(その3)
1. 自身の話によると、N氏は、カシオペアを元に戻す作業を初めてから、ようやく説明書にきちんと目を通し、ハイバネーション機能を作成するのには付属CD-ROMの中にある特殊なプログラムに頼らなければならないということを発見したようだ。私もICAの会員の方のパソコンを調整したり修復をしたりする仕事を請け負ったことがある。そのときに真っ先にしていたことは、会員の方のパソコンのメーカーと機種、説明書の内容と状況の確認だった。そして、何らかの問題があれば、その時点で会員の方には結論を伝えていた。つまり、この手の仕事は実際に作業に入る前から仕事は始まっているのである。マシンに関する十分な情報も得ずに作業に入ることなど(ICAでは)あり得ない。
2. FDISKを使ってマスターブートレコードを作成し直すのに、必ずしもカシオペア用のフロッピーディスクドライブを用意する必要はないのではないか。実は、マスターブートレコードの壊れたハードディスクを本体から取り出し、他のパソコンに取り付けてそのパソコンでFDISKによってマスターブートレコードを直すという手もないわけではない。この場合には、N氏の指示に反して、わざわざカシオペア用のフロッピーディスクドライブを用意する必要はない。
3. CD-ROMドライブも同様である。一般に、ノートパソコンに他社製のCD-ROMドライブを取り付けそこからシステムをインストールするのは簡単ではない。ノートパソコンをひとまずフロッピーディスクドライブから起動して、さらにCD-ROMドライブを認識させるには、PCMCIAスロット用のデバイスドライバーとCD-ROMを接続するPCカード用のデバイスドライバーを起動用のフロッピーディスクに組み込んでおかなければならないからだ。この場合には、MS-DOSの知識が必要だ。Windows95/98のようなわけにはいかない。しかし、その技術があればCD-ROMドライブなど、基本的にはどのメーカーのものでもいいのである。(ICAでは、このテクニックでノートパソコンの補修を行っていたのである。)ノートパソコンの改造を扱うほどの業者であれば、MS-DOSの知識ぐらいあるだろうしCD-ROMドライブの一つや二つは作業場に転がっているだろう。だから、客である芦田部長サイドで、わざわざカシオペア用のCD-ROMドライブを(購入して)用意する必要はないのではないか。
4. フロッピーディスクドライブのない状態で、N氏は芦田部長のカシオペアの改造を引き受けたのである。いまさら、「こういうことがあるから、うちはフロッピーディスクドライブなしではパソコンをお預かりしないようにしているんですよ。」とはどういうことだ。
1. 改造をあきらめてカシオペアを購入時と同じ状態に戻す場合には、つまりもともと搭載されているハードディスクのマスターブートレコードを修復するには、ポートリプリケーターとフロッピーディスクドライブが必要である。それらがあれば、元に戻すことは保証できる。
2. 本来の改造の目的である大容量の新しいハードディスクへの換装を行う場合は、さらにカシオペア専用のCD-ROMドライブも必要である。業者側でハードディスク換装の作業に用いているソフトでは、不可解なエラーが発生して元のハードディスクのデータを新しいハードディスクにそのままコピーすることができなかった。(芦澤注:通常はこれでうまく行くらしい。また、赤字部分に注意。このところを後に追求することになる。)したがって、フロッピーで起動し、付属CD-ROMを用いてハイバネーション領域の作成とOSのインストールを行わなければならないのである。しかし、これは失敗する可能性もあり保証はできない。
(ここまでが芦沢兄先生の回想録)
なんて、えらそうなことを芦沢先生は言っているが、そういう理詰めの追求が、私には不安でならなかった。なぜか。なんと言っても私のカシオペアファイバは、西田さんの手の中にある。怒らせたら何をされるかわからない(というか少しでも大事に扱ってもらいたい)。気の弱い子供を保育園に預けている専業主婦のような気持ちだ。芦沢先生は他人事のように、理詰めの知識と正義感で、好き勝手言っているが(私のファイバを守る気なんか全然ない)、私の立場とは、全く異なる。それに芦沢先生は、JC-ワールドは初めてかもしれないが、私はリブレット30の500メガを1.6ギガに、レッツノートミニの1.6ギガを4.2ギガに換装したときに、すでに2回もお世話になっており、そのときには、(西田さんではなかったが)ナガツマさんやモモイさんにお世話になった。結構親切だったのを覚えている。いい印象しかないのである。私は芦沢兄弟が怒れば怒るほど、冷静に対処しようと努めた。技術者(職人さん)を怒らせては元も子もない。
私にとっては、最悪「元に戻せる」という言質さえとれればよかった。
とはいえ、そうは言うもののここからがたいへんだった。
FDDもポートリプリケータもCD-ROMドライブも、どこにもないのだ。まず、買ったビッグカメラへ電話をした。「在庫なし、入荷未定」。大塚商会へ。「来月になる」。T-ゾーンへ。「入荷未定」。LAOXへ。「20日以降入荷予定」。どれも今ない。困ったあげく販売提携しているアキアにかけると、「今すぐ入金されても7月下旬以降になる」と最悪。どこも「メーカーに在庫がない」と言い始める。ファイバって、そんなに人気があったっけ? と自問する。在庫がないということは町中(まちなか)に出回っているとも(勝手に考えれば)考えられうる。“通”が通う秋葉原では駄目かもしれない。早速、“田舎”の京都にいる弟に電話をかけて、調べてもらった。16日水曜日(いつの間にか買ってから2日もたっていた)、愛用のドコモiモード(F501i)に初めてのEメールが入っていた。弟からだ(こういうときに携帯電話のメール受信はいい)。ポートリプリケータとCD-ROMドライブが別々の店にあったとのこと。やっぱり、東京以外の全ての都市は、田舎だった。「予約して物を押さえてよ」。翌17日木曜日(3日目)、弟に買いに行ってもらい、「すぐに、宅急便で、送って」とJC-ワールドに直送する手配をとった。
しかし、肝心のFDDがない。ありそうでなさそう、なさそうでありそうな店はどこか? 当てずっぽうで「ツクモ」電気(秋葉原)はどうだ、と思って、電話をかけると、これが的中。「あります」。これが17日木曜日16:00。早速、秋葉原が毎日の寄り道先である芦沢弟先生の携帯に電話。「ツクモで買って、JC-ワールドの西田さんに渡して。お願い」。
そうやって、18日金曜日には、すべての復帰道具がJC-ワールド西田さんの手元に届くことになった。
西田さんから、18日夕方5:00頃、私の携帯に電話があった。「できました」(西田)。「あ、そう。ハイバネもすべてうまくいきましたか?」(私)。「ええ、できましたので」(西田)。「ありがとうございます。いろいろとご迷惑をおかけしてすみませんでした」(私)。全額、47040円(換装手数料15000円+6.4ギガハードディスク(IBM製)29800円+消費税)。いい勉強をさせてもらった。
最後は、あっけないものだった。月曜日に買って、5日後、金曜日に私の特注「6.4ギガ」カシオペアファイバが完成した。
さて、実際に手にした私の第一印象。
第一に、大きさと重さが最大の魅力だ。リブレット100の大きさとほぼ同じで(幅210×奥行き132×高さ25.4:ファイバの方が少し薄い)、重さは、リブレット70とほぼ同じ(840グラム)。レッツノートコムもバイオPCG-C1Sも、この大きさを体験すると、とても持ち歩く気になれない。
第二に、6.7インチTFT液晶で800×600(SVGA表示)というのが最大の魅力だ。小さい字もくっきり見える。
第三に、CPUは省電力型サイリックス MediaGX200(MMX対応)を使用しているが、十分に速い。初期出荷のころは、遅かったらしいが(そのために売れなかった)、今では改良されているみたいだ。
第四に、電池の持ちも悪くはない。標準バッテリーで2時間はOK。
問題点は、
第一に、内蔵FAXモデムの外部端子がモジュラージャックを直接接続できない点だ。特殊な付属コネクターなしではつながらない。
第二に、やはり片手でドラッグ&ドロップできないのはつらい。右ボタン・左ボタンがマウスパッドから遠く離れている。
第三に、本体の角が、少し使うと色がはげてきそうなデザイン(色と形と材質)になっている。不安だ。柔らかい布製のケース(袋?)にいれないと、すぐダメになるような気がする。
とにもかくにも、4日間たって、まだ計2時間くらいしか使っていない。これから例のごとく、OED、世界大百科事典、アトラス地図、現代用語の基礎知識、英和・独和・仏和辞書など、ありったけのCD-ROMデータベースをハードディスクに落とし込んで、6.4ギガの威力を十二分に味わいたいと思う。乞うご期待。