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「これからの専門学校を考える」研修会(http://www.invite.gr.jp/news/2008/20081006mr_ashida.html)、第一回、第二回総集編(=カリキュラム開発競争と履修管理が、大学との闘いの全て)。いよいよ来週(21日〜22日)、この研修は最終回を迎えます。それに向けて「まとめ」補講をします。100項目の現状認識と改善諸課題を取り出しました(苦労しました)。
【目次】
●大学か、専門学校か― 「資格の専門学校」ではまともな就職は出来ない(1〜12)
●学生数の変化と大学改革 ― 高等教育の転換点としての「大綱化」(1991年)(13〜19)
●外部から見た「専門学校」― 「特長」のない専門学校教育(20〜30)
●就職の特長をどう形成するのか ― 〈就職センター〉は諸悪の根源(31〜47)
●教員組織をどう形成するのか ― 資格主義からの脱却か(専門学校)、講座主義からの脱却か(大学)(48〜60)
●専門学校の進むべき道(1) ― カリキュラムのない専門学校は退場するしかない(61〜77)
●専門学校の進むべき道(2) ― 履修判定の杜撰な学校にはカリキュラムは存在しえない(78〜89)
●専門学校の進むべき道(3) ― カリキュラム教育の最終着地は就職成果。就職変化のない「教育改革」はあり得ない(90〜100)
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●大学か、専門学校か― 「資格の専門学校」ではまともな就職は出来ない(1〜12)
1)大学と専門学校との一番大きな違いは、一言で言えば、就職。これは就職率がいいとか悪いとかという問題ではない。医師や法律家になるために医学部や法学部に行くというわずかな部分を除いて、大学は学ぶことと就職とが結びついていない(大学の本来の就職率は大学院進学率でしかない)。専門学校は学ぶことと就職とが密接に結びついた学校(でなければならない)。
2)しかしこれは、専門学校教育が「職業教育」をやってきたということを直ちには意味しない。実際にはエントリーシートの段階ですら、「専門学校」というメニューのない会社が多い。現状では「一流企業」の総合職採用には専門学校は関門がまだまだ多い。
3)「大学生」が望みもしない、「一流企業」が期待してもいない就職を「就職率」という言い方でごまかしてきたのが、専門学校の「職業教育」だったと言える。研究者たちの間でも「就職有利説」はなりを潜め、「受け皿説」が優位に立っている(濱中淳子の研究など)。つまり専門学校選択は積極的な選択ではないということである。
4)なぜ、そうなったのか。平板化された資格教育とトレーニング的な技能実習に安住して、自らの教育目標を形成できなかったことが一番の原因。
5)厚労省、国交省、経産省系のできあいの資格主義は、結局のところ、専門学校の教務を企業動向から遠ざけることにしかならなかった。信頼に足る自立的な目標を形成できないため、官許的な公共性に頼らざるをえなかったのである。それは資格目標さえない専門学校の現状を見れば明らかなことだ。
6)その理由の最大の要因は、専門学校の教員問題。専門学校は専門学校卒であれば4年間の該当実務、大学卒であれば2年間の該当実務があれば、「教員」になれることになっている。教育訓練が全くない状態でも「教員」になれることになっている。また実務経験も2年、4年止まり。教育経験もない、実務経験もまともにない「教員」にどうやって「職業教育」をやれというのか。
7)そういった非一条校的な教員要件の甘さが、自立的な教育目標を形成できない、カリキュラム開発が出来ない理由になっていた。
8)そもそも「職業教育」と言ったり、職業教育「カリキュラム」と言うからには、その仕事のキャリアパスの全体がどういう仕方でか再現されていなければならない。キャリアパスの全体を再現する要件は専門学校卒後4年、大学卒後2年ではありえない。
9)あるいは「経験」豊富な「中途退職」組をいくら集めても「キャリアパスの全体」にはならない。「職業教育」の「教員」というのは、ある意味で矛盾した職務である。もし専門学校が「職業教育」機関として業界に対するリーダーシップを取るとすれば、その「教員」にはどんな能力や経験が必要なのか、このことに対する解答を専門学校関係者はいまだに見出せていない。
10) 結局、教員の社会的な公共性の不足を、非文部科学省的な厚労省、国交省、経産省の諸資格の公共性で補ってきたというのが専門学校教育の社会的な意味ではないか。
11) その分、専門学校は文部科学省の学歴ヒエラルキーから外れた「教育」機関だった。
12) しかし少子化による大学全入で大学自身が専門学校化せざるを得なくなってきた。偏差値の付かない大学が出現することによって、「学歴」ではなく、「教育の特長」が問われる時代になってきたのである。大学の専門学校化は専門学校にとってピンチであると共にチャンスでもある。
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