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ふたたび地方在住の先生(今後「Y先生」と呼ばせてもらいます)から論文紹介のメールが届きました。リツキサンはNMOだけではなく、MSにも効能があるという報告の論文紹介(2008年2月)です。メールの全文掲載します。
●そうですか、やはり奥様もリツキサン治療を検討されているのですね。
今年7月の東北大の糸山教授の講演でも、「難治性のNMOの治療については、リツキサンに大きな期待をもっています」とコメントされていました。
さて、あなたから教えて頂いた新しい文献を今読んだところですが、この論文でもやはりリツキサンがNMOに対して有効である事を示しているのではないでしょうか?
下にNew England Journalの、再発寛解型MSに対するリツキサンの効果について概要をまとめましたが、この論文ではリツキサン投与4週後の時点では、MSの再発率はプラセボ群よりもむしろリツキサン群のほうがわずかに高い数字を示しています。リツキサンが再発抑制効果を発揮するのは投与後12週以降であり、そこに一定のタイム・ラグが生じています。
このタイム・ラグがどうして生じるのかは三須先生(東北大)にお聞きになった方が良いと思いますが、例えば、リツキサン投与後末梢血の成熟B細胞が消失し、末梢血液中の抗体産生が抑制され、徐々に髄液中の抗体価も減少し、中枢神経に沈着した抗体・補体の複合体が減少するまで、それなりの時間を必要とするのかも知れません。
この観点から見てみると、あなたがリツキサンが無効?と感じられたCase1の06年5月の再発作はリツキサン投与後1ヶ月で起っており、不幸にしてまだリツキサンの効果が不十分な時期に起ったものとも考えられます(再発作直前のEDSS7.5から6.0まで改善していた事は、同時にリツキサン投与直前に行われた血漿交換の効果とも考えられます)。
以上のように考えれば、Case1の06年10月のリツキサン再投与が有効であった事とも矛盾しません。
ともあれ、あなたも書かれている通り、そもそもどんな薬もこの病気の場合、全ての患者に有効と言えるものはないのですから、未来を信じようではありませんか。
奥様にとってリツキサンが「奇跡の薬」になることを、心より祈っています。
さて、前回、NMOに対するリツキシマブ(リツキサン)の効果についての概略を紹介させて頂きましたが、MSに対してもリツキシマブ(リツキサン)治療は著効がみられていますので、引き続き概略を紹介します。
論文は2008年2月号のNew England Journal of Medicineに掲載された「B-Cell Depletion with Rituximab in Relapsing-Remitting Multiple Sclesosis」で、New England Journal of Medicineのホームページで誰でも全文(Full Text)が閲覧できます(http://content.nejm.org/cgi/content/short/358/7/676)。英語の医学論文で一般の方は読みにくいと思いますが、日本語訳の要約も掲載されています。以下に日本語要約を転記します。
「再発寛解型多発性硬化症におけるリツキシマブによる B 細胞の消失」(S.L. Hauser and others
背 景
多発性硬化症の発症には B リンパ球が関与することを示すエビデンスが増えており、B リンパ球が治療標的となる可能性がある.モノクローナル抗体であるリツキシマブは、CD20+B リンパ球を選択的に標的とし、消失させる。
方 法
再発寛解型多発性硬化症患者 104 例を対象に、48 週間の第 2 相二重盲検試験を行い、69 例をリツキシマブ 1000 mg 静脈内投与に、35 例をプラセボ投与に割り付け、1 日目と 15 日目に投与した.主要エンドポイントは、12,16,20,24 週目の時点で脳の MRI で検出されたガドリニウム増強病変の総数とした.臨床転帰は、安全性、再発患者の割合、年間再発率などとした。
結 果
プラセボ群と比較してリツキシマブ群では、12,16,20,24 週目の時点でのガドリニウム増強病変の総数(P<0.001)、および同時期の新規のガドリニウム増強病変の総数(P<0.001)が減少した。これらの結果は 48 週間持続した(P<0.001)。リツキシマブ群の再発患者の割合は、プラセボ群と比較して、24 週目(14.5% 対 34.3%、P=0.02)、および 48 週目(20.3% 対 40.0%、P=0.04)の時点で有意に減少した。初回投与後 24 時間以内に有害事象を発現した患者は、リツキシマブ群のほうがプラセボ群よりも多かったが、それらの多くは軽度〜中等度の有害事象であった。2 回目の投与後の有害事象の数は、両群で同等であった。
結 論
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