番号 | 日付 | 題名 | 投稿者 | 返信数 | 読出数 |
189 | 9/7(日) 01:08:11 |
これがテラハウスの授業風景。 | 芦田宏直 | 0 | 3161 |
「芦田の毎日」読者の方から、185番の記事「『学校見学会』を信じてはいけない」(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=185)の最後の文章:「私の学校は、学校見学会はすごく下手ですが、授業はどこにも負けません」について、どこがどう負けない授業なのか、教えて欲しいとメールが極秘に来ました。どこまでうまく説明できるかわかりませんが、箇条書きで整理しましょう。私が毎朝見て回っている授業風景を整理するとわが学園には(とりあえず)11のポイントがあると言えます。 1.すべての授業で、開始チャイムが鳴る5分から10分前に教員が教室に入室していること 2.すべての授業で、開始チャイムが鳴る前に学生への資料配付(教材配布)が完了していること(まだ来ていない学生にはその学生の机上に教材・資料が配布されていること)。 3.すべての授業で、開始チャイムが鳴る前に入室している学生の出欠チェックが完了していること。 4.すべての授業で、開始チャイムが鳴ってほぼ1分以内に「今日の授業は … 」と実質的な授業開始が始まること。 5.〈シラバス〉(講義概要)のみならず、一コマ毎(90分単位)のシラバス=〈コマシラバス〉が存在していること。つまり毎日の授業毎(90分単位)に授業目標が学生に対して公開されていること。 6.その〈コマシラバス〉に基づいて、その授業でどんなことを学ぶのかを10の項目から解説するA4版の〈今日の授業シート〉(詳しくいうと、このシートには〈シラバス(全体目標)〉、そのコマで何を学ぶべきかを示した〈10の項目〉、10の項目を理解するための〈キーポイント〉、10の項目を理解するための〈参照資料の指示〉、教員のそのコマについての〈一言コメント〉といった5つの内容が記載されているA4用紙一枚)を毎回授業開始時に配布すること。 7.その「今日の授業シート」に基づいて、授業開始時5分から10分使って、教員が今からどんな順番に何を学ぶのかを概観する「授業概観」を行うこと。90分の授業を一つの書物になぞらえれば、「今日の授業シート」は一種の目次。その目次の解説を行うのが「授業概観」。学生と教員とがそのコマのストーリー(=概観)をあらかじめ共有して授業を始める。教員が何を話し出すかわからない授業は不安定そのものだ。少しでも最初の印象が悪いと後は誰も聞かないことになる。あらかじめ何がそのコマのポイントなのかを予告することは、学生の授業理解を強力にサポートする。 8.「授業概観」は、ただ紙を使って行うのではなく、プロジェクタでスクリーンに投射して(差し棒を使いながら)行うこと。テラハウス東京工科専門学校では、すべての「授業概観」は、パソコン=プロジェクタ投射しながら行われる(テラハウスすべての教室にその設備を用意している)。その方がはるかに学生の授業集中度が増すからである。われわれは、「それを〈参照指示性〉が高い授業」と呼んでいる。教科書の「どこどこを参照しなさい」という場合、どこを先生が指示したいのか、教科書のどこを指示しようとしているのか、それがわからなくて(くだらないことに)時間を取られることが多い。それだけでも集中度が落ちる。紙に目を落とし、先生の話を〈聞く〉だけでは、集中度は落ちる。シートが投射されたスクリーンを見ながら聞けば、はるかに学生の集中度は高まる。「参照指示性が高い」。授業シートのみならず、すべての授業で教員はパソコンにデータを集約し、それをプロジェクタ投射しながら授業進行している(その資料も学生の手元に配付しながら)。 これは、特にはやりのマルチメディア授業を意識しているというわけでもない。毎年毎年板書に同じことを書きながら、消えるトークと消える板書を繰り返している授業では進歩がない。毎年毎年同じ箇所で「わからない」学生を作っているだけだ。そもそも板書そのものが時間のかかる行為だ。書道の授業じゃあるまいし、基本内容を板書するというのはふざけた授業だ。板書はリアルタイムなメディア(その場で、その時に思いついたことだけを示すメディア)。教えるべきことは、集約性の高い、ポイントを示すのに適した投射(とその配付資料)で行う。これがテラハウス流。 9.90分の授業の最後に、先の「今日の授業シート」の10ポイントに対応した10問の〈授業カルテ〉(A4版シート1枚)、一種の小テストのようなものを行い、そのコマで学ぶべきことを学べたかどうかを教員、学生との間で確認し合うこと。このカルテで理解の欠落した部分は学校全体のサーバーにその日の内に記録され、学生の補習対策などの資料となる(学校側からすれば、なぜ、学生にわからない授業をしてしまったのかの反省材料になる)。全学すべての授業のコマ単位の履修欠損(授業カルテの何番の問題が学生の誰にわからなかったのかということの特定を、われわれは「履修欠損」と呼んでいる)がその日の内にわかるようになっている。 10.〈授業カルテ〉が終われば、最後にその〈模範解答〉(A4版シート1枚)が配られ、90分の学ぶべき内容の全容が学生の前に開示されることになる。一つのコマで、〈コマシラバス〉に基づいた「今日の授業シート」「授業カルテ」「模範解答」と3枚のシートが学生一人一人に毎日1時限単位(コマ毎)に配られることになる。期末の試験前には、強力な学習履歴(学習ポイント)の資料になり、2年間の卒業時にはこの学習記録だけで(積み上げると)1メートル近くの高さになる。全学(東中野校、中野校、世田谷校、品川校、国立校)では月間20万枚以上の授業シートが毎月配られていることになる。もちろん、これは授業シート類の資料だけ。他にも通常、学校で使用されている教科書類やサブテキスト、コピー教材などを入れると、わが学園が一コマの授業(90分)に配布・供給している授業情報は世界一の分量といっても良い。 11.教員はもちろんのことだが、すべての学生はすべての授業でノートパソコンを持参し、ネットワーク(インターネット+学校のサーバー)に結びついた状態で授業参画している。インターネット上は、情報系に限らずどの分野にとっても生きた教材の海だ。授業中のリアルタイムなサイト参照はもちろんのこと、教材の配信もネットワークを通じて行われている(今となっては当たり前のことだが)。 これが、テラハウス東京工科専門学校(東中野校)の授業風景。こんな授業風景はかつてどこにも存在しなかったはずだ。一つ一つの授業を大切にする。90分で何を教えることができるのかを真摯に問う。それが私たちの教育のすべてだ。これは学校の個性というよりは、本当はこうでなければならない、という当たり前のことをかつて一度もやってこなかった学校関係者の自省の結果に過ぎない。 結局、わがテラハウス東京工科専門学校の授業ポイントは、一つに集約される。90分単位に授業目標(目標、ストーリー、評価の仕方)が学生に開示されているということだ。教えなければならないこと、学ばなければならないこと、それが明示されていれば誰だって時間を大切にする。だから始業前入室は規則でもなければ、学生へのサービス(顧客重視)でも何でもない。これまでの教育や教員が目標を持たずに教室に入っていたことの反省に過ぎない。 みなさんの学校ではチャイム開始後、何分以内に実質的な授業が開始されますか? 私のテラハウス東京工科専門学校では、最高記録が17秒後です。90分で何を教えるべきなのかの目標を持たない教員と学校だけが、この開始時間をおろそかにしてきたのです。学校や教員自身が充分な時間を教育に使わずに、できない学生がいることを学生の所為にしてきたのです。「今日は何ページからだっけ?」と学生に教科書の開始ページを聞く教員。そんな学校は学校ではありません。 |
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