デザインとは何か ― デザインの哲学的意味論について 2010年09月13日
過日9月10日「デザインとブランドアイデンティティ」セミナー&特別講演会」http://ujipub.exblog.jp/13027928/で講演しました。上記のUstは、その模様です。デザインを特に意味論から論じてみました。
講義のUstは以下
●http://www.ustream.tv/recorded/9468646
講義で使ったパワポスライドのアウトラインは以下。
【スライド1】
デザインとは何か ― 〈意味〉の超越的な時間性について
芦田宏直 hironao@ashida.info
【スライド2】〈意味〉のア・プリオリ
〈形〉も〈音〉も〈風景〉も〈世界〉も知覚の対象ではない
見ているもの、見えているものは、〈意味〉
【スライド3】〈意味〉への超越
何ものかについての〈形〉〈音〉 ― フッサールの現象学的意味論
1)〈知覚〉はいつでも何ものか「についての」知覚
2)〈知覚〉を超越する〈志向性(Intention)〉としての意味
3)〈形〉はすでに〈意味〉に浸食されている
4)私とは、私の「外部である」 ― 世界の「許に」いつもすでに在る
※同じように「音を聞く」のではない。「音の意味」を聞いている。
【スライド4】 〈である〉 と 〈がある〉
ヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』 ― 「何-存在」という以前
存在(Sein)は実存する(existieren)ことを意味しない(1915年草稿)
論理のためにわれわれが必要とする経験は、或る何かがとある状態にあるという経験ではなく、或る何かが存在するという経験である。しかしこれはまさに経験ではない。論理は、あらゆる経験の以前に、或る何かがとある状態にあるという経験の以前にある。論理は「いかに」の以前にあるが、「何」の以前にはない(5・552)
私の言語の限界が私の世界の限界を意味する(5・6)
語り得ぬものについては、人は沈黙せねばならない(7)
【スライド5】 Woraufhin(それへ向けられているそれ)
ハイデガーの『存在と時間』 ― 存在の〈意味〉を問う
「意味とは、それへ向けて或るものが或るものとして理解されているそれ(Woraufhin)」のこと
「存在とは、存在者がそのつどそれへ向けて理解されているそれ(Woraufhin)」のこと
〈意味〉とは、指示志向のア・プリオリのこと(超越の動性)
【スライド6】〈エネルゲイア〉
アリストテレスの『自然学』おける〈エネルゲイア〉
見るとは主体の運動(キーネーシス)ではない。
運動(キーネーシス)はテロス(目標=終わり)に達すると無くなるが、〈エネルゲイア〉は、目標(終わり)と始まりとが同時に存在している。
〈見る〉ことはいつでも現在完了。
終わり(目的)に達していながら、終わらずに存続している。
【スライド7】〈時間性〉
ハイデガーの『存在と時間』の〈um〉の時間性
人間はいつも身体を連れ立って行動しているだけではなく、一つのUm(around)を連れ立って歩いている。
しかもそのUm(around)は一つの時間性。身体の現在にいつも先行している。「将来的な既在」としてのUm(around)。
身体はいつもこの先行性(時間性)としてのUm(around)に包囲されている。その意味でも見ることは主体の行為ではない。
Um(around)とは人間の気分(Befindlichkeit)のこと(環境と主体とが未分化の状態)。
【スライド8】「フレーム問題」
〈意味〉 と 〈フレーム〉
ヘレンケラーの言語体験
「個々の言葉の意味」ではなくて、「言葉がある」「意味がある」ということの〈学習〉の謎(個々の対象がアフォードされているのではなくて、フレームがアフォードされている)
「フレーム問題(frame problem)」は、理論的に解けない(心理主義的な知覚主義では解けない)
エネルゲイアの時間性としての「フレーム問題」
【スライド9】Sein zum Tode
達しているのに、まだ終わっていないもの(エネルゲイア)
人間の死の時間性=将来的な既在性(umの時間性)
「死への存在」Sein zum Tode(Being to the death)
ハイデガーの「死への存在」の「への」は、アリストテレスのエネルゲイア概念でしか理解できない。
一つ一つの存在者を超える超越の動性のWoraufhinとしての人間の死
動物が生きている理由は彼が生まれたからだが、人間が生きているのは自分の生死を解釈しているから。
【スライド10】Sein zum Tode の時間性
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