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 番号 日付  題名 投稿者 返信元  読出数
391 12/29(水)
01:24:52
 『そっとおやすみ』と歌舞伎町  メール転送 芦田宏直  No.390  2293 

 
布施明の『そっとおやすみ』(http://musicfinder.yahoo.co.jp/shop?d=p&cf=52&id=246977)は、実は私の本来のお好みの曲ではない。久しぶりのスナック(学校の近くの「明日香」という店)でのカラオケやり放題だったので、もうそろそろお開きかなと思って、この歌を選んだ。というのには、理由がある。4年前の夏、私は、中央大学のK教授(政策科学)の“お導き”で歌舞伎町に通い詰めだったことがある(二ヶ月間彼と二人きり)。この教授は歌舞伎町の生き字引のような人で隅から隅までどこのお店でも知っている。いつも朝まで付き合っていたが、ところが、私は一滴もお酒を飲めない。彼のお陰で女性がそばに侍って、お酒を飲むということがどういうことかをはじめて体験したが、それもずーっとウーロン茶ばかり。「そんなにウーロン茶ばかりを飲んでいたら胃に穴があくよ」と注意されながら朝までウーロン茶を飲んでいた。

彼の行く店はアジア系の留学生がたくさんいるところ。上智大学の中国人の留学生なんかは、(今でも覚えているが)まるでサントリーのウーロン茶に出てくるようなとびきり美しい女性だった。その女性にすすめられたお酒を口に少し含ませたら(私も美人には弱い)、これがなんとまろやかでおいしい。「先生、これおいしいですね。何という酒ですか」と私が聞くと、酔っぱらった彼が「当たり前だよ。これがヘネシー」。「ヘネシー。聞いたことがある」。これなら飲めるかもしれない、とは思いつつ、それ以上は飲まなかった。以前、ジュースと、間違えて、何とかフィズという缶に入った飲み物を飲んで、朝起きたら、ひどい頭痛。最初これが何が原因の頭痛かわからなかったが、よく考えてみたら、女子大生が飲むような、その何とかフィズが原因だとわかった(それだけで二日酔い)。要するに私は無茶苦茶に酒に弱い。だから、たぶん調子に乗って飲むととんでもないことになる。いくら美しい中国人女性にヘネシーをすすめられてもここだけは譲れない。

そんなK教授との歌舞伎町2ヶ月間の中で、思い出に残るシーンが布施明の『そっとおやすみ』。ある日、二軒目の店に深夜2:30くらいに立ち寄った。彼のなじみの店だったらしく、ママさんはもう店じまいをし始めていたが(私たちしかいない)、無理を言ってのませてもらっていた。私は矢継ぎ早に歌を歌い続けていたが(どこへいっても歌う歌が郷ひろみの『よろしく哀愁』『HOW MANY いい顔』『銭形平次』の三曲)、そこへ突然、中年の男が入ってきて、(一言もしゃべらす)離れたカウンターで背中を向けながら飲み始めた。しばらくすると、K教授が、「芦田さん、『そっとおやすみ』を歌ってくれない」と言う。「わかりました」と検索して番号を入力。なんで『そっとおやすみ』なのよ、と思いながら、でもその時代の前後の歌で歌えない歌はない。はじめてカラオケで『そっとおやすみ』を歌った。この歌はたしかクニ河内作詞作曲だったよな、と思いながら、暗い閉店間際の店でていねいに歌い上げた。

「よし、芦田さん、もうこの店は出よう」と急ぐK教授。ありがとうございました、とママさんに一言言って一緒に出た。「危なかったよ」とK教授。「どうしたんですか」「いや、あの男、ママさんの男。帰りが遅いから、怒って店まで見に来たんだよ。あのままいたら、どうなっているやら」「だから『そっとおやすみ』ですか」「飲み屋であの歌は、もう帰ります、ということなのよ」「なるほど」。でもよーく考えたら、歌い上げている場合ではない。だったら早く店を出た方がよかった、くらいの話で、笑うにも笑えない。

それが私の『そっとおやすみ』体験。今となっては楽しい話だが、当時私には何がなんだかさっぱりわからないことが多すぎた。わからないからこそ、歌舞伎町を闊歩できたのかもしれない。あの美しい中国人女性は今頃何をしているのだろう。


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