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「インターフェロンベータ1bは日本人の再発寛解型MS患者において有効である:ランダム化された多施設研究」(2005年2月22日号 Neurology誌)のどこが問題か?[家内の症状報告]
(2009-11-05 14:41:03) by 芦田 宏直


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PDF版「多発性硬化症とは何か、視神経脊髄炎とは何か」(http://dl.getdropbox.com/u/1047853/ver3.0%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B%E3%80%81%E8%A6%96%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E8%84%8A%E9%AB%84%E7%82%8E%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B.pdf)のピーク箇所を取り上げてみました。それでもA4紙で20頁ありますが、5分の1以下になっています(苦笑)。

私の家内の病名診断・治療判断が遅れざるを得なかったのは、この表題の論文「インターフェロンベータ1bは日本人の再発寛解型MS患者において有効である:ランダム化された多施設研究」(2005年2月22日号 Neurology誌)のためです。日本のMS治療は、この論文に良くも悪くも影響されています。しかもこの論文は極めて怪しい(と私は思います)。その問題を扱っているのが、この要約版です。

【芦田の質問 PDF 62頁】― ベータフェロンの治験論文はなぜ2005年2月に登場したのか 2008年02月23日 

(略)

本題の質問に行く前に、前回の質問を蒸し返すような質問を一つしておきたいと思います。

1996年7月にMayoの医師らが、Brain Pathology誌に発表した論文で、すでに「オリゴの生き死にパターンにはバラエティがある」ことが指摘されていた。これは私の記憶では、あなたの研究論文史の指摘にはなかった年代です。

特にその「バラエティ」の中には細胞性免疫にかかわる炎症だけではなく、「免疫グロブリンと補体からなる炎症(=液性免疫)」も指摘されていた。

すでに1996年のこの段階で「T細胞に対して何らかの修飾をする『免疫修飾能』があると推察されて」いたベータフェロンは、十二分に疑われても良かったにもかかわらず、なぜ、T細胞免疫論=ベータフェロン有効論は力を持ったのでしょうか。

1996年、オリゴ死の「バラエティ」という重要な発表の後、あなたの指摘は(2000年の脱随4タイプ論を経て)、2004年リンパ球のオリゴの因果関係の逆転、2005年の8月(液性免疫炎症に対する血漿交換の効能)、2008年の「バラエティ」自体の否定(すべては液性免疫)の指摘に繋がって行きます。この流れは、すべてベータフェロンの有効性を疑うもの(=疑っても良いもの)ばかりです。

このあなたのMS研究の変遷の説明をまともに辿れば辿るほど、2005年2月の日本人達の論文「インターフェロンベータ1b(註:ベタフェロンのこと)は日本人の再発寛解型MS患者において有効である:ランダム化された多施設研究」(2005年2月22日号 Neurology誌)の意味が分からなくなります。この論文・研究動機は(結果はさておき)、私にはアナクロにしか見えません。

この論文の書き手達は、1996年〜2004年の研究・論文の意義を踏まえてでも、なおMS=T細胞免疫炎症論(ベータフェロンの有効性)を主張しようとしたかったのでしょうか。そうだとすれば、何が彼らをそうさせたのでしょうか。1996年〜2004年の間に何かまた別の発見があったのでしょうか。


【Pさんの回答 PDF 63頁】― 「MSはT細胞性自己免疫疾患である」を疑え 2008年02月23日

(略)

確かに芦田さんのご指摘のように「アナロク」に見える(またはかなり不勉強に見える(ただ、Brain Pathology誌を神経内科医が読むことは稀だと思いますが))のですが、背景の時系列からは必ずしもそうとは言い切れないように思います。

第一に、2005年2月のNeurology誌に掲載されたかの日本人「MS」患者でのベタフェロン治験結果ですが、実際の治験は1995年7月〜1999年11月に行われています。このより前に治験のデザインが組まれていると思いますので、実際には1996年のMayo論文が出る前に治験はスタートラインを切っています。

よって、治験開始時には未だT細胞自己免疫説が主流で、それを疑う風潮はなかったものと思います。小生の推察では、1993 年4月のNeurology誌に海外でのベタフェロン大規模治験結果が発表されましたので、これに対応して日本での治験をデザインしたのではないかと思います。

尚、デザイン云々はともあれ、この論文のポイントは「OSMSにもベタフェロンは同等に有効である」お墨付を与えたことなのですが、論文の受付は 2004年5月となっているので、MayoのLennonが2004年12月のLancet誌にNMO-IgGを報告する前に論文は書かれたようです。

余談ですが、ベタフェロン・NMO議論で加熱している日本・Mayoの臨床医・研究者或いは、細々とMSの病理を追究する数少ない研究者以外は、どこかで聞いた(証明されていない)「MSはT細胞性自己免疫疾患である」をずっと疑わない人も居ます。2008年2月(つい先日)に掲載された Nature Medicine誌のMSの免疫研究に関連する論文の要旨にはこういう文がありました。

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