2009年度版(平成21年度版)文部科学省「学校基本調査速報」が発表された― さてどの数値に着目すればいいのか? 2009年08月09日
文部科学省「学校基本調査速報」(2009年度版)が8月6日発表された(http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/08121201/1282646.htm)。とりあえずざっと見たところの感想を報告しておきます。
まず18才人口は、前年度1,237,294人から24.795人減って、1,212,499人。前年比2%減の98%。これは2007年度(1,299,571)から2008年度(1,237,294)の落ち込みが激しかったのに比べて(マイナス62,277人で4.8%減)、減少度が緩くなっている。
2%(24.795人減)18才人口は下がったが、大学進学者は過年度入学者含み(※)では実数で1,571人増えており、前年比でも100.3%とわずかに増えている。それに比べて短大は、マイナス4,176人で前年比5.4%減、専門学校はマイナス6,907人で前年比2.7%減(いずれも過年度入学者を含んで)。
※一般的に言われる「大学進学率」とは当該年度の18歳人口(高校に進学していない者も含めた18歳人口)に対して、浪人などの過年度生も含めた入学者の割合を言う。
その結果、大学進学率は、対18歳人口比で50.2%とついに50%を超えた。前年度は49.1%だから、1.1ポイント上昇。一気に50%を超えた。
短大進学率は、6.0%。前年度は6.3%だから0.3ポイントのダウン。
専門学校は、20.4%。前年度は20.6%だから、0.2ポイントのダウン。「リーマンショック」にも関わらず「就職の専門学校」の進学率は上がらなかった。
※「就職の専門学校」ということで言えば、09年3月卒業生予定者(の就職希望者)の内、大学の就職内定率は86%(35万人/40万5千人)、短大の就職内定率は76%(4万7千人/6万2千人)、専門学校の就職内定率は79%(17万7千人/22万4千人)となっている。一概に「就職の専門学校」とは言えない(厚労省09年2月1日発表)。
短大の進学率は、1994年の13.2%をピークに連続的にダウン。短大生の実数ピークは93年の254,953人。今年09年の73,163人。ピーク時から181,790人減少。ピーク時から70%以上減少している(短大の四大化が主な理由)。
専門学校は、2005年の23.9%(これが専門学校進学率のピーク)から連続的にダウン。専門学校生の実数ピークは92年の364,687人。今年09年は247,842人。実数ピーク時から116,845人減少。実数ピーク時から30%以上減少している。
短大、専門学校に比べて、大学は18歳人口の大きな変化に影響されることなく、進学率において91年の大綱化以降連続的に増加してきている。実数でもほぼ連続的に増加し続けている。
イヤミな分析を加えれば、50%を超えたのは過年度入学生(主には浪人生)を加えた進学率が50%を超えただけのことであって、09年3月高校卒業者数(18歳入学者数)では大学短大含めて実数で約2000人減っている(574,990人-573,009人)。
過年度を含む大学・短大等入学者総数は、681,893人。10万人を超える過年度含入学者が、50%を超える進学率を支えているとも言えるが、しかし高校卒業者自体は18才人口1,212,499人に対して1,063,327人。この1,063,327人の高校卒業生に対して、大学短大等進学者は、573,009人だから、この大学・短大等進学率は53.9%。優に50%を超えている
その上、09年3月新規高校卒業者の大学短大志願率は、61.2%。大学だけでも54.9%。志願率はここ20年以上連続的に上昇している。
この志願率が50%を超えているという意味では、過年度浪人生が50%を超える大学進学率を支えているとは一概に言えないだろう。高校生の大学志向は経済格差が声高に叫ばれる割に弱まってはいないと考えた方がいい。それはより学費のかからない短大、専門学校への進学率がこの「リーマンショック」の09年入学者においても減り続けている現状を考えても弱まってはいないと考えた方がいい。
一方、専門学校進学率は09年度高校卒業生数比で言えば14.7%(156,175/1,063,327)。過年度を含めた専門学校の入学生は、247,842人。91,667人が過年度入学生。大学・短大の過年度含入学者は681,893人。09年度高校卒業生入学者は、573,009人。過年度入学生は、108,884人。
実数では大学短大の方が、過年度入学生が多いように見えるが、入学総数に占める過年度生率は、専門学校は37%、大学短大は16%。専門学校の入学者は37%が新卒高校生ではないということになる。かといって37%が浪人生でもないだろう。5年前の2004年度では専門学校の過年度比率は29%(全入学生比)、大学短大の過年度比率は21%(全入学生比)※。
※厳密に言えば、大学の過年度生は全入学生比で23%(04年度)→17%(09年度)、短大のそれは9%(04年度)→10%(09年度)。短大生は学生数が少ないため、大学短大総数で出せば、限りなく大学の数値に近くなる。
この数値をどう見るか。大学の減少分は、浪人生の減少。専門学校の増大分は高校生(+高校教員+保護者)からの人気と信頼性の減少分と取るのが自然だろう。
新規高校卒業生の入学比率が落ちていくというのは、専門学校が「学校教育制度」の中の学校ではないという本質を露呈させているということかもしれない(今頃になって)。「一般課程」「高等課程」をも含む専修学校制度の中の専門学校は、誰を募集すれば良いのかますますわからなくなりつつある。原因は簡単。教育の質(教員の質)が不透明だからだ。
しかし「学校」という以上は、新卒高校生からの人気と信頼を失うことは致命的なことだ。専門学校の「一条校化」の問題(http://www.ashida.info/blog/2009/08/post_371.html#more)は、過年度生が(浪人生をほとんど含まずに)37%も存在しているという専門学校教育の問題を含んでいる。もう少し分析を続ける必要がありそうだ。→「にほんブログ村」
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こんにちは。
いつも興味深く拝読させて頂いております。
>専門学校の入学者は37%が新卒高校生ではないということになる。かといって37%が浪人生でもないだろう。
学生の9割が中国人留学生という専門学校が多いですからね。
もちろん、留学を隠れ蓑にした就労目的の学生なので授業など成り立ちません。
高校生が見向きもしないような底辺大学・専門学校が潰れないのは、このような留学生が支えているからです。
知らずに入学してしまう高校生を不幸のどん底に陥れ、不法滞在者を生み出すような学校は淘汰されて欲しいものですが・・・(酒田短期大学が潰れたのは留学生管理のノウハウが無いのに手を出したからでしょう)。
私はそこまで言ってはいません(苦笑)。ただし専門学校は「学校」であるならば、新卒者市場で勝たないと社会的な信頼は得られない。
留学生や既卒者は、新卒教育の信頼と実績に基づいて拡大すべきであって、新卒市場からの離反の中では(あるいは新卒市場の不足を既卒+留学生でもって補完するという戦略では)、まともな「顧客」にはならないでしょう。
アジア人留学生を出席率分母から外している専門学校さえ出てきています。ふざけた話しです。
自分たちの教育の不備を不備なままに補完しようとする現象が過年度生37%という数値です。