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【PDF版】多発性硬化症とは何か、視神経脊髄炎とは何か(Ver.2.0) ― 1週間前にタイで開催された第19回世界神経学会でもまだわからない。[家内の症状報告]
(2009-11-03 05:20:30) by 芦田 宏直


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●PDF版への序

私が、2003年3月に発症した家内の病気に(本格的に)関心を持ったのは、実は2007年2月(http://www.ashida.info/blog/2007/02/post_188.html)。

2003年3月の発症時には「多発性硬化症(MS=multiple sclerosis)です」と診断され(日赤広尾病院)、2003年12月に転院した東京女子医大でもその診断を追認。

その後、今日まで東京女子医大に(大変)お世話になっているが、その病院の担当医に2007年2月、突然「多発性硬化症ではなくて、視神経脊髄炎ですね」と宣告された。「デビック病とも言い、昔からある病気です」とも。

この診断の変更は、前々月(2006年12月)に行われた抗AQP4抗体検査の結果が「陽性」と出た直後(2007年2月)のことだった。抗AQP4抗体検査は、2006年後半から(国立大学の一部で)やっと公開的に始まりかけた新しい抗体検査だった。

この診断変更は、単なる変更にとどまるものではなかった。「多発性硬化症」に唯一効果があるとされる「インターフェロンβ」(ベタフェロン)が、「視神経脊髄炎」の患者にはむしろ症状を悪化させる場合があったからだ。家内は転院後の2004年の初頭以来、2006年の8月まで「インターフェロンβ」を打ち続けてきた。

抗AQP4抗体検査以前の約半年前2006年8月に「インターフェロンβ」の投与を中止したのは、家内の身体が「インターフェロンβ」の投与に耐えられなくなったからだ。

それまでも何度も不調を訴え続けていたが、「効くと思って打たないと効くものも効かないよ」と言いつづけたのは私だったし、医師も不調の訴えにもかかわらず治療方針を変えはしなかった。8月に投与を止めたのは家内自身の判断だったのである。体力を奪うほどに副作用が酷かった。

しかし、「インターフェロンβ」が効かない、効かないどころか増悪例があるということが2006年8月においてわかっていたわけではない。

担当医師が「インターフェロンβ」の投与を完全に(=積極的に)あきらめ、ステロイド投与に意味を見出すのは、翌年2月の抗AQP4抗体の「陽性」結果を受けてからのことだ。

私の疑問は、抗AQP4抗体の「陽性」結果ということがわかる以前に、なぜ「インターフェロンβ」の投与が疑われなかったのか、「視神経脊髄炎」という病気が「以前から」存在している病気ならば、なぜ「視神経脊髄炎」という言葉、あるいは「視神経脊髄炎の疑い」という言葉が、2003年の発症から2007年の2月までどの医師、どの病院の診断からも聞くことができなかったのかというものだった。

その疑いが少しでもあれば、「インターフェロンβ」投与に関して、治療はもっと慎重であったに違いない。家内の不調の訴えについても医師や病院はもっと別の反応が取れたに違いないというものだった。未だに、この判断が遅れる医師や病院が全国にたくさん存在している。

一体2006年〜2007年における、多発性硬化症と視神経脊髄炎との研究状況、治療状況はどんなものだったのか。なぜ私の家内は、2006年8月に自分で投与を中止せざるを得ないまでに衰退せざるを得なかったのか。2006年〜2007年当時、私の家内の病気に医学や治療はどこまで有効だったのか、どこまで無効だったのか。

その疑問に全力で取り組んだのが、この10万文字(400字詰め原稿用紙250枚)のレポートである。

2006年〜2007年というのが決定的に重要な時期(=微妙な時期)だというのが、この私のレポートでよくわかる。ぜひ、この病気に悩む患者たちは参考にしてもらいたい。診療・治療現場では今でも極端なEBM主義と極端な無知と極端な製薬会社の干渉がまかり通っている。

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●目次

1)未だに「多発性硬化症」と「NMO」との初期判断を優先させない病院がある ― なぜNMO抗体検査を受けさせないのか? (5ページ)

2)「MS/NMOの専門家」は一体日本に何人いるというのか? (9ページ)

3)日本のNMO/MS研究・治療の進展史 (20ページ)

4)日本の「NMO/MS専門家」の数 (24ページ)

5)ベータフェロンか、ステロイドか、免疫抑制剤か(炎症は、この病気の原因ではなくて結果かも知れない) (28ページ)

6)古典的多発性硬化症 (CMS)、視神経型多発性硬化症 (OSMS)、視神経脊髄炎(NMO)はすべて「液性免疫」病理だって? ― NMO/MS治療は闇の中? (35ページ)

7)Evidence-based medicine の“客観性”は、個々の患者の治療を狂わせる(ベータフェロンは本当に有効か)(38ページ)

8)私のEvidence-based medicine論(「症状報告」91〜96を理解するためのサブ資料) (42ページ)

9)古典的MS,日本型MS、視神経脊髄炎、そして液性免疫(「症状報告」91〜96を理解するためのサブ資料)(45ページ)

10)抗AQP4抗体検査の陽性、陰性は絶対的なものではない (49ページ)

11)現代治療の最前線における多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、どう治療すべきか?(54ページ)

12)ベータフェロンの治験論文はなぜ2005年2月に登場したのか (62ページ)

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