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「これからの専門学校を考える」(第二回補講)― 専門学校の資格主義、実習主義、担任主義、教員組織の問題について[講演関連]
(2008-11-25 04:35:42) by 芦田 宏直


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今回の補講は、本研修で触れた資格主義、実習主義、担任主義と教員組織の問題を扱います。この質問の本研修関連スライド(7枚)は以下のものです。

●専門学校における資格現象(スライド2)
1.自分で教育目標を考えない。考える場合にも経験主義が先行。教員が変わる度に(いつのまにか)カリキュラムが変わっている。
2.教育目標が資格目標であるため明確である分、変化する企業動向に目をふさぐ傾向が強い。
3.2年〜4年制の在籍期間全体をフルに使った教育が出来ない(2年〜4年フルに密度の高い授業を行わないと合格しない資格はほとんどない)。
4.合格至上主義の「暗記」学習傾向が強くなり、息の長い人材能力の形成を阻害している。
5.既成教材が多い分、教材の自己開発契機が弱い。


●専門学校における実習現象(スライド3)
1.学生の個人的な能力(身体能力や天分)に依存しやすいため仕上がり目標の共有化や進捗管理に教員の関心が向かない。
2.目標の共有化がない分、実習試験評価の透明度も低い。透明度が高い分野は実習レベルが低い(技能実習に留まっている)。課題物評価の不透明性と技能主義試験の単純さが専門学校の履修判定の信頼度(公共性)を殺いでいる。
3.目標と評価の共有化(透明度と専門性)が薄い分、カリキュラム開発・教材開発の動機が薄い。
4.「技能」実習が多いため、実習目標の高度化関心が薄い。暗記教育に過ぎないような技能教育が支配している。
5.実習設備(物や素材)が「教材」化し、教育のルーティン化が起こりやすい(教育のトレーニング化=職業訓練校化)。


●専門学校における資格+実習現象(スライド4)
1.単元毎の資格学習とルーティン技能実習によって、カリキュラム開発動機が薄い。
2.資格模擬試験(過去問試験)と単純な技能判定によって、学生の能力判定ノウハウ(履修判定指標の高度化ノウハウ)が高まる契機がない。
3.カリキュラム開発と能力判定のノウハウが高まらないため、教育の高度化契機が見つからない。
4.そのため、教員の自己研鑽契機も見つけづらい。
5.大学のような大学院経由、中等教育までの大学経由の「教員免許」といったミニマムの教員指標も専門学校では明確ではない。「教員」とひとくくりで言えるような共同性や組織性を持たない。


●なぜ資格依存なのか、なぜ実習依存になるのか(スライド5)
1.設置基準の甘さに依存して、内部の点検指標、改善指標を自己構築してこなかった。
2.人材育成達成について、資格の公共性の影に隠れて無関心なままでいられた。
3.人材育成達成について、基準と評価のない実習授業に隠れて誰も(真っ先に経営者が)関心を持たなかった。
4.資格と実習によって、人材育成の実質について曖昧なままでいられたのは、大学の落ちこぼれ受容があったから。「受け皿」専門学校、「受け皿」就職企業に長い間安住することができた。資格教育そのもの、実習教育そのものが「受け皿」教育だった。人材教育、職業教育とは無縁だった。
5.それでも学生が暴動を起こさないのは、「認定校」制度のおかげ。自動車学校のような実習試験免除体制が非文科系認定校制度によって保証されている限りは、「卒業」自体が(学歴とは別に)意味を持ったから。実習授業はその教育上の曖昧さと認定校出席中心主義によって二重に専門学校をダメにしたのである。「資格」も「実習」(認定校)も「学歴」の代替機能を果たした。
6.つまり資格と実習は専門学校の元凶であると共に守りの要でもあったということ。


●なぜ資格依存なまま、実習依存なままではダメなのか(スライド6)
1.大学全入の意味は、大学の専門学校化。
2.91年の大綱化以来、設置基準がかなり弱まり、限りなく専門学校化できる環境ができている。今の文科行政は入り口(設置基準)は緩く、実績評価は厳しくというもの。
3.実際、偏差値50以下の多くの大学・短大が専門学校的な「職業」「実務」教育をやり始めている。
4.企業交流も設備投資も教員の専門性もキャンパス教育力もはやりの「パーソナリティ」教育も広報費も、専門学校の比ではない。
5大学も教育の内実は大したことはないが、それは専門学校も同じ。
6.入り口における学生が三流という点では大学も専門学校も同じではあるが、大学の教員は少なくとも2流以上の専門性を有している。
7.高校も統廃合をかけて、大学進学率を「学校改革」指標にしている。高校の先生は元々学歴主義。
8.付論:インターネットのグローバリズムは、「技能」から「技術」、「技術」から「知識(インテリジェンス)」への移行を促進しつつある。大学的な教養主義ルネッサンスの(再)到来か? アジア留学生以外に専門学校の顧客はいない?


●公共性へ取組(スライド20)
教員組織の質的階層化について
1)教務マネージャ(1名)=科長?
企業+技術動向を理解し、それをカリキュラムにまで落とし込める者
カリキュラムに沿って教材開発管理(一部教材作成も含め)が出来る者
教員の授業評価が出来る者

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