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 専門学校の組織改革(その2-1) ― 新しい募集組織の提案 2009年02月18日

最終回の研修(http://www.invite.gr.jp/news/2008/20081006mr_ashida03.html)で私が提案したのは、新しいAO(Admission Office)体制の提案。これは従来型の部署名で言えば、広報・募集部署に相当し、その改組の提案である。

このAO(Admission Office)部署が、従来の広報・募集部署と異なるのは、入学後、卒業後の履歴を管理するということだ。言わば職業教育の入り口から出口後の全行程をウオッチする役目をになうのがAO。

専門学校の使命は、職業教育。つまり人材教育だ。大概の職業人ならば、「頭がいい」ということと「仕事が出来る」ということとが直ちに同じことを意味しはしないということを知っている。

入学の入り口のところで偏差値分類された「能力」格差と、卒業の出口のところで測られる「人材」格差は別の指標で形成される必要がある。「人材」目標を測るためには、偏差値は抽象的に過ぎるのである。それは偏差値が単なる数値に過ぎないという意味ではなくて、元々が「国語」「算数」「理科」「社会」といった、「人材」をイメージするには遠すぎる「科目」の外面的な合成で構成されたに過ぎないのが偏差値だからだ。

企業の人事部の、「一流」大学の評価は、その大学の教育そのものの評価というよりは、その大学に入るために勉強した受験勉強(の偏差値)を評価しているに過ぎない。それは「お勉強」の好きな人の「努力賞」評価、パーソナリティ評価にすぎない。そして「お勉強が好きな人」「努力する人」が必ずしも「人材」に繋がらないことは、まともな企業の人事部であれば、誰でも知っている。

したがって、人材教育を行おうと思えば、その入り口評価は独得なものでなければならない。もし学校毎に、カリキュラムと人材育成目標が違えば、入学生を迎え入れる選抜指標も違うだろう。あるいは入り口のところでは、そんなに違わなくても、その学生の成長は大きく違うこともある。あるいは学内の成長や成績はそれほどでもなかった学生が就職後には大きく成長することもある。そして卒業後のそういった変化が、再度入り口の選抜指標を変えていかねばならない。カリキュラムそのもの(=人材目標や育成過程)も変更を余儀なくされるかもしれない。

職業教育は人材教育であり、人材教育の最終評価は企業側の人材評価である。したがって、学生選抜指標(入学生評価指標)は、学内のカリキュラム評価と企業の学生人材評価を両にらみで行う必要がある。

理想モデルは、整合性をもってこの三者の評価が揃うことだ。すなわち、偏差値の高低にかかわらず、入り口で「良い」と思った学生は、学内成績でも「良く」、企業に入ってからも「良い」というように。しかしそんなことは一朝一夕に出来ることではない。時間をかけてノウハウを磨くしかない。

高校と大学との関係なら、ほとんど単独の(ばらばらの相互に関係ない)科目の「受験勉強」の連続なのだから(期末試験も受験勉強という意味で)、偏差値評価はそれほど狂うわけではない。

しかし専門学校の評価の場合には、カリキュラムが ― 厳密な意味での〈カリキュラム〉(http://www.ashida.info/blog/2008/12/post_311.html)がすでに完成しているとして ― まず単なる科目の外面的な集合体ではなく、総科目の試験偏差値がそのまま人材体現度を示すように作られている(作られていなければならない)。そういった有機体のようなカリキュラムと高校までの抽象的な偏差値評価との差異がまず問題になる。

言い代えれば、受験勉強的な「あれもこれも」型の抽象的な教育から、「人材」育成型の具体的なカリキュラムにおける人材評価の特異性をどう考えるのか、の問題がある。

またそのような学内でのカリキュラムと、一筋縄ではいかない実社会でのキャリア評価という、これもまた学校教育とは異質の評価が控えている。大学生の企業内評価は、面接を通過するための「努力賞」評価、パーソナリティ評価で済むかもしれないが、具体的な人材目標を描いて教育する専門学校であるならば、就職後の学生のキャリア展開を見守る必要がある。そもそも職業カリキュラムとは、職業人のキャリアパス全体を高密度に学校内に落とし込んだものなのだから、学生の就職後の実際の情況と無縁であるはずがない。その点でも専門学校教育には、企業と相対的な独立性(いい意味でも悪い意味でもこの独立性は大学の本分)を保っている大学教育との違いがある。

この「違い」を明確にするには、入学前の学生評価、学内評価、就職後評価を一貫してウオッチする部署が必要になる。

この部署こそがAO(Admission Office)である。

これは主に入り口側のマーケティングを本格的に行うアメリカ型でもなければ、全入時代(=少子化時代)の募集戦術に留まる日本型の「AO」(=「AO入試」)でもない新しいAOの提案である。

(この項まだまだ続く)

(Version 1.0)

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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