例のPさんから早速、「大森」さんの意見について感想が入りました。謹んで採録します。
その前に、ある研究者の方から、「『大森さん』の『サンプルサイズ』の訳語についてのコメントは正しくなく、『サンプルサイズ』はこの場合なら被験者の数(およびそこから得られるデータの数)という芦田さんのご理解で良いと思います」という意見もありました。この方からはまもなく再度詳しいコメントが入る予定です。、
ではPさんの感想、以下が全文です。
ご無沙汰しております(大森様、はじめまして)。
芦田さんが作られたPDFを読み直していたさなかでありました(立派な形にして頂き光栄です)。
しかし、今回の大森様の解釈を拝読するに、小生自身が「本文を読んでもその問題点を評価できない人」に該当しており、お恥ずかしい限りです。
ちなみに、「サンプル数」については大森様の御指摘まで意識していませんでしたが、検索して見ると(http://www.jil.go.jp/column/bn/colum005.html)、サンプル数という統計用語はないとのことにて、勉強になりました。芦田さん、失礼しました。
この論文における統計マジック(とそれを隠すような、恣意的な論文の書き方)についてはある程度認識していたつもりでしたが、さすがに片側検定をしていたとは気づかず、大森様の御指摘に思わず唸ってしまいました。
思うに、この手の研究で本論文でも使用されているPermutation testが使用されるのはしばしば見ますが、片側検定は確かに見ないと思います(理論的に、大半の医学研究では両側検定にせざるを得ない)。
まさか、高容量IFNbetaは低用量IFNbetaよりも悪であるという、特にOSMSが入ってくる日本の研究デザインでは充分にあり得る仮定を敢えて無視して、片側検定を採択したのではないでしょうから、単純にp値が低い片側検定を選択し、強引に結論を誘導しようとしたと邪推されても仕方ないと思います(片側検定と両側検定については、英文ですが分かりやすい総説がここ:http://www.bmj.com/cgi/content/full/309/6949/248にあります)。
年間再発率については、通常は単純に1年間当たりに再発した回数を指します(分子は再発回数、分母は観察年数)。今回の解析では、分子は再発回数ですが、分母は「再発の期間を除く」非再発期間のみの観察年数です。
1年の観察で1回の再発があった人は年間再発率=1となりますが、今回の論文の計算方法では、その再発が例えば1カ月続いたとすれば、分母は1年じゃなく、11カ月となりますから、1.09となります。論文では、再発の期間に次の再発は生じないのだから、この計算式の方が正しいと指摘しています。一見そうだなと思えるのですが、「再発の期間」というのを何を以て定義するのか、論文からははっきりしません。
ともあれ、大森様の御指摘の
>この論文に影響を受けた人の中には、要旨しか読んでいない、要旨を読んでもその問題点を評価できない、本文を読んでもその問題点を評価できない人がいた可能性は否定できないと思います。
については、本疾患の神経内科での位置付けを考えると(要するに患者数が少ない)、「要旨すら読んでいないが、製薬会社社のMRさんがそう言っていたから」とか、「要旨すら読んでいないが、(この論文に関わった)偉い先生がそう言っていたから」いう医師が意外に多かったりするのではないかと感じています。
ついでに、当該論文にあてた、Editorialのコメントを一部抜粋して翻訳してみました。
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Western vs optic-spinal MS -Two diseases, one treatment?-
西洋型MS vs OSMS −二つの病型に同一の治療?−
Brian Wenshenker (Mayo Clinic)
(前略)