【第二版】09年度「学校基本調査」速報FD研修会会場に突然塩崎元官房長官現れる ― 教育基本法に「職業教育」を取り込んだ官房長官です。とりあえず感謝。 2009年08月22日
20日(木曜日)、21日(金曜日)は、私が副学園長を勤めさせていただている専門学校で200人以上の教職員を前にして、夏期研修会。
8月8日に発表された学校基本調査「速報」の分析を中心に2日間総計7時間の大研修会を行いました。そこへ(二日目21日の朝)、突如、塩崎元官房長官が会場に現れた。握手してしまいました(苦笑)。この塩崎元官房長官は、教育基本法に「職業教育」を入れた安倍内閣の時の官房長官。握手するしかないでしょ。
※飛び入り参加で、選挙情勢を語る塩崎氏。握手後、思わずiPhone 3GSで撮影。最初20秒くらいは音声が小さいが。その後はすべて、秘書さんのスピーチまで充分聞こえます。我慢して下さい。
09年「学校基本調査」速報の研修は結構盛り上がりました。都道府県別進学率はもちろんのこと、新卒比、過年度比、校数あたりの県内新入学者数、県外新卒脱出者数などの概念(今回私が提案した概念)は、現在の専門学校状況を把握するのにそれなりの貢献ができたようです。
8月16日の記事(http://www.ashida.info/blog/2009/08/2009_3.html#more)では、エクセル表で展開していないため数値が見えづらかったが、よりわかりやすく統合的に整理し、更に深い分析まで進んで報告したため、数字を別々に見ていてはわからない新しい発見もいくつかあって、それなりに盛り上がった。こんなFD研修をこんな大きな規模でやれるのはわが学園だけだ。
塩崎さんの選挙演説は彼らしいスマートな演説でしたが、減点箇所が一箇所ありました。
わざわざ優に200名を超える専門学校教職員が目の前にいるにもかかわらず、目前に迫っている専門学校の「一条校」化問題に触れなかったことです。
専門学校の「一条校化」議論が加速したのは、彼が官房長官(安倍内閣)をやっていたときに成立した新「教育基本法」の施行によっています。
旧教育基本法では、たった3行程度に留まっていた第二条の「教育の目的」が、新教育基本法では、10行以上に拡大され、その第二項に「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」という一文が入ったのです(下記赤字部分参照のこと)。
「教育の目標」(第二条)
教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
●幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
●個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
●正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
●生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
●伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
旧教育基本法(教育の目的)
第二条(教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
どうということもないことが書かれていると思ってはいけない。「教育基本法」で言う「教育」とは文部科学省の言う「学校教育制度」における教育のことです。
したがって、専門学校が行う「教育」は、「教育基本法」で言う「教育」あるいは「教育の目的」とは何の関係もない。
「学校教育制度」とは「初等教育」「中等教育」「高等教育」という「一条校」に規定された学校群を規定する「制度」のことだからです(以下※印参照のこと)。したがって専門学校は厳密には「学校」ではない。
※学校教育法 第1条 「この法律で、学校とは、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする」 に定められた学校群を「教育基本法」はターゲットにしている。
その教育基本法に、「職業」教育という文言が加わったということは、「学校教育制度」の中に「職業」教育を位置づけなければならないという課題を文部科学省が引き受けたということです。
専門学校は、文部科学省から相手にされず、厚労省、国交省、経産省のプレゼンスの中でしか機能していなかったわけですが(だから結局は機能していなかった)、やっと「学校」元祖の文部科学省が「職業」教育に重い腰をあげたのが、この教育基本法改正だったわけです。
そして、その改正こそが、「一条校化」の原点。
そのときの官房長官が塩崎さん。なんでそのことに触れない!
私(塩崎)は、みなさんの職業教育への熱い思いを最も真摯に受け止めた政治家の一人です、と。現に専門学校の「一条校化」はまもなく日の目を見る、と。最後のところで、さらっと触れていたけど、少し弱すぎますよ。「一条校化」はいま専門学校関係者の大きな関心の的なのだから。
政治家の演説(スピーチ)で一番大切なことは、「どこでも同じことを喋っている」と聴衆に思わせないこと。その場の実体に応じた話ができなければならない。トークというのは自在性が実体性を浮かび上がらせるわけだから(その反対に書き言葉は論理性や累積性がものを言う)、スピーチはそのトークがもっとも洗練された状態で行わなければ意味がない。
今日はどこ? 学校。学校ってどこ? 専門学校。という会話を朝、秘書と交わした段階で、職業教育→専門学校の一条校化→教育基本法改正→安倍内閣というイメージが付けば、もうスピーチは8割は成功している。秘書も、それくらいのことはアドバイスしないと。
スケジュールが確定した段階で、スピーチねたも同時に用意しておかないと政治家の秘書は務まらない。
残念なスピーチでした。それさえあれば、得票率はあと2割は上がったのに。
でも、教育基本法の「職業」教育改正は塩崎さんの大きな仕事だし、今回の選挙の争点の一つ、官僚組織改革も自民党では渡辺善美に先だって活躍した実績のある塩崎さんだ。大いに奮闘していただきたい。期待しています。
※民主党の新人との闘いが厳しい状況にあることも訴える塩崎さん
※私の研修はいつも休憩がない。この日も朝9:00から始まり、終わったのが14:00。この間休憩は昼食だけ。しかも昼食は30分。「私は食事(昼食)を取りませんが(苦笑)、取りたい人は30分休憩しますから、その間に食べて下さい。よろしくお願いします」と言って会場に私は留まったが、みなさんありがたいことに30分以内に戻ってこられた。感謝します。
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