(その1)
カシオペアファイバ(MPC−101M32A)を買いました。
レッツノートミニをあしかけ2年使い、満足していましたが、そろそろハードディスクの空き容量も減ってきて、次期モバイルパソコンは何か? が宮川先生(テラハウスで主にWindows入門系とインターネット系の講座を担当している先生)たちわがテラハウスモバイル派の講師たちの最大の関心でした。
対象になっていたのは、パナソニックのレッツノートミニ後継機(レッツノートコム)、ソニーのバイオPCG-C1S、東芝のリブレット70でした。もっとも可能性が高く、今にでも買いそうになっていたのは、(多分、意外にもということだと思いますが)東芝のリブレット70です。かつて、リブレット30を使っていたこともあって、やはりモバイルの原点にして理想が、リブレットだ、という点では、宮川先生も私も一致しています。とにもかくにも、重さと大きさという点で、リブレットはモバイルの原点にして理想なわけです。もう一度リブレット(70)を買って、6ギガのハードディスクを換装して(最新のリブレットはハードディスクが換装できない。2ギガでは全く役に立ちません)、と考えていたわけです。ところが70がどこを探してもない。唯一残っているのがNTTドコモのリブレットモバイルパックIIIですが、これは198000円もする。時々秋葉原のT-ZONEとかで11万円くらいで売っていたのを知っていましたから、今更とても“正価”で買う気などしない。「どうしよう...」と思っていたわけです。知人のコネを使って、東芝の部品修理部門で70を作ってもらう形で手に入れようかとも画策していました。
なぜ、レッツノートコムは駄目だったのか。まず、ハードディスクが6ギガ以上ではないということ(4ギガ)、そのうえ、バイオPCG-C1Sが6ギガですでに登場しているということが大きな理由でした。それじゃ、バイオPCG-C1Sでいいではないか、というとそうでもない。バイオPCG-C1Sの最大の問題は、1.1キロという重さ。以前から主張しているように、1.0キロを超えてからの100グラムはとてつもなく重いということ、特に毎日もって歩くことは不可能な重さだということ(もちろん心理的な重さですが)を痛いほど感じていましたから、その点はバイオの大減点部分だったのです。さらにバイオの問題は、以前から指摘されてるように、電池の持ち。多分、実時間で1時間もてばいいほうでしょう(早く、バイオも「スタミナ」バイオにすべきなのです)。この2点でバイオはモバイルパソコンではないのです。ハードディスク容量が6ギガあるというのは、モバイルとしては二重丸ですが、それは換装しようと思えば何とかなる部分ですから、先の2点は我慢ならない部分として残ったわけです。ではレッツノートミニ後継機に6ギガを載せたら、と思いもしましたが、せっかくの4ギガを6ギガにしても面白みがないし、もう一度同じようなパソコンを買うのも楽しくない。むしろ、リブレット70の大きさで6ギガのハードディスクを換装する方が換装のしがいがあるというもの、とあれこれと考えていたわけです。ついでに言えば、最新のリブレットは、ハードディスクが換装できないほど薄くなったので、もはや存在する意味がなくなっているのです。
さて、このあたりで、モバイルパソコンの条件を復習して列挙しておきましょう。
(1) 重さが1キロ以下であること
モバイルのパソコン“活用”の原点は、使わないとき(少なくとも家を出る時点で予想できる用・不用)にも持ち歩けるかに関わっています。使わないときにも持ち歩ける重さの限界が1.0キロです。ノートパソコンを買う人は、使うときの重さばかり気にしていますが、たしかにその意味でなら、最新のB5サイズは決して重くはないと言えます。しかし、使わないときには持ち歩かないというのは、モバイルの精神に反しています。というより、その言い方(使わないときには持ち歩かない)は、論理的には結果論です。使う・使わないを自宅を出る〈前に〉、あるいは会社を出る〈前に〉、いったいどうやって正しく判断するのでしょうか。出先で使うか・使わないかなど神様でもない限り、〈前もって〉判断などできないわけです。つまり、日常的に使うためには(いつでもどこでも思い立ったら使えるためには)使わないと予想が立っていても持ち歩く気になる重さでなければならないのです。その基準になるのが1.0キロ。
(2) ハードディスクが6ギガ以上であること(換装可能性も含む)
これは、野口悠紀夫の言う「ポケットひとつの原則」を守るためのもの。自宅にパソコン、会社にパソコン、モバイルパソコンなどとパソコンライフを開始し始めると最低3つのパソコンが散在することになる。これらの散在する3点でファイルを作成し、保存し、更新し、また別のファイルを新規作成し、などということを繰り返し始めると、どこで何を作ったのかがわからなくなってくる。したがって、「いつでもどこでも」状態を作るためには、保存場所(「ポケット」:ハードディスク)をひとつにする必要がでてくる。私は、持ち歩くことの多いモバイルパソコンにこそ、保存場所を集約すべきだと思っています。自宅でも会社でもモバイルパソコンをネットワークを介してつなぎ、いつもモバイルのHD(ハードディスク)からファイルを読み出し、そこへ終う。新規ファイルを作ったときでも、かならず保存場所はモバイルのHDへ保存する。決して、自宅や会社のHDには、保存しない。使うとしたらバックアップのための保存としてだけにする。そうすれば、どこにしまったかについて迷うことなど“物理的に”ありえない。しかもそのモバイルのHDだけが、いつでもどこでも(つまり自宅でも会社でもその中間地帯でも)存在しうる可能性のあるHDなのだから、どんな場合でも(ファイルを見失うことなく)作業を続行することができる。つまりモバイルのHDこそ、大容量であるべきなのだ。
(3) A5ジャストサイズ以下であること
ほかにもいろいろありますが、この三点をキープすることが必須です。
三点目は、あまり誰も指摘していませんが、液晶モニターを立てた高さの問題です。A5サイズの代表機種レッツノートミニで約19センチです。この高さでもまだ少し高い(大きすぎる)。というのも、この高さでも会議室や電車の中では結構目立つ高さになるからです。リブレットサイズが優れているのは、この高さが15センチ以下で目立たない高さにとどまっているからです。つまりモバイルにとって、肝心なのは、薄さでも幅でもなく、液晶モニタの高さなのです。
あれこれと考えている内に、カシオペアファイバの広告が遅蒔きながら目に留まりました。リブレットと同サイズ(というよりリブレットより薄い!)で、しかも液晶モニタはSVGA(800×600)、重さは56kbpsのモデム内蔵で850グラム。しかもメモリ64メガ内蔵で、138000円。
「これしかない」と思いました。昨年の11月発売でしたが、今頃気づくなんて、恥ずかしい。私が、知ったのはアキア経由の広告でのこと。カシオはやっぱりどこかおかしい。こんなすぐれたモバイルパソコンを作っているのに、宣伝の力点がずれている…。
ただし、ハードディスクは3.2ギガ。6月14日火曜日、14:30、カシオに電話して、内蔵ハードディスクの厚さを聞くと9ミリ(正確には9.5ミリ)。これだとIBMの6ギガが換装できる。
カシオにハードディスクの厚さを確認した後、いつも換装を頼んでいる秋葉原のJCワールドに電話をし、IBMの9ミリ厚6ギガのハードディスクの在庫を確認(ミニノートパソコン用のハードディスクはIBMのものが一番いい。東芝も日立もあるがやめておいた方がいい)。ファイバの換装を依頼。「ファイバは経験がないが大丈夫でしょう」とJCワールド西田さんの返事。テラハウスの仕事で忙殺されている私は、パソコンショップ情報にやけに詳しい芦沢先生(兄) ─ テラハウスでExcel・Access系の講座を担当している先生 ─ に電話。「カシオペアファイバの在庫のある店で一番安い店を探してほしい」。その数分後、「新宿ビッグカメラが137800円」。「すぐ予約して下さい」。ちょうどそのころ、講義予定の芦沢(弟)先生─ テラハウスで、Word系とパソコン機械学を中心に講座を担当している先生。上記、芦沢先生の弟さん。この二人の兄弟先生が集まれば、パソコン環境については最強のスタッフを得たことになる ─ を、新宿手前で携帯電話で捕捉(こういうとき携帯は超便利)。「新宿ビッグカメラでカシオペアファイバを買ってくれない?」。「いいですけれど、講師料あげてくれますか?」「何の関係があるの?」と言い合って、とりあえず、了解を取った後、「実はさらにお願いがあって、その買ったままのファイバを秋葉原のJCワールドに持っていってくれない。西田さんという人が待っているから、その人に渡して。ハードディスク交換したいのよ」。芦沢先生、絶句。「…」。「講師料、倍にしてくれます?」「金でしか、動かないの?」なんて会話が続く内に、私のファイバは、私に一度もふれられることなく、芦沢先生からJCワールドへ、移ることになった。
時間は14日の5時半。芦沢弟先生が、JCワールドの西田さんを訪ねた。
注:「ハイバネーション」とは、特にノートパソコンの省電力化のための仕掛けの一つで、使用中のパソコンの全ファイルの状態をハードディスクに(高速で:現在一番早い東芝ダイナブックで15秒程度)保存、(自動的に)電源が切られ、メインスイッチを再度入れれば、中断した仕事の途中からそのまま入力が続けられる機能(復帰の速度も高速のもので15秒程度)。サスペンドモードと違って、電源をいっさい使わないところがメリット。この機能が進化するとモバイルパソコンとしてのWindowsCEの意味はほとんどなくなる。
さて、一夜明けた、翌15日。正午頃。「やっぱり駄目でした。全く動かなくなりました」と、西田さんの電話。ガーン。ショック。なにやら元ファイルが圧縮されて入っており、それが転送過程でうまくいかなかったとのこと。「で、どうすればいいの?」と真っ青な私。「とにかく、最低でもFDD(+ポートリプリケータ)は必要。できればCD-ROMドライブも。それがないと何もできません」。「わかりました。すぐにそろえます」。予想外の出費だ。でも買いそろえるしかない。
などと、悩んでいたら、芦沢兄先生(テラハウスで主にAccess・Excel系の講座を担当している先生)が私の机のそばに寄ってきた。