このレポートは、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(中教審「キャリア教育・職業教育特別部会」)には何が書かれているのか(何が書かれていないのか)? ― 【その2】(http://www.ashida.info/blog/2009/09/post_379.html#more)に続いています。
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※以後、この報告については「中教審経過報告」と略す。このレポートで断りもなく括弧内に数値を記入したものは、この「中教審経過報告」PDFファイルの頁数を意味する。この報告書は懸案の専門学校一条校化議論の帰趨を握っている。
67)「職業教育」と「キャリア教育」とは異なるものと「中教審経過報告」は考えている。
68)このレポートの第24項でも触れたが、再度、その違いについて触れておこう(第4項を再録する)。
69)「職業教育」とは「キャリア教育の中核をなすものであり、職業に従事する上で必要とされる知識、技能、態度を習得させることを目的として実施される教育」とされ、「キャリア教育」とは「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」と「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」(平成16年1月文部科学省報告書)を引いて説明されている。「キャリア教育」の方が「職業教育」よりも広い概念として扱われているが、「中教審経過報告書」ではより詳細な説明がなされている。
70)「ここでいう『キャリア』とは、『個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積』であり、職業生活、市民生活、家庭生活、文化生活など、すべての生活局面における立場、役割を含むものである。このため、『それぞれにふさわしいキャリアを形成していく』ということは、言い換えれば、『社会的・職業的に自立していく』ということと同じである」。
71)「また、キャリア教育は、学生・生徒等の社会的・職業的自立を促す視点から、従来の教育の在り方を見直していくための理念と方向性を示すものである。このようなキャリア教育の視点に立ち、すなわち個々の教育活動が、社会とどのようなかかわりがあるのか、学生・生徒等の将来の社会的・職業的自立にどのようにつながっていくのかを念頭に置き、学ぶことと生きること、働くことを関連付けながら、普通教育・専門教育等を問わず、教育活動を改善・充実していくことが重要である。自己の将来と、現在の学びとを関係付けていくことは、学生・生徒等に学びの意義や楽しさを実感させ、その学習意欲を喚起する上でも有効であり、このようなキャリア教育の意義等について、教職員の意識を高めることが必要である」(9頁の註※1)。
72)「キャリア教育と職業教育との関係について言えば、職業教育については、単なる専門的な知識・技能の教授に終始しないよう、社会的・職業的自立を促すというキャリア教育の視点に立って行われるべきものである。また、一定の又は特定の職業に従事することを念頭に置かない一般的な教育活動(例えば、総合的な学習の時間等における職場見学や、職業調べ学習など)については、職業教育ではなく、将来の社会的・職業的自立に向けたキャリア教育として位置付けられるものである(9頁の註※2)。
73)要するに「特定の職業に従事することを念頭」においた「単なる専門的な知識・技能の教授に終始」する教育を「職業教育」、「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」に基づいた社会的・職業的な自立にかかわる教育を「キャリア教育」と位置づけている。「職業教育」は「キャリア教育」にとっては第一義的な意味を持つが、キャリア教育よりは狭い、というのが文部科学省の言い分。文部科学省というよりも1970年代に始まったアメリカの(マーランド達の)「キャリア教育」運動に色濃く影響を受けている。
※一部重複するがこの注釈の前提となっている「中教審経過報告」のコンテキストはこちら→http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo10/shiryo/attach/1282609.htm
※また「改正教育基本法」以前の文書では、2004年1月28日「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/023/toushin/04012801/002.htm)における「キャリア教育」の定義がある。ここでの説明は「中教審経過報告」でもそのまま引き継がれている。