2ヶ月前の7月末日をもって長い間お世話になった学校法人小山学園を退職しました。現在、無職、求職中です(苦笑)。8月1日以来、長〜い夏休みが続いていましたが、もう10月になってしまいました。
6月をもって、経営者(理事長)のご長男に校長職を託し(私は8月末まで理事職は継続しましたが)、約1ヶ月の引き継ぎ。私の仕事の大半は終えたということでしょうか。今後は外部から見えるわが学園の姿を遠近で意識しながらご支援させていただきたいと思います。
私がこの学園に初めて関わったのは、1985年。非常勤で「一般教養」の授業を担当したときから。科目は「現代社会論」「情報社会論」だったかと思う。
当時は、専門学校にも「一般教養」が必要、専門学校の人材が就職後数年後には大卒人材に追い越されてしまうのは、「一般教養」が不足しているからだという認識(文科省の指導が先行しましたが)に立ち、わが学園にも「一般教養」専門の部署が立ち上がった時期だった。
当時30歳代(初頭)の私は大学で「哲学」「社会学」「ドイツ語」などを並行して教えていた時期でもある(オーバードクターの時期)。この学園の中野校、国立校、世田谷校の3校で約7年間、非常勤の「一般教養」講師として関わったのが、私の最初のこの学園との関わりだった。
このときの学園への印象は、私の最近までの(あるいはそして今後に続く)教育改革の原モチーフを形成している。
その最初のものは、何度私が学生に赤点(不合格点)を付けても学生が進級していくというもの。不思議な学校だと思った。あるときにはわざと全ての学生に赤点(不合格点)を付けてみたが、それでも学生達は進級していった。
なんと不思議な学校か。履修判定に杜撰な学校だったということである。
大学であれば、赤点は赤点。未履修になる。当時、数校の大学で教えていた私の体験では、卒業年度で未履修科目が出てきて卒業が危うくなる場合などは、事務当局が私の自宅に電話をよこし、「なんとか再試験かレポートなどで再履修処置お願いできませんか」などと頼まれる場合はあったが、その場合でも最終決裁権は担当教員である私自身にあった。ところが、わが学園の履修判定の決裁権は私にはない。
私がその時に思ったのは、決裁権の有る無しそのものではない。以下の5点が私の気になるところだった。
1)試験点数に関心がない、つまり学生に仕上がりレベルに関心がない、つまり教育目標に関心がない。
2)仕上がりレベルに関心がないのだから、誰がどんな授業をやっているのかに関心がない。
3)誰がどんな授業をやっているのかに関心がない割に、決裁権を取り上げる。
4)つまり教員の専門性や教育性についての信任が管理側にない。
5)そういった意味で、この学校には教育目標、目標評価に関心がないばかりではなく、教員の専門性に対する自己信任もない。
この、とても「学校」とは思えない情況について、その全ての理由がわかるのに、私は長い時間がかかった(やっと最近、その全体が見えてきたと言ってもよい)。
もっとも大きな原因は、専門学校が「資格の学校」であったことだ。小山学園の創設は、1969年。自動車整備の専門学校として始まった。自動車整備の認定資格は、国土交通省認定の国家資格。専門学校は、「養成施設」として国土交通省の認定を受ければ、実習免除の特典が得られる(このあたりは自動車教習所の認定校と同じ扱いと考えればわかりやすい)。
「資格の学校」ということは、学校の教育目標が学校の外部にあるということだ。だから本来の意味での教育目標が存在しない。
「資格の学校」ということは、教育評価が学校の外部にあるということだ。だから学校内部の試験評価や教育評価に関心がない。
なぜそうなるのか。「資格の学校」という割には、医師資格や司法資格のような高度資格が専門学校に割り当てられているわけではなく、一般的な意味での専門学校対象資格は特に2年間(2年課程の場合)必死になって勉強しなければ受からないというような資格でもない。卒業前の3ヶ月、長くても6ヶ月受験勉強すればほとんどの場合、専門学校資格は合格する。
ということは、残りの学内試験の厳密化は意味をなさない。授業評価も意味がない。教員の専門性も意味がない。受験勉強にことさらに専門性は要求されないからだ。名門大学の合格率の高い予備校教員であってさえも、たとえば、その「教員」を「英語の専門家」とは言わないだろう。受験勉強はトレーニング教育に過ぎない(大学受験の場合が一番質の高いトレーニング教育だろうが)。
では残りの(受験期間以外の)教育マネージメントはどうなるのか。それは出席率重視の教育になる。「国土交通省認定施設(認定学校)」=「実習試験免除」というのが効いている。極端に(=本質的に)言えば、卒業することに意義があるのである。
大概の専門学校は、こういった官庁(厚労省、国交省など)の認定校制度によって出席縛りの強い学内マネージメントをやっている。