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09年「学校基本調査」中間報告 ― 専門学校編(その1)[これからの専門学校]
(2009-08-30 05:02:21) by 芦田 宏直


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とりあえず、学校基本調査09年「速報」段階での中間概観をやってみました(一部は08年度まで)。文中、「05年比」という言葉が多用されていますが、これは専門学校進学率のピークであった2005年度の数値と対比した場合という意味。2005年度は23.9%。現在は20.4%。23.9%をピークにこの4年間専門学校は急激に進学率(18才人口比の入学者数比)を下げている。私の考えでは、05年比が今後の専門学校経営の鍵を握ると思っている。

また「91年」「大綱化」と文中で言うのは、91年の設置基準改正(=大綱化)を意味している。この年から大学進学率はうなぎ登りに伸びていく。90年以前は20%台をさまよっていた大学進学率が91年の大綱化をきっかけにして右肩上がりで伸びていく。大学は91年を境に軟化路線を歩み始める。場合によっては大学の専門学校化も91年から始まっていたと言える。

05年と91年大綱化は、専門学校の今後を占う重要な年度。ぜひこれを押さえて学校基本調査を読み込んでもらいたい。

※文中、正確には「都内」「府内」「県内」と言い分けるべきところを「県内」「地域内」という言い方で代用しています。ご寛恕を。

※私が一番感じたのは、専門学校の限界は、専修学校制度の限界と同じものだということ。東京では都内高校生の都内専門学校一校あたりの学生数が平均27人しかいない。場合によっては街塾よりも小さな学校群が混在しているのが専門学校。

これも専修学校制度の害でしかない。専門学校は、後期中等教育(=高校)からのスムーズな連携を今となっては決定的に欠いているのだ。76年施行の「専修学校制度」は、「学校教育制度(特に中等教育→高等教育)」から落ちこぼれた人たちの受け皿としての意義をある程度果たしてきたが、大学全入時代の今日にあってはもはや歴史的使命を終えている。

今や専門学校と三流の大学とは、生涯学習マーケットに軸足を変えつつあるが、それは「学校」(「学校教育制度」における「学校」)から離脱することを意味している。言い代えれば、高校生からの信頼を得られない学校だということだ。

しかし高校生の能力格差にすら対応できない専門学校と三流大学が、生涯学習の受講生の「多様性」にどう対応できるというのだろうか? それは「アドミッションポリシー」の放棄(まさしく「学校」の放棄)に過ぎない。専門職大学院がほとんど解体しているのも、同じ理由である。

06年の教育基本法の改正では「職業」教育の必要性が「第二条 教育の目的」で初めて組み入れられた。これは「学校教育制度」の中で「職業教育」を扱うという改正としてはまともなものだった。専修学校にはこの改正は一つのチャンスではあったが、専修学校の技能主義的なキャリア教育はもはや時代遅れという烙印でもあった。専門学校進学率の衰退はそのことを意味している。

特に昨秋来の「リーマンショック」は「就職に強い」専門学校、大学よりも経費がかからない専門学校の進学率を上げるかと思われたが、実際には昨年度に引き続いて進学率は下がった。経済格差が教育格差に繋がっているという昨今はやりの議論は進学率の事実としては間違っていると言える。「学費の高い」私立大学の志願者、受験者、入学者もすべて前年比で好転している。これは個々の専門学校の敗北というよりは、専修学校制度の破綻だと言える。

専修学校制度では一般課程、高等課程、専門課程という異なった入学資格にある学校群が混在しているために、その中でもより低い入学資格に引きずられた教育しかできないでいる。それが専修学校の「技能」教育問題(=技能実習しかできない教員問題)だったと言える。「一条校化」はその専修学校限界を乗り越える良いチャンスだが、果たしてどれだけの専門学校がその限界を乗り越える潜在能力があるのか。

学校基本調査の専修学校に関する数値は、その潜在能力の有無を示す数値だと言える。

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●進学率の推移

1)専門学校進学率は、昨年に引き続き、減少

05年の23.9%をピークに20.4%にまで下がった(4年間で78,751人減少)。
18歳人口のピークは92年の2,049,471人
09年18歳人口は1,212,499人。ピーク時から40.8%減少(836,972人減少)
専門学校のピーク入学者数も92年364,687人
09年の入学者数は247,842人。ピーク時からは32%%減少(116,845人減少)

2)大学進学率は、ついに50%を超える

91年の大綱化以降、大学進学率は、今年初めて50%を超える(50.2%)
91年以降連続的な右肩上がり。91年の25.5%→今年50.2%。約2倍の進学率。
実数でも18歳人口はピーク時(92年)から40%減少しているにもかかわらず、09年度で67,126人増加。実数でも増えている。541,604人(92年)→608,730(09年)。
実数でも進学率のトレンドとほぼ同様に入学者を増やしている。
大学+短大の進学率全体は、56.2%。高専+専門学校も含めた高等教育進学率は77.6%。80%をうかがう勢いがある。


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