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1077 9/11(日)
15:28:08
 レクサスGS430に乗ってきた ― レクサスブランドの威力はいかに?  メール転送 芦田宏直  8447 

 
トヨタのレクサス店(http://lexus.jp/)が世の中を騒がしている。TOYOTAという“ブランド”を一切使わずに、「レクサス」という新ブランドで通すらしい。価格は最低でも600万円以上、来年には1000万円のレクサスが登場。ベンツ、BMWの客層を狙う。

少子高齢化を迎えて、マークU(マークX)を10台売るのと「レクサス」1台売るのとは利益幅がほとんど同じ、だから少量で生き抜く戦略としては高級車しかない、ということらしい。わかりやすい話しだ。

そのためには、店構えから、営業マン(の顧客対応)まで“高級”でなければならない。“レクサスカレッジ”まで作って社員教育を徹底。2000名を越える全国のレクサスディーラーの営業担当を富士スピードウエイに呼んで、レクサス試乗会を開催。さらには女子社員には左ハンドルの車庫入れの練習までさせる徹底ぶり(ベンツ、BMWで来るであろうお客様が当然のことながら左ハンドル車であるため)。

こんな徹底ぶりは、トヨタにしかできないだろうが、TOYOTAが本当にベンツ、BMWと比肩しうる高級車を作ることが出来るのか。私には大いに関心があった。アメリカではすでにベンツ、BMWの高級車シェアーを抜いているらしいが、機能主義的なアメリカ人に“高級車”がわかるわけがない。だから機能とはもっとも縁遠いクルマ、BMWアルピナはアメリカでは(アメリカ人には)一切販売していない。

そこで、ぜひトヨタ日本文化論の象徴であるレクサス(=あるいは日本的な「高級」思想の象徴であるレクサス)に試乗しようと思って、レクサス荻窪(http://lexus.jp/shop/dealerinfo.do?dealerCode=23662)に電話をしてみた。

電話をしたら、35〜40歳前後(?)の男の人が出た。

「レクサス荻窪って、どこの通り沿いにあるのですか」
「環8沿いにあります」
「環8ですか」
「高井戸の方から行けば、どちらがわにありますか」
「高井戸って? 高井戸って、どこでしょうか」
「あなた、環8沿いにあるレクサス荻窪店の受付の電話を取って、高井戸がどこにあるのかわからないの」
「すみません」
「高井戸がわからないのなら、環8を南から北上すればどちら側?」
「左側です」
「わかりました」
「それじゃあ、ついでに聞くけれども、荻窪駅から歩いてどれくらい?」
「走れば、2、3分です」。
「走れば?」(思わず私は笑ってしまう)
「走れば、って言ったってどれくらいの速さで走れば、2、3分なの? 歩く速さの差よりも走る速さの差の方が大きいから、それは目安にはならないよ」
「歩いて5分から10分くらいです」
「それもなんだかわからない誘導だね。徒歩で5分と10分じゃかなり違うよ」
「スミマセン」
「わかりました。また出直します」

当分の間、試乗は先に延びそうだ、と思っていたら、今日(土曜日)、学校見学会の後、やはり気になって高井戸インターを下りて、おもむろに荻窪方面にハンドルを切った。

2日前から、わが校の自動車系の先生たちと勉強のためにもみんなで行こう、と伝(つて)を頼って試乗のチャンスをうかがっていた。

わが校エンジンメンテナンス科(http://www.tera-house.ac.jp/course/car/en/index.html)の今城科長からトヨペット中野の袖山さんを頼り、レクサス荻窪の立山さんを紹介して頂いた。レクサス荻窪店はトヨペット店が出店しているらしい(レクサス店はトヨタ店、トヨペット店、カローラ店からそれぞれ再構成されているとのこと)。

ところが、その「立山さん」の名前を忘れてしまって、「袖山さんからの紹介で」と言っただけではやっぱり「12日からでないと試乗は出来ません」と断られてしまった。「試乗車は荻窪店にあるのですか」「ございますが、12日以降でないと一般的な試乗はお断りしております」とのこと。「なんとか店内だけでも5メートルくらい試乗できませんか。5メートルも走ればわかることはわかると思うので。いずれにしても今から10分以内にそちらに伺います」と車中から連絡を取った。

レクサス店は環八外回り沿い、JR中央線を600メートルくらい北上したところにある。

店の前に着いてハンドルを左に切ると、驚いた。8人くらい(それ以上かもしれない)の人が店のアプローチ(店外)で迎えてくれる。どこで止まればいいのかもわからないくらいアプローチが広い。下りると私の車の鍵を預かろうとする人がドアに近づいてきて「お車をお預かりしてよろしいでしょうか」と言う。「お預かりって?」と聞くと、クルマ専用のエレベータで屋上かどこかに持っていくらしい。左前方にそのドアがある。私の愛車は誰にも渡したくない。「それは困ったな…」という顔をすると「それでは、そちらにお止めください」となかなかタイミングのよい対応。「わかりました」と入り口の近くに止めさせて頂いた。そんな路上駐車のようなことは滅多にしないが、8人も関係者がいる駐車場ならまず安心だ。

「先ほど電話した芦田と申しますが…」と名乗ると、「袖山の紹介ということでお聞きしましたが、袖山の紹介は立山という者になっておりますので、立山が対応させて頂きます。試乗車も用意させて頂きます。先ほどは失礼しました」と店長(「マネージャー」)の館野さん。

「いつも卒業生がお世話になっております」と学校の名刺を渡した。「最近は一級整備士の教育もやりはじめて、高級なクルマの勉強もぜひさせて頂きたいと期待しております。今日は楽しみにしています」とご挨拶。

店長の館野さんに立山さんを紹介して頂いた。立山さんは若い。「芦田様、試乗車を用意致しますので、しばらく店内でお待ちください。内覧されますか」

と、V8、4.3リッターエンジンのGS430(http://lexus.jp/models/gs/)の運転席に座る(このクルマの購入総額はなんと8651440円!!)。第一印象は、「狭い」。ヘッドクリアランスがほとんどない。私の身長は175センチ。それほど高くはない私でも天井と頭との間にはほとんど隙間がない。シフトがあるセンタートンネルの高さは丁度よい高さで、その気にさせるが、このAピラーの傾斜から天井に至るラインの窮屈さは評価がわかれるところだ。質感は悪くはないが、極上という感じでもいない。もともとがアリストの流れをくむクルマだから、スポーティな感じでまとめている限りは極上である必要はないのかもしれない。でもメータパネル類は、この車格にしては大人げない感じ。特にセンターパネルの造形が平面的にすぎる。一方でメータパネルは凸凹が激しい。

リヤ席は、思ったほど狭くはない。足下も大人の私でも充分ゆったりしているが、やはりリヤ席もヘッドクリアランスが全くない。ヘッドクリアランスをどう評価するかで、GS430の車内評価は決まる。

ヘッドクリアランス問題を無視すれば、ドライバーズシートからの視界は自然で悪くはない。ボンネット前方の両サイドも把握しやすいし、すぐにでも本気で走らせることができそうだ。

外から見るデザインの最大の評価ポイント(評価の分かれるポイント)は、リヤビュー。テールランプの形状が、このGS430のもっとも個性的なところ。私はとても好きになれないが、だからこそ個性的と言うべきか。立山さんに言わせると、「リヤビューが走っているときには一番長い時間、人に見られるところなので力を入れたところです」とのこと。「そうだよね。10年前のシルビアのヒットなんてリヤビューの造形が決定的だったからね」と私。最初から格好いいクルマはすぐに飽きられる、という点では、このリヤビューも目が慣れてしまえば、新しいデザイン、と評価されるかもしれない。たしかに腰を低くして見ると(目線をテールランプの高さにしてみると)、リヤビューにはそれなりの個性的な主張が見える。

さらにこのGS430のリヤは真後ろから見るとおしり下がりのデザインになっていて、その上絞り気味のリヤビューになっているので(要するにマークXふうのデザインを踏襲しているので)、800万円の迫力に欠けると言えなくもない。いずれにしてもリアビューはあらゆる角度から丁寧に見ていかないと評価が下せない。

一番きれいなのは(と私には思える)、サイドウインドウの全体の造形。特にCピラーとリヤウインドウの造形は、このGS430のデザインの中で一番私の好きなところ。初代アリスト(ジウジアーロデザイン)のCピラーのデザインを彷彿させる。

フロントビューはグリルデザインは大したものだが、それ以外は凡庸だ。

トランクは(この種のクルマにしては)めちゃくちゃに広い。この広さを天井に少しでも分けたいくらいだ。こんな天井の低いクルマで別荘に行く人などいないのだから、トランクをここまで広く取る必要はない。

タイヤはADVANの240/40をはいていたが、ZRタイヤではない。それにいくつかのタイヤメーカーが用意されていて、契約時には選べないと言う。800万円も払うクルマのタイヤ(タイヤ選択)としては不満が残る。ポテンザまでは必要ないがせめてミシュランのパイロットスポーツくらいは装着すべきだ。

内覧でのポイントは以下の二つ。
1)ヘッドクリアランスが評価の分かれ目
2)リアビューが評価の分かれ目

内覧している最中に、今度は店長(マネージャー)の館野さんが、GM(ゼネラルマネージャー)の高岩謙一郎さんを紹介してくださった。どこかで見たことがあるな、と思ったら、先週の『ガイヤの夜明け』のレクサス特集で、登場されていた高岩さんだった。「『ガイヤの夜明け』見てましたよ。こんなところでお会いできるなんて。光栄です」。

高岩さんは照れ笑いされていたが、突然来訪した私に暖かい応対。そこで早速、レクサス荻窪の受け付け体制について、お話しした。こういったことはトップの方にこそ、耳に入れておかなくてはならない。ある意味では同じ業界にいる私(たち)のせめてもの交流だ。一言も弁解されず、押し殺したように聞いて頂いた。私もできるかぎり忠実に荻窪店受け付け対応の中身を報告した(先に記録したように)。「私も卒業生の不備を棚に上げて報告している場合ではないのですが」とも付け加えたが、はるかに深刻な表情をされていた。開店直後のGMとしては頭の痛い思いだろう。私も他人ごとではない。

さてそうこうするうちに試乗車が用意されて、このGS430に乗った。

店の真ん前、環八の外回りに合流するときに、歩道を横切る瞬間に、採点ポイントが一つ。2、3センチの段差を超低速で乗り越えるときの上下動に雑な突き上げがある。

環八に合流し、すぐに左折。信号手前でわざとらしいブレーキングと加速をくり返す。私の、“高級車”評価の第1のポイント、ピッチング制御。簡単に言うとブレーキを踏んだときにフロントが沈んだり、加速したときにフロントが浮く現象をどこまで制御できているか、ということ。ピッチングほど不快なものはない。特に日本車のFF車のピッチングはひどい(だからFF車で“高級車”というのはほとんどあり得ない)。

でもこのGS430。FRであっても日本車にありがちな(特にトヨタにありがちな)ピッチングはよく抑えられている。不快感はない。

それに小さな道の左折、右折にもあおられ感もない。ハンドルを切ったときに、たとえば、左折(右折)するときに左(右)のノーズが浮かずに沈み気味に曲がれば、ハンドリングは楽しい。このクルマ、住宅街では決して小さなクルマではないが、狭くても苦もなく楽しく曲がることが出来る。ロールがよく抑えられているということだ。

「スラロームしたいね」と思わず言ったら、立川さんは「住宅街ですからね、それは止めましょう」。当然の答えが返ってきた。

私がこのクルマの走りで一番気になったのは、エンジンブレーキが効かないということ。日本車のオートマティック車には、アクセルを離すと1速や2速であっても転がり続けるクルマが多い。GS430の6速オートマティックも例外ではなかった。

エンブレの不快感を避けるためかどうかわからないが、しかし、クルマは転がっているときが一番不安定だ。エンジンの回転が上がったり、下がったりする動きに、できるかぎりクルマの動きも追従してほしい。そうでないと毎回ブレーキを踏むことになる。回転落ちが悪いロータリーエンジンもアクセルワークの面白さに欠けていた。クルマのエンジンは吹き上がるだけではなく、吹き下がる俊敏さも必要だ。

本来の高性能エンジンは回転落ちも速く(そのためには、ピストンもバルブも出来うる限り軽くそれでいて剛性のあるもの、そしてまたすべてのピストンやバルブが重さのばらつきで干渉しないようにコンマ2桁3桁まで同じ重さで調整されなければならない)、だからこそ、足先の親指のちょっとした動きにも俊敏に反応する。GS430のオートマッチクトランスミッションは、このクルマのV8エンジンが優れたエンジンなのか、そうではないのかさえわからない不思議なミッションだ。

ブレーキもよく効くが、しかし一体感に欠ける。座布団一枚を挟んだようにブレーキペダルを押している感じ。だが剛性感はある。

アクセルにしてもトランスミッションにしても、さらにはブレーキにしても、このGS430は、さまざまなコンピュータ制御が施されているから、その分ダイレクト感に欠けるのかもしれない。安全性を第一義におけば、様々な操作系は間接性を増大させるしかない。

たとえば、このクルマにはVDIM(アクティブステアリング統合制御)という高次の統合制御機能が備わっている。従来のたとえばトラクションコントロールなどは、アクセルを踏んだり、ブレーキを踏んだりした場合の制御機能だったが、アクセルを踏んでいない場合(たとえば低速コーナーを、オーバースピードで突っ込んだ場合などで、びっくりしてアクセルから足を離した場合)でもステアリングをアクティブに制御して(その舵角に基づいてトラクション制御しながら)体制を立て直そうとする。

こんなことを勝手にやってくれるのだから、エンジンやブレーキとの一体感は損なわれてもしようがないと言えないこともない。先ほど触れたロールの制御やコーナーリングにしてもアクティブスタビライザー+ギヤ比可変ステアリング(VGRS)によって生まれているフィールであって、スポーティなハンドリングというわけではない。ただしギヤ比可変ステアリング(VGRS)の味付けは、2年前に登場したニューBMW5のそれよりははるかに自然な味付けで、決して悪くない。全般に剛性感があって(ただし本当の剛性感は街中では試せないが)、その分高級感がある。

もうひとつ「ただし」、BMW645サスペンションのアクティブ制御の方が、(安全性はともかくとして)リヤサスの追従性は勝っている。

エンジン音はほとんど遮蔽されている。音が静かというよりも遮蔽感の方が強い。ボディもしっかりしているが、それはアナログ的なダイレクト感に繋がっているわけではない。たぶん電子制御の数値指標に寸分違わず適合するための剛性なのだ。

店内に戻ってきて、同乗していた立山さんに、「あの二速での転がり感は何なのだろう」と(ずっと気になっていたことを)聞いたら、テクニカルスタッフを呼んでくると言う。

荻窪店「ワークショップリーダー」(テクニカル系の責任者)の渡部宏さんを紹介してくれた。ただしあまり自覚したこともないし前例のない質問なので、「調べてみます」、とのこと。

私がついでに渡部さんにお願いしたのは、やはりタイヤのこと。グロスで800万円もするクルマでタイヤが貧弱なのは残念だ、と訴えた。「ベンツやBMWを買う客層はこのタイヤではたぶん満足しない。高速走行で試乗すれば、もっと文句を言うかもしれない」。「環境問題があるのかもしれません。貴重なご要望として報告しておきます」と渡部さん。

計画もなく来た割りには、長い時間おじゃました。その間も来訪者は多く、私がいる間に契約席にも1、2名見かけた。契約席はイヤでも目に入る位置にある。心憎い演出だ。

最後に立山さんは「見積書」を持ってきた。

●GS430(4.3L、V8、FR 6A/T エンジン型式UZS190-BETQK)
車両本体価格 6300000円
メーカーオプション価格 1641150円
(サス電子制御系、マークレビンソン5.1chオーディオ、サンルーフなど)
付属品価格 126000円
車両現金販売価格 8067150円

その他税金・保険料など 584290円
消費税・地方消費税合計 387018円

お支払総額 8651440円

結局、このクルマ900万近い買い物になる。

「値引きは?」「一切ありません」ときっぱり立山さん。自信に満ちている。

帰る間際にも高岩さんは出てこられた。「本当に勉強になりました。またじっくり試乗させてください。突然のことでご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と私が先に恐縮。「こちらもいろいろとご迷惑をおかけしまして」なんて言われるともっと恐縮。帰りもまたたくさんの方に見送られて、この送迎はどう考えても照れる。でも立山さんは、私の車も「格好いいですね」とほめることを忘れない。「でしょ」と思わず、図に乗っておいたが。「GS430も、ちょっとやそっとでぼろの出るクルマじゃないよ」と返しておいた。「ありがとうございます」。なかなか楽しい土曜日の夕方だった。

追伸:帰りに立山さんに頂いたお金のかかったパンフレットとDVD。家に帰ってDVDを見たが、一つ気になるキャッチがあった。「微笑むプレミアム」。なんとなく言いたいことはわかるが(たぶんたとえばアクセルを踏んだ瞬間にその上質感と瞬発感に思わず笑みがこぼれるということなのだろうが)、少し辛い。もう一つ、いろいろなことに違いを見せつけて新しい高級ブランドを作ろうとしているのに、見積書の紙と印刷が普通のカローラなどと変わらない安っぽいもの。むしろこの見積書にこそ上質紙とカバーを付けて、冷やかし組を牽制するような体制を取った方がいいような気がする。最後にもう一つ、自宅に帰ってきて、頂いた4枚の名刺を整理していたら、GM高岩さんの名刺にだけ、メールアドレスがない。これは意識されてそうなのだろうか。私には逆に思える。トップに立つ人ほどメールアドレスを記すべきだと思う。

また伺います(ご迷惑かもしれませんが)。高岩さん、ありがとうございました。レクサスブランドの確立に期待しています。


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