「学び合い」教育の諸問題(3) ― 上越教育大学・西川純とのやりとりを通じて思ったこと 2011年02月22日
「学び合い」教育の諸問題(1) ― 上越教育大学・西川純とのやりとりを通じて思ったこと(2011年02月17日)http://www.ashida.info/blog/2011/02/post_403.html#more、「学び合い」教育の諸問題(2) ― 上越教育大学・西川純とのやりとりを通じて思ったこと(2011年02月18日)http://www.ashida.info/blog/2011/02/_2.html#more の続編です。まだまだ続きます。
【「学び合い」教育の諸問題(84)】操作と習熟を超えた教育とは、「学び合い」教育に対して言えば、先生にしか教えられないことを教えることである。たとえば、こんなふうな→http://www.ashida.info/blog/2003/05/hamaenco_3_51.html。小学校で言えば、かけ算はなぜ面や立体になるのかというような。
【「学び合い」教育の諸問題(85)】このレベルは止まることがない。解説をテキスト化すれば必ずまたその上位の内容(あるいはメタレベル)を語ることが出てくる。
【「学び合い」教育の諸問題(86)】このメタレベルの内容を、私は、個々の授業時間に於ける「教育的な時間」「の確保」と呼んできた。
【「学び合い」教育の諸問題(87)】「学び合い」教授の西川は「指導要領」を生徒に配布するらしいが、教員が指導する内容は、「指導要領」には書かれていない。教員は「指導要領」を解釈する者であって、指導要領の「意味」は指導要領のどこにも書かれていない。
【「学び合い」教育の諸問題(88)】それは「指導要領」をいくら詳細化されたサブテキストをつかって補っても補えない指導要領の「意味」なのである。
【「学び合い」教育の諸問題(89)】たとえば、「大事な事を落とさないようにしながら,興味をもって聞くこと」と小学校の1年2年の指導要領にある。これを生徒に配布しても「大事なこととは何か」「興味をもつとは何か」を生徒は「知る」ことにならない。
【「学び合い」教育の諸問題(90)】そもそも「大事な事を落とさないようにしながら,興味をもって聞くこと」とは、大人の私でも難しい課題だ。これを授業内で低学年児にでも解きほぐすことができるのを教員(teacher)と言う。難しい仕事だ。
【「学び合い」教育の諸問題(91)】その意味で「指導要領」など100回読んでも、何をどう教えればよいのか、出てくることはない。何を知ればいいのかも出てくることはない。その意味を解釈するのは、すべて教員の見識や専門性に属している。その意味で指導要領は「教育目標」ではありえない。
【「学び合い」教育の諸問題(92)】私が「教育的な時間」の確保と呼んでいるものは、この「指導要領」の解釈の結果を開示するプロセスのことである。教員の個々の授業における指導とは、指導要領やそれに基づいた教科書のメタレベルの作業である。
【「学び合い」教育の諸問題(93)】しかし、先生にしか話せないこの時間の確保を妨げるノイズは個々の授業内でいくらでもある。
【「学び合い」教育の諸問題(94)】始業時間前に先生が入室していないこと。出席チェックに時間をかけること。遅刻生徒の処理、資料配布作業や教材準備の時間。定型内容(授業開始前にわかっていること)を板書すること。過度に個別の質問に集中することなどなど。
【「学び合い」教育の諸問題(95)】「授業は生きもので、計画通りには行かない」「モノの生産と人材の育成とは質が違う」と言う教員に限って、こういったノイズを放置した授業をやり続けている。
【「学び合い」教育の諸問題(96)】そこで、「学び合い」授業における、こういったメタレベルの指導は個別の授業内で、どうやって吸収されているのか。
【「学び合い」教育の諸問題(97)】この教育モデルが嫌う1対n個の集団教育授業は、もともと、このメタレベルの指導を行うためのもの。進捗がばらばらな「学び合い」ではメタレベルの教育が難しい。授業のかなりの部分が個別指導になりがちだからだ。
【「学び合い」教育の諸問題(98)】元々、子供たちが「学び会う」というのだから、先生にしか話せないことはない、という立場にこの教育論は立っているのかもしれない。
【「学び合い」教育の諸問題(99)】しかし、その「先生にしか話せないことはない」というのをどうやって確認するのか? メタレベルの内容を生徒が「理解した」ということをどうやって教員は確認するのか?
【「学び合い」教育の諸問題(100)】通常の練習問題でさえ解けていても「わかっていない」生徒がたくさんいるのに、それを生徒同士の「学び合い」によって乱反射した教室内でどう制御するのか。1対n個の集団教育授業よりもはるかに高度な制御を余儀なくされるにちがいない。(※まだまだ続く)→「にほんブログ村」
(Version 2.0)
※このブログの現在のブログランキングを知りたい方は上記「教育ブログ」アイコンをクリック、開いて「大学」「専門学校教育」を選択していただければ現在のランキングがわかります)
この記事へのトラックバックURL:
http://www.ashida.info/blog/mt-tb.cgi/1269