の伝票の「お届け先」や「依頼主」の文字が美しくなかった(丁寧に書かれてはいたが)。「ゲストリレーションズ」担当の「野村」と記載があったが、野村さん、こういった場合は、それなりの字を書くべきです。ホテルというところは、そこまで気を遣わないとダメです。 もう一つ、私は、宿泊した部屋がどれくらいの費用がかかるのか知りたくて、金曜日の18:00に東京からメールで尋ねておいた。実際に知りたいということもあったが、実はメールの処理にどれくらい時間がかかるのかの方が関心があった。ここでもシェラトンは失敗している。次のような返事が届いたのが、土曜日の夜の11:06。30時間近くたっての「返信」だった。これではビジネスにならない。19階から降りてきたら、すぐにご挨拶頂いた、あのフロント対応の心地よいスピードが、メールではまったく様(さま)にならない。フロントに置いてあったパソコンもOSがWindows98のままだったが、このあたりの“IT化”がシェラトンではまだ遅れている。これらは、このホテルの改善点だ。 神戸ベイシェラトンの野村と申します。突然のメールをお許しください。 芦田様、この度はご丁寧なメールをいただきまして、恐縮しております。 私どものサービスをお気に召していただき、大変光栄に思っております。 今回ご宿泊いただきましたお部屋は、タワーズフロアのデラックスツインでございます。 通常の料金は43.000円(一室/税金・サービス料別々・朝食付)でございます。 なお、それに加えてタワーズフロアにご宿泊のお客様専用のラウンジを19階にご用意しております。こちらのラウンジではご滞在の間、ソフトドリンクやアルコール類を(17時から19時の間)無料でご提供しております。詳しくはお電話でもメールでも結構でございますのでお気軽にお問い合わせください。 それでは次回のご来館を心よりお待ち申し上げております。 神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ ゲストリレーションズ アシスタントマネージャー 野村 豪 □□■■■■■■■■■■□□■■■■■■■■□□■ □■■■KOBE BAY SHERATON HOTEL&TOWERS(772) ■■■GUEST RELATIONS ■■TEL 81-78-857-7000 ■FAX 81-78-857-7001 ■E-MAIL gro@sheraton-kobe.co.jp ■■■■■■■■■□□■■■■■■■■□□■■■■ VOTED#1-FOUR YEARS IN A ROW! Thanks for making Starwood Preferred Guest hotel "Program Of The Year" for the fourth consecutive year! あの部屋は、43000円もしたのか、と思ったが、それにしても19階の専用ラウンジで「ソフトドリンクやアルコール類を(17時から19時の間)無料で」利用できるのを知らなかった。それなら、わざわざ、ホテルの外へ出て、ファミリーマートで飲み物を買い込むこともなかったのだ。 |
○ 207 明日は神戸へ出張。 芦田宏直 → ↑この記事を引用して返信を書く ┣ 208 ただいま神戸ベイシェラトンホテル ロビーにいます。 芦田宏直 ┣ 209 田中さんと会っていましたが、原稿も書き上げました。 芦田宏直 ┣ 210 神戸の夜とシェラトンホテル by 芦田宏直 ┣ 211 講演内容 ― 「教育改革としての自己点検・評価」 芦田宏直 |
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