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591 re(2):現状復帰について
2002/3/23(土)02:02 - 芦田宏直 - 21499 hit(s)


 もちろん、変更はあってもいいと思います。ただし、その場合は、変更が全体に及ぼす影響のシミュレーションを徹底的に行う必要があります。

 たとえば、私の住むマンションでは、(現状では)バルコニーの手すりがモルタルのコンクリートのむき出しになっていました(その上にアルミの手すりが付いている仕様)。このモルタルの部分を笠木(かさぎ)といいます。外から見るとバルコニーのブラウン色タイル壁面の上部(グレーのモルタル部分)が25ミリくらいの厚さの帯で(10ミリの溝を介して)走っていました(従って、色はコンクリート色のグレーでした)。同じようにバルコニータイル壁面の下部も二段階の刻みの凝った作りで薄いベージュ色のラインをサイドに走らせていました。ブラウンタイルのバルコニーを上下のライン(モルタルグレーとベージュのライン)で挟んでいるそういった作りになっていたわけです。 

 モルタルの笠木は、10年経つと細かいひびが入り、大規模修繕では、通常ウレタン塗装の対象になります。しかし、ウレタン塗装は、光りやすく、最初のモルタルの質感が簡単には出ません。いかにも塗ったな、という感じで安っぽくなります。

 そこで、我が理事会は何を思ったのか、タイルの色に近い、茶色に塗ることを提案しました。しかし、笠木部分をタイルの色と大して違わない茶色に塗ることは、バルコニー全体のイメージ、ひいてはマンション全体のデザインの大きな変更になります。単純に考えても、上部サイドラインに関して締まりのないのっぺらぼうなバルコニーの風景に変形してしまいます。同系色であるためにおかしくはありませんが、イメージが変わることは明らかです。

 こういった変更を行う場合、まず、グレーであるとなぜいけないのか? の議論を公明正大に行うべきです。一つは、グレーのウレタン塗装では、光りやすく、安っぽいという場合、何色のグレーを検討したのか、現場のモルタルに近いグレーの色出しにどれほどの検討が加えられたのか(塗装業者、カラーコーディネータ、建築デザイナーなどの専門家の検討など)、ということが問題になります。我がマンションでは、既成色の2色のグレーを検討しただけで、早々と茶色に決まってしまいました。しかも茶色にした場合、全体の景観がどう変わるかのシミュレーションは一切ありませんでした。色見本だけで決めたわけです。

 これは無謀です。6畳の部屋のカーテンでさえ、見本だけで決めるのには大概失敗します。それを160戸(1万2千平米の敷地を有する)のマンションで外壁バルコニーのデザインの大勢を決める笠木の色を景観シミュレーションなしに決めるというのは、無謀です。まだ足場が外されていないため、私もどうなるのか大変不安です。誰一人、全体がどう変わるのか知らないまま茶色にしてしまっているのです。

 そもそも、最初にやるべきなのは、グレーの色出しを徹底的に行うことです。本当にモルタルの色に近いウレタングレーは出し得ない色なのかどうなのか、の徹底的な検証やってからこそ、他の色の“変更”を考えるべきであって、その検証過程は、今回の茶色決定の過程では根本的に抜けています。

 笠木のモルタル仕様は、まず第一にデザイナーの選択が働いています。バルコニーのサイドラインに緊張感を持たせて、建物を大きく見せることに成功しています。わざわざ、このサイドラインを(タイルと同じ色の茶色にすることによって)消すことに、どんな意味があるのか? このことに、理事会は答えなくてはなりません。

 しかし、そんなことに答えられるわけがありません。施工業者も設計監理者も、グレーがイヤなら、同系の茶色はどうか、という提案をしただけです。要するに「おかしくはない」という提案の仕方です。積極的な意味など何もないのです(あるはずがない)。

 というのも、私は、このマンションのデザインは14年経った今でも、最新のマンションも含めて、他のどのマンションよりも優れた造形を形成していると思うからです。特に、このマンションは共通廊下を徹底して排除して(160戸の規模で10基のエレベータを配置するという贅沢な仕様になっています。私のフロアのエレベータは私の住戸しかありません。専用のエレベータになっています)、裏(背後)から見ても前から見ても同じ造形を保っています。そのためにクーラーの配管も外部から見えないように床置き式のものを標準仕様で用意する徹底さです。外壁からたれた縦にのびる配管が壁面のデザインを阻害するからです。そのように裏・表のない景観を成功させた最初(にして最後)のマンションが、我がマンションです。その威風堂々な景観にバルコニーの笠木のサイドラインが一役買っているわけです。マンションデザインを考える人は、必ず参照すべき優れた造形を保っています。

 こういった議論が全くないまま、ウレタングレーは、「安っぽいから」という理由で笠木が茶色になりました。サイドラインが消えたわけです。バカなことをしたものです。今頃デザイナーは泣いていると思います。これもマンションの資産価値が減退することの一つです。デザインも資産なのですから。

 私が言いたいことは、変更には、積極的な理由がなければならないということです。「おかしくはない」ということで、変更を重ねていけば、かなりの変更が自由になります。デザイナーの造形は、一つのコンセプトから細部が煮詰められていきますが、理事会の変更は「おかしくはない」細部の変更から、全体が形成されていくため、全体のコンセプトが消失していきます。そうやってデザイン資産が減退するのです。理事会の暴走がいかにマンションをダメにするかの好例です。
 
 それを防ぐには、徹底したデザインシミュレーションが必要になります。初源のデザイナーが苦心したのと同じコンセプトシミュレーション、カラーシミュレーションなしに、「おかしくはない」程度で、色を変えてはいけないのです。現場復帰というのは、保守的な行為ではなくて、蘇生行為なのです。


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