【第二版】ヘッドフォンATH-W1000とANAの「接遇」教育 ― また中教審の「職業教育」と「キャリア教育」との差を考えてしまった。 2009年10月24日
今日は、帰りの飛行機の中で面白いことがあった。
私は、前回の続きで(http://www.ashida.info/blog/2009/10/athw1000sennheiser.html#more)下記写真のような仕方で、オーディオテクニカのヘッドフォンATH-W1000(http://www.audio-technica.co.jp/products/hp/ath-w1000.html)を携帯していたが、これがキャビンアテンダント(CA)の目にとまったらしい。
※ヘッドフォンはカタチがいびつなので、バッグに入れることができない。一度持ち出しすると利用するしかない状態に追い込まれるが、キャリーバッグの場合は、この場所に案外うまく収まるのだ。この状態で大阪梅田・天王寺から飛行機経由で自宅まで帰ってきた。
座席上部の収納ボックスに、W1000を外してキャリーバッグのそばに(そっと)置いて蓋を閉めた。さすがにバッグが重そうに見えたのかCAのお姉さんが手伝ってくれたが、その場はそれで収まった。
私が身の回りを整理して2A座席に座ったら、しばらくしてたぶんチーフCAのような様子の方が私のそばに飛び込んでこられて、「お客様、ヘッドフォンを毛布か何かで御包みしましょうか」と言うのだ。私はその申し出にびっくりしたが、「あっ、そう。助かるなぁ」と心からの私の応答。W1000をしっかりとくるんでくれた。これで北海道産アサダ桜の無垢削り出しのハウジングも傷つかない(苦笑)。
私は、最初のアテンダントが来ずに、チーフCAの方が来られたことにむしろ驚いた。なぜ、最初にW1000を見たCAが来ずに別のマネージャーが来たのか? 最初のアテンダントはどうしたらよいのかわからずにマネージャーに相談したということか。どんな感じなのか、わからないので「とにかく私が行くわ」ということで「お客様、ヘッドフォンを毛布か何かで御包みしましょうか」ということになったのか。
私は「ユニクロファッション」(+スポーツ靴)+「アサダ桜のヘッドフォン」+「TUMIのビジネスキャリーバッグ」だったので、「判断」(苦笑)が付かないとCAが訴えたのか。
いすれにしても、さすがに(それほどに)ATH-W1000のアサダ桜ハウジングは気品に満ちている。そうは言っても3万、4万程度の品物を毛布にくるんでくれるのだから、「アサダ桜」さまさまだ。私から言えば手元に置けないTUMIの22021(http://www.ashida.info/blog/2009/07/tumi.html)をくるんで欲しいくらいの気持ちなのに(笑)。
今日はたまたまプレミアム席が取れていたから、こんなサービスになったのだろうか。しかしANAさま。「プレミアム」だろうがなんだろうが、お客様を差別してはいけませんよ。
この間は、エコノミー席で座っていたら、急に背後からCAが襲ってきて、「お客様そのバッグ少し大きいですね。サイズのルールがあるのをご存じですか」って警察官のように尋問してきた。
「知ってるよ。3辺の和115cm以内、55cm・40cm・23cmでしょ。このバッグは51・40・21.5だから大丈夫ですよ(http://www.tumi.co.jp/product/product-detail/?modelId=109529&searchTerms=22021)。守っています」(私はCAのどんな攻撃にも備え遵法精神の固まりのような顧客になっている)と言ったら不服そうに去っていった。
私は、そのとき上部のボックスに入れずに(パソコンや書類を出したいため)、斜め後方の中央列の席(たまたま3席全部空いていた)の下部にシートベルトを通して置いていた。
今度はそのCA、なぜか私に気付かれないように、そっと私のバッグの席の隣に座り、なにやら自分の靴を私のバッグの側面にあてている。その時はその動作が何を意味するのか(不覚にも)私にはわからなかった。
飛行機(羽田-松山便)が着陸し、シートベルトのロック解除の音がなった途端に、またそのCAが私のところに足早にやって来た。
「お客様、私の靴のサイズは24センチございますが、さきほどお客様のバッグに足をあてたところ、この靴よりも大きいようでございます。今後はこのようなことがないようよろしくお願いします」。
私は唖然とした。
「あなた、その顧客対応、何点だと思っている?」
「そもそも、『お客様』のバッグのサイズを足を当ててはかるということ自体が失礼。また『24センチ』という靴のサイズがメジャーの24センチと必ずしも同じではないことは明らか。それに、大きなバッグをわざわざ機内に持ち込むのは、お客も何も好きこのんで持ち込んでいるのではなく、1)荷物を預けたら粗末に扱われてバッグがぼろぼろになる 2)荷物を預けたら受け渡しに時間がかかるというサービスの不充分さから来ていること。『やむなく』持ち込んでいることをあなたは理解していない。したがって、サイズオーバーの注意をする場合にもそういったことに充分配慮した上で注意をする必要があると思う。それがなんで足で測った結果に基づいて顧客指導するのよ。そもそもそういった対応のために機内にはメジャーのようなものはないの? だって私は保安検査場も搭乗入口も何も言われずに通過したし、この便には月単位で何回も乗っている。一回も何も言われたことはないよ。あなたの処置が正しいのか、他のCAや保安検査員、GAが間違っているのか、どちら?」
「いずれにしても、21.5センチではないと思いますのでご注意下さい」
「(笑いながら)なんじゃいその『いずれにしても』は。そんなときに『いずれにしても』という言葉を使うもんじゃないよ。もう一度接遇とは何か、勉強し直した方がいいと思います」とその場は(私自身が)収めた。
それに比べて、同じTUMIの22021を持ち込んでいる今日のこの「プレミアム」席の対応はどうだ。こういうのを雲泥の差というのか。
なんだかアテンダントの接遇指導の質が落ちているような気がする。
「プレミアム」か、「エコノミー」かの問題は、結局はリピーター顧客か新規顧客かの問題だが、いずれも大切に扱わなければならないということはわかりきっている。
それは「お客様第一」という一般的な原則としてそうなのではなくて、場合によっては「リピーター」は「勝手知ったるわがキャビン内」ということでサービスを低下させてもいい場合があるし、新規こそ「JALかANAかどちらに乗る事にしようか」とテストで乗り込んできているかもしれない。新規なしにはリピータは存在しない。手厚くサービスをしなくてはならないのは新規客かもしれない。
※そもそも羽田-伊丹のたった1時間のフライトでも、プレミアム席に座るとアテンダントが毎回一人一人のプレミアム客に挨拶に来る。こんなの要らないでしょ。こちらが恥ずかしくなる。その時のアテンダントに未だに一度も目を合わせたことがない(苦笑)。
たとえば、専門学校の観光系では、「飛行機の乗客には『プレミアム』メンバーというのが存在していて、単にマイルを溜めるかどうかだけではないんですよ。プレミアムメンバーは上得意様であり大切に扱う必要があります」なんてバカな事をとくとくとして教えている教員がいたり、学校があったりする。
「新規」とは何か、「リピータ」とは何かというマーケティング論にまで踏み込まないままの「接遇」教育にとどまっている。あとは、「でも」お客様を差別しないで大切にしましょうという倫理か道徳かにすり替えてしまう。
この教育でCAになるとどうなるか? 「いずれにしても」「ルールですから」と言うことになる。しかしこんなところで持ち出される「ルール」に限って、「プレミアム」席ではほぼ日常的に破られている。だから「ルール」ではないのだ。
その上、専門学校ではその程度のCAになる(なれる)者さえ輩出できない(大概が地上勤務止まり)。いったい、どんな教育をやっているというのか。
中央教育審議会(文科省)の最近の答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(http://www.ashida.info/blog/2009/10/post_384.html#more)では、「職業教育」と「キャリア教育」とを分ける議論が前提されている。
たぶんこの場合だと「いずれにしても」「ルールですから」という「入口接続」教育(=「即戦力」教育)が「職業教育」。「新規-リピータ」のマーケット論から「ルール」を考え直す=受け止め直すのが「キャリア教育」ということになる。
それができれば、「ルール」を直接には知らない他の仕事についても、「生涯」にわたって「接遇」を「自立的に」(答申)考えていくきっかけになるに違いない。
現状では、専門学校の「実践的な」アテンダント教育は、大学の教養主義教育に負けている。大学の教養主義の方がはるかに「自立的な」接遇教育に近いからである。
※ちなみにある方から聞いたのだが、全日空の「ANA」を「アナ」と呼ぶ客は本来のANAファンではないらしい。「ANA」は、ANAファンからすれば「エイエヌエイ」でなければならない。もっと通のファンは「エイエヌエイ」を超えて「NH」(エヌエイッチ)らしい。ANAの前身の「日本ヘリコプター」を意味するとのこと。私も困ったことが起こったら、「NH」(エヌエイッチ)を連呼するとこにしよう(苦笑)。→「にほんブログ村」
(Version 7.0)
※このブログの現在のブログランキングを知りたい方は上記「教育ブログ」アイコンをクリック、開いて「大学」「専門学校教育」を選択していただければ現在のランキングがわかります)
この記事へのトラックバックURL:
http://www.ashida.info/blog/mt-tb.cgi/1163
「新規」とは何か、「リピータ」とは何かというマーケティング論にまで踏み込まないままの「接遇」教育にとどまっている。
-------------------------------
この場合の「マーケティング論」は内容的にはどのようなものを指しますでしょうか?
いやー、そんなものは、ドラッガーはもちろん、ポーターやコトラーの著作を読んでも理解不能じゃないですか。
「新規」「リピータ」のマーケティング体系が存在するときには、市場経済が封鎖されるときでしょう。
たぶん、マーケタ-の数だけ、新規顧客論、リーピータ顧客論が存在すると思います。
でも、それだけ難しいことだということを理解することが、結局は「顧客」を大切にすることに繋がると思います。その理解が専門学校の職業教育に欠けているということ。
私なんか、その教育では「うるさい客」で終わりです(苦笑)。
検索してこちらまで来ました。
国内の機内持ち込みサイズ、2009年の12月から改定されますがこちらのTUMIのキャリーバッグは無事に通るのでしょうか。
一つ小さいサイズの22020でギリギリだと本日高島屋で聞いたもので…。
そもそも靴のサイズって、足のサイズ=内部のサイズなのであって靴の外見のサイズではないですよねー。
まして履いてる靴がピンヒールだったりしたら尚更目も当てられないことに…
席によって待遇が違うのは料金面などからも別に構わないと思うのですが今回のように両者共通で明示されてるルールの場合は差異があるべきではないですね。
>めがねさん
いえいえ、TUMIの22021は、51・40・21.5です。新基準は逆に今のANAの規定サイズよりも奥行きが2センチ広がり、55cm・40cm・25cm(23→25)になります。
だから全然余裕です。22021は、滅多に展示されなくて、22020か、22022しか通常置いていない場合が多いため、その店の人はそう言ったのではないでしょうか。
>ちかみさん
逆に言えば、そのCAは、靴の内部で24センチだから靴の先よりも更に大きいということは、確実に規定の23センチを超えていると感じたのだと思います。
たぶんTUMIはソフトバッグなのでふくらみの部分を過剰に算定(苦笑)したのではないでしょうか。
私が言いたいのは、それとは関係なく、靴で測ったことを顧客に告げながら、ルール指導をしようとしたことにあります。
そもそもTUMIくらい、カタチを見ただけで型番くらい覚えておけよ。リモアと同じくらいポピュラーでしょと言いたいくらい。
だって、別の便のCAは私の22021を型番と共に言い当てて褒めてくれたほどだから、単にCAの勉強不足程度のことだと思います。