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 家内の症状報告(127)― MSは自己免疫疾患ではなく、OPC(オリゴデンドロサイト前駆細胞)の病気 2008年12月27日

前回の記事(http://www.ashida.info/blog/2008/12/opcnicdtip30.html#more)を簡単にまとめておきます。

1) 慶應大学研究者グループがテーマとした「TIP30」は、すでに分子構造が解明されており、どの部分が髄鞘再生不良に関連しそうか推定できるらしい。

2) その意味でTIP30を直接阻害するような分子を設計することは不可能ではない。

3) ただ、そのような分子を科学的に作ったとしても、OPC(オリゴデンドロサイト前駆細胞)内に入って細胞内部でのTIP30の増殖を止める必要がある。

4) 例えばそのような薬剤を経口投与とか静脈注射したとしても、脳に入りこむ技術を組み込んで、さらにOPCの細胞膜を通過して内部へ入り込む技術を組み込む必要があり、その開発ハードルは決して低くはない。

5) 一番簡単な発想ではOPCに感染するウイルスベクター(運び屋)を用いたやり方が考えられる。TIP30を止める分子そのものを投与するのではなく、そういった分子を作る遺伝子をOPCに組み入れる、というもの。

6) 昔この類の研究が(今のiPS細胞のように)一世を風靡したが、ウイルスによる癌化の問題を制御できず(iPS細胞と似ているが)結局廃れてしまっている。また別の方法として分子構造を工夫して分子そのものを設計することも不可能ではないと思われる。

7) しかし、そもそもTIP30は抗腫瘍因子。不用意な遺伝子情報へのアクセス(癌化)を遮断する生理的なタンパク。

8) OPCは確かに本来TIP30をほとんど持っていないが、他の細胞では結構出ていることもあると推定される。

9) 従って、OPCだけに取りこまれる薬であってもOPCの腫瘍(脳腫瘍)を来すリスクがある。全身投与でOPC以外にも取り込まれる可能性がある場合には、全身の臓器が悪性腫瘍のリスクを抱えることになる(TIP30を遺伝子的に欠損させると多発癌になることがわかっている)。

10) TIP30を抑えて髄鞘再生が効果的になって歩けるようになった、でも癌で死にました、では治療が成功したとは言えない。TIP30を直接止めるということは意味がない。

11) 本来TIP30をほとんど発現していないOPCなのに、MSではTIP30が過剰に出るという背景には、何らかの「外的な理由」があるのではないか、例えば“炎症”とか、そういったファクターがあるのではないかと推定される。あるいは、OPCそのものの「内的な理由」によって出てきているとすれば、MSはもはや「自己免疫疾患」でもなんでもなく、OPC(オリゴデンドロサイト前駆細胞)の病気ということになる。ベータフェロンや免疫抑制剤が効いても効かなくてもその機序がわからない原因はここにある。

12) しかし、OPCそのものの「内的な理由」でTIP30が過剰に発生しているとすれば、生まれた時から異常でなければならない。でもMS患者のOPCはMS発症までは正常。

13) もし「外的な理由」が原因であれば、細胞膜を通過する必要がないので薬剤の開発は比較的容易なものとなる。またそれは病理的な因子の可能性もあると推定されるので、それを止めることが課題になる。慶應大学グループが狙っているのは、この「間接的な」TIP30制御ということ。

14) 臨床治験中の再発抑制剤絡みでも、一部症例で髄鞘再生があるかもとされているものもあるが(かなり嘘くさいが)、ひょっとしたらそういう薬が(「外的な理由」をコントロールする何らかの機能を有していて)間接的なTIP30制御に繋がり髄鞘再生を来しているのでは?などと考えることもできる。

15) いずれにしても、慶應大学グループの研究はMS「自己免疫疾患説」(日本の医師や研究者のほとんどが信じているMS認識)を根本的に覆す発見だということ。MSは自己免疫疾患ではなくて、OPC(オリゴデンドロサイト前駆細胞)の病気。私はこの観点がこのグループの研究の世界的な意味だと思います。ベータフェロンや免疫抑制剤の対処療法(原因からはるかに遠い療法)から早く患者たちを解放して欲しいものです。

(Version 1.0)

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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