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多発性硬化症 の治療は怪しい ― 「インターフェロンベータ1bは日本人の再発寛解型MS患者において有効である:ランダム化された多施設研究」論文を誰がまともに読んでいるのか?(2009-11-11 02:13:21)へのコメント

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by 大森(2009-11-11 18:42:49)

大森です。

サンプル数、サンプルサイズ、についてです。

これらの用語については、投稿全体の中では、一番大事なところではなかったので、説明を省略したので、芦田さんを混乱させてしまったかもしれません。

サンプル数、サンプルサイズという言葉については、以下のサイトがわかりやすく説明してくれています。

サンプル数とは何か?
http://www.jil.go.jp/column/bn/colum005.html

大学教養で統計学を履修した学生なら、指導教官に口を酸っぱくして、サンプル数と言うな!と言われた思い出があると思います。

もちろん、統計学にもいろんな流派があるでしょうから、同じように考えない人もいるかもしれませんね。


by Anonymous Twitter(2009-11-11 19:00:40)

興味深く拝読しました。以下雑感

1:2005年のNeurology該当論文については、大森さん御指摘の通りと思います。ですから、論文については、逐一「批判的に吟味すること」が必要なわけです。

2:論文著者は、論文がacceptされ、publishされることを第一義に考えて論文を著します。すなわち、impactのある結論が(出ていなくても)出たように書きます。ですから、著者の結論=論文から読み取るべきこと とは限りません。但し、このことで医師としての職業倫理を云々するのは酷です。あの先生もこの先生も多少は思い当たることです。

3:Neurologyはアメリカ神経学会の雑誌で、それなりのインパクトファクターですが、この論文1本が現在の本邦のMS診療のメインストリームを決めているとは考えられません。その程度の雑誌と思われます。

4:今日的には、主要なJounalはNegative dataであっても出版しやすいように(publication viasを避ける目的で)、臨床試験開始前にClinicaltrials.govへ登録することを義務付けています。

5:NMO-IgGは新しい疾患マーカーで、現在はenthusiasticな検討が続けられていますが、そのうち定位置が決まるでしょう。感度・特異度100%は嘘だと思われます。「時間の洗礼」を受けて生き残る疾患マーカーというのはそれほど多くはありません。

6:MSは、OSMSもCMSも希少疾患です。高血圧や糖尿病のような良質な前向き試験を計画することは容易ではありません。それだけに既存臨床試験の注意深い吟味と、(神経)免疫学の知識を頼りに治療方針を組み立てていくべき疾患で、「クックブックマニュアル」のような治療は不可能です。

6-1:理想的にはその事を踏まえた臨床経験豊かな神経内科医が専門的に治療に当たるべきですが、現実(本邦の医療体制)が良くも悪くもそれを許さないということもあります。

6-2:非-専門家(すなわち、例えば上掲論文を批判的に読めない医師)がそのような希少難病の診療にあたることについては、クオリティ・コスト・アクセスのうち後2者を選択した本邦の現行医療体制ゆえ、とも言えます。ちなみにこれら3者をすべて選択することは不可能です。

7:ということで、芦田さんのPDFファイルpp 11-12の「原則」には賛成です、が、画餅、とも言えます。

8:蛇足ですが、液性免疫=B-cell, 細胞性免疫=T-cellとは限りません。「T-cellからB-cellにシグナルが送られて、B-cellは指示されるままに抗体を産生する」というストーリーは二昔以上前のものです。

ですから、PDFファイル pp13-14のような「リツキシマブが奏功したから液性免疫の疾患」という議論は、少なくとも今日的ではありません。少なくとも全身性エリテマトーデスや関節リウマチの専門家は同意しないでしょう。

わたくしたちが「知っていること」はわずかで、しかしその「わずかなこと」をもとにさまざまなことを決めていかなければならない(知っていることだけでは決められない)、ということをappreciateしなければならないと思う昨今です(新型インフルエンザについても同様の感想です)。


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