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 「キャリア教育」とは何か ― 昨日の「毎日新聞」社説に思う 2009年02月04日

「キャリア教育」推進の記事が3日の毎日新聞社説に出ていた(http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090203ddm005070123000c.html)。中央教育審議会が「キャリア教育・職業教育のあり方」について審議を始めた。「折しも急速に雇用不安が高まっており、審議は大きな課題を担うことになった」とある。

この社説は「キャリア教育」とは何かということについて、中教審99年答申を引用し「望ましい職業観・勤労観および職業に関する知識や技能を身につけさせ、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」という「定義」に言及している。そして「もっともだが、何やらつかみどころがない」と言う。

なぜ、キャリア教育はつかみどころがないのか。私の考えでは、「キャリア教育」は、大学全入と関係している。そのことに触れない限り、「つかみどころがない」ことになる。

最大の「キャリア教育」は、進学率の低い「エリート段階」(トロウ)に於ける大学進学でしかなかった(1970年前後まで)。「学歴」=「キャリア」を意味したのである。ところが誰でも入れる大学になれば、大学「学歴」が「キャリア」を意味しなくなる。

少子化時代への突入を準備した文科省の「大綱化」改革以降(91年以降)、大学はどんどん専門学校化し、職業教育的な(専門学校的な「職業教育」的)学科を増やし始めた。大学全入時代とは、大学がエリート時代とは別の「キャリア教育」に向かうということである。「キャリア」の意味が違ってきている。

「一流」大学へ入れることが最大の「キャリア教育」に決まっている。そんなことは、もともと高学歴な高校教員ならば誰でも知っていることだろう。この社説も、「新卒者が就業後3年以内に離職する割合は中学卒約7割、高校卒約5割、大学卒約4割」と諮問が前提している現実に言及している(意味は分かっていないが)。学歴がそのままキャリア教育なのである。

大学と同じように、「一流」高校では「キャリア教育」はいらない。「キャリア教育」は学校教育の「国語・算数・理科・社会」教育選抜が衰退して、その結果、最後の「学校」である大学が選抜機能を果たさなくなった事態を意味している。三流大学はすべて「キャリア教育」の必要に迫られているとも言える。大学の「大衆化」は「キャリア教育」と一緒に進んできた。専門学校の「一条校化」現象もその一環。

この社説のサブタイトルは「学校任せでは実を結ばない」とあるが、高校以下(中等教育以前)の「キャリア教育」がまともに進展しないのは、大学歴のインフレーションが最大の理由なのである。「一流」大学にも「一流」高校にも「キャリア教育」はいらない。それらの学校当事者達からすれば「なんで今さら『キャリア教育』なの?」ということだ。本来の「キャリア教育」とは進学校になることでしかない。

この社説では「キャリア教育」の教育「目標」について、「コミュニケーション能力から責任感、協調性とチームワークなどに至るまで目標はいくつも想定できる」(ついでに言えば「問題解決能力」も)と言うが、これらはいつも専門教育(本来のキャリア教育)の断念から始まっている。

いつでも誰でも思いつきそうな、そしていつでも誰にでも要求されている教育「目標」に体系などあるはずがない。こういったノウハウ主義的な抽象主義(研修屋の定番メニューのような)は、そもそもその専門「教員」のイメージがわかない。ちょっと考えればわかるように、どんなに研鑽を積んだ者にさえ、そういった能力は不断に要求されているからだ。「お金は無いよりあった方がいい。ではお金儲けの方法を教えましょう」というのと変わらない。本当のお金持ちがそんな詐欺のような話を持ち出すはずないじゃないか。

真の「キャリア教育」課題は、「国語・算数・理科・社会」選抜とは別のヒエラルキーを立てることに他ならない。それは「専門教育」のもう一つの柱を立てることであって、「コミュニケーション能力、責任感、協調性とチームワーク」教育に走ることではない。

(この続きは、今晩書きます。今から松山の研修会http://www.ashida.info/blog/2009/02/post_324.html#moreに駆けつけます。この新聞も松山に向かう飛行機の中でたまたま目にしたのがきっかけでした。アテンダントのお姉様に感謝!)

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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