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 これからの専門学校を考える ― 大学全入時代とは大学の専門学校化のこと(さてそのとき専門学校はどうなるのか) 2008年09月30日

全国専門学校情報教育協会(http://www.invite.gr.jp/)研修委員会から講演依頼がありました。私のここ数年の専門学校教育論をまとめて発表して欲しいとのこと。しかも、泊まり込み研修の3回シリーズ(2日間×3回=6日間)。

400字詰めの原稿用紙で言えば約200枚~300枚くらいの内容。こりゃ、たいへんだ。

初日13:00研修開始。そこから5時間!私が話しまくって、後はグループディスカッション2時間。その後は私とのブレスト2時間。初日は 23:00終了という組み立てらしい。2日目の翌日は、前日のまとめ(私の言い残したこと+参加者の再度の質問=総まとめ)。正午解散らしい。それを三回シリーズでやりたいとのこと。これくらい時間があれば、なんとかなるかもしれない。

日程も決まった(予定)。場所は未定。

11月19日~20日(13:00集合、翌日12:00解散)
12月17日~18日(13:00集合、翌日12:00解散)
1月21日~22日(13:00集合、翌日12:00解散)

さて、ここ数日使って私が考えた研修案は以下の通り。文字通り私のここ数年の活動の集大成という感じか。関心のある方はぜひ参加して下さい。

※なお、受講料はまだ決まっておりません。公式の発表は情報教育協会HP上でまもなくなされます。


●これからの専門学校を考える ― 大学全入時代における専門学校の「特長」はどこにあるのか(連続3回研修)

はじめに

 大学全入時代は、専門学校教育の特長がどこにあるのかを我々に問い詰める。資格教育なのか、実習教育なのか、職業教育なのか、就職指導なのか、生活指導・人間性教育なのか、問いは尽きない。
 厄介なことは、今、大学の「教育改革」と言われるものが従来専門学校の領分とされてきたこれらの諸特徴をなぞるようにして進みつつあるということ。いわゆる大学の専門学校化が加速しているということだ。
 大学全入時代とは、言い換えれば、大学の専門学校化ということである。そういった事態を踏まえて、従来の専門学校は自らの「特長」の洗い直しを再度迫られていると言える。
 大学の新設置基準においてさえ「FD」(いわば教員教育)が義務付けられつつある今、専門学校の自己改革はどうあるべきなのか。今回の研修シリーズでその諸課題と解決の道筋を全面的に展開してみたい。
 
全体の研修課題は以下の諸点(予定)

●第一部(11月19日~20日)

1)教育目標を何に定位するのか

学校のコンテンツ作りの基本は、教育目標形成。教育目標形成にはどんな諸課題があるのかを考えてみたい。

1-1 目標の観点から
 1-1-1 高度教育の諸問題
 1-1-2 「基礎」教育主義の諸問題
 1-1-3 担任主義教育の諸問題
 1-1-4 人間性・社会人マナー教育の諸問題
 1-1-5 コミュニケーション教育の諸問題
 1-1-6 職業人教育とは何か
 1-1-7 大学教育と専門学校教育
 1-1-8 教育目標と教員配置の問題

1-2 教育スタイルの観点から
 1-2-1 カリキュラム主義かコース制・選択主義か
 1-2-2 インターンシップ教育の問題点
 1-2-3 PBL(Problem Based Learning)教育の問題点
 1-2-4 単位制教育の問題点
 1-2-5 教育スタイルと教員配置の問題

1-3 教育指標の観点から
 1-3-1 出席率の問題
 1-3-2 試験合格率
 1-3-3 進級率の問題
 1-3-4 在籍率の問題
 1-3-5 就職率の問題
 1-3-6 学生アンケートの問題
 1-3-7 教育指標と教育目標

2)専門学校の資格主義と実習主義をどう考えるか

「資格の専門学校」「実習の専門学校」という社会認知がマーケットにも専門学校関係者の中にも一般化しているが、これからの専門学校(特に大学全入時代のこれから)を考えるに当たって、資格主義、実習主義はどんな弊害を有しているのか、を考えてみたい。

2-1 「資格主義」の弊害
 2-1-1 自分で教育目標を考えない
 2-1-2 教育目標が明確でありすぎる分、変化する企業動向に目をふさぐ傾向が強い
 2-1-3 2年~4年制の在籍期間全体をフルに使った教育が出来ない(2年~4年フルに密度の高い授業を行わないと合格しない資格はほとんどない)
 2-1-4 合格至上主義の「暗記」学習傾向が強くなり、息の長い人材能力の形成を阻害している
 2-1-5 既成教材が多い分、教材の自己開発契機が弱い

2-2  「実習主義」の問題
 2-2-1学生の個人的な能力(身体能力や天分)に依存しやすいため仕上がり目標の共有化や進捗管理に教員の関心が向かない
 2-2-2 目標の共有化がない分、実習試験評価の透明度も低い
 2-2-3 目標と評価の共有化(透明化)が薄い分、カリキュラム開発の動機が薄い。
 2-2-4 技能実習が多いため、実習目標の高度化関心が薄い
 2-2-5 実習設備(物や素材)が教材化し、教育のルーティン化が起こりやすい(教育のトレーニング化=職業訓練校化)。

2-3 「資格」「実習」主義両者の問題点
 2-3-1 単元毎の資格学習とルーティン技能実習によって、カリキュラム開発動機が薄い。
 2-3-2 資格模擬試験(過去問試験)と単純な技能判定によって、学生の能力判定ノウハウ(履修判定指標の高度化ノウハウ)が高まる契機がない。
 2-3-3 カリキュラム開発と能力判定のノウハウが高まらないため、教育の高度化契機が見つからない。
 2-3-4 そのため、教員の自己研鑽契機も見つけづらい。
 2-3-5 大学のような大学院経由、中等教育までの大学経由の「教員免許」といったミニマムの教員指標も専門学校では明確ではない。「教員」とひとくくりで言えるような共同性や組織性を持たない。

2-4 付論:非資格系、非実習系専門学校の問題
    目標も評価も担当教員任せ。カリキュラムも存在しない。存在するのは「時間割」だけ。教育の無政府状態にある。

3)カリキュラム開発の諸課題

 3-1 講座主義の対立概念が「カリキュラム」(大学にも中等教育までにも「カリキュラム」は存在していない)
 3-2 「カリキュラム」開発のキーワードは時間の流れ(目標からの時間展開と受講の時間展開)。カリキュラムは〈体系〉ではない。
 3-4 五つのカリキュラム物語(卒業の物語、学年の物語、期の物語、一ヶ月の物語、一週間の物語)
 3-5 シラバスだけを見ていても「カリキュラム」は作れない(科目主義と単位主義からの脱却)。 


4)討論(質問会) 教育目標(カリキュラム開発)と資格・実習主義をどう考えるのか


●第二部(12月17日~18日)

専門学校の教育評価はどうあるべきか
「教育評価」と一口に言っても色々なものがある。第二部では「点検評価」「授業評価」「学生アンケート」「試験評価」「就職評価」「教員評価」の6点に絞って、「教育評価」の多面的な局面を考えてみたい。

1-1 「自己点検・評価」「第3者評価」にどう取り組むべきか
 1-1-1 「自己点検・評価」とは何か
 1-1-2 「第3者評価」とは何か
 1-1-3 「自己点検・評価」と「第3者評価」とはどんな関係にあるのか
 1-1-4 教育改善に結びつく点検評価と結びつかない点検評価
 1-1-5 募集改善に結びつく点検評価と結びつかない点検評価

1-2 「授業評価」にどう取り組むべきか
 1-2-1 授業評価とは何か
 1-2-2 授業評価と授業法評価
 1-2-3 授業評価と学生アンケート
 1-2-4 授業評価と教育改善
 1-2-5 授業評価と人事評価(教員評価)

1-3 「学生アンケート」にどう取り組むべきか
 1-3-1 「良い」学生アンケートと「悪い」学生アンケート
 1-3-2 心理主義アンケートの問題点
 1-3-3 アンケート項目の作り方
 1-3-4 アンケート項目の集計法
 1-3-5 アンケート項目の公開法
 1-3-6 アンケートと教育評価
 1-3-7 教育改善に繋がるアンケート体制とは

1-4 期末試験(履修判定試験)はどうあるべきか
 1-4-1 専門学校の試験問題の問題点
 1-4-2 講義試験の問題点
 1-4-3 実習試験の問題点
 1-4-4 試験評価に於ける学生評価と教員評価
 1-4-5 教育改善に繋がる試験体制とは

1-5 就職評価はどうあるべきか
 1-5-1 就職指導の問題点
 1-5-2 就職活動を活発化する方法(就職率を上げるためには)
 1-5-3 就職の質を上げる方法
 1-5-4 就職評価と企業評価
 1-5-5 教育評価に繋がる就職評価とは

1-6 教育評価と教員評価
 1-6-1 点検評価と教員評価
 1-6-2 授業評価と教員評価
 1-6-3 学生アンケートと教員評価
 1-6-4 試験評価と教員評価
 1-6-5 就職評価と教員評価
 1-6-6 専門学校の教員とは何か
 1-6-7 教員教育(FD)と教員組織論

1-7 討論(質問会) 教育評価と教育指標をどう考えるのか


●第三部(2009年1月21日~22日)

第三部では、募集と一条校化問題、という〈外部〉から見た専門学校の情況を考えてみたい。前編で募集、後半で一条校化問題を扱う。全体が第一部、第二部の総括にもなっている。

前編:募集に繋がる教育改革はどうあるべきか

 1 なぜ、「教育改革」は募集に繋がらないのか
  1-1 何のための「教育改革」か
  1-2 内向きになりがちな「教育改革」
  1-3 方法主義になりがちな「教育改革」

 2 なぜ、広報は「教育改革」に無関心なのか
  2-1 お願い主義営業の問題点
  2-2 「相手が願うこと」と「こちらが言いたいこと」
  2-3 「わかりやすいこと」と「特色ある学校」

 3 なぜ、企業は「教育改革」に無関心なのか
  3-1 学生の人格に隠れてしまう人材能力
  3-2 企業はパーソナリティ重視を前面化する理由
  3-3 学生の個人評価(人材評価)が学校評価に繋がらない理由

 4 なぜ、見学者は「教育改革」を避けるのか
  4-1 「良い」学校は敷居が高い
  4-2 まじめに勉強して結果が出るのは当たり前
  4-3 学生にとって「良い」学校とは何か

 5 なぜ、教員は「見学会」を成功させられないのか
  5-1 「教える」教員は、「聞く」のが不得意
  5-2 体験授業が、授業(説明)になり、勧誘にならない
  5-3 内容に自信のある学校ほど、見学者の要求を聞き逃す


後編:大学全入時代における専門学校の生き残り戦略

 1 大学全入時代とは何を意味するのか
  1-1 大学の強みと弱み
  1-2 専門学校の強みと弱み
  1-3 全入時代において終わるもの、始まるもの
 
 2 専門学校の「一条校化」問題とは何か
  2-1 教育の質の問題
  2-2 教員の質の問題
  2-3 教員の質と教育の特長の問題

 3 「専修学校の振興に関する検討会議(第1回:2007年11月7日~第10回:2008年現在」(文科省)を読み解く
  3-1 専門学校の一条校化議論はどうなっているのか
  3-2 大学関係者は専門学校をどう見ているのか
  3-3 どこに専門学校の生き残りの鍵を見出すべきか

 総まとめ:討論(質問会) 大学全入時代の学校特色作りと募集戦略・戦術をどう考えるのか

以上。さてどうなるやら。私でないと集められない目一杯の資料を用意してとびきりのパワーポイント展開をやってみたいと思います。

※なお、私の最近の講演はこちら(「大学全入時代における大学改革と専門学校改革 ― 金沢工業大学と専門学校の今日」) → http://www.invite.gr.jp/news/2008/20080623kaikaku.html

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感想欄

お久しぶりです。興味深く拝読させて頂きました。

実に今の専門学校教育が直面している問題だと思いました。

ここ5年くらいは専門学校の教育形態を外野席から見ているのですが、問題への視点、解決へのベクトルが外れている学校が多いと思います。

上記のプログラムの中で特に興味があるのが、

●第一部(11月19日~20日)
 1-2-1 カリキュラム主義かコース制・選択主義か
 1-2-2 インターンシップ教育の問題点
1-3 教育指標の観点から
 1-3-1 出席率の問題
 1-3-2 試験合格率
 2-1-4 合格至上主義の「暗記」学習傾向が強くなり、息の長い人材能力の形成を阻害している

2-3-5 大学のような大学院経由、中等教育までの大学経由の「教員免許」といったミニマムの教員指標も専門学校では明確ではない。「教員」とひとくくりで言えるような共同性や組織性を持たない。

2-4 付論:非資格系、非実習系専門学校の問題
    目標も評価も担当教員任せ。カリキュラムも存在しない。存在するのは「時間割」だけ。教育の無政府状態にある。

●第二部(12月17日~18日)
1-2 「授業評価」にどう取り組むべきか
 1-2-1 授業評価とは何か
 1-2-2 授業評価と授業法評価
 1-2-3 授業評価と学生アンケート
 1-2-4 授業評価と教育改善
 1-2-5 授業評価と人事評価(教員評価)
1-5 就職評価はどうあるべきか
 1-5-1 就職指導の問題点
 1-5-2 就職活動を活発化する方法(就職率を上げるためには)

●第三部(2009年1月21日~22日)
2 なぜ、広報は「教育改革」に無関心なのか
  2-1 お願い主義営業の問題点
  5-2 体験授業が、授業(説明)になり、勧誘にならない
以上が、興味深い項目でした。

今、専門学校淘汰されるスピードが速くなってきていると思います。あと5年すれば業界の配置図も大きく塗り変っていると思います。


投稿者 masa : 2008年10月01日 08:46

>masaさん

 ご返事遅れました。スミマセン。

「あと5年すれば」というのは、まだ甘すぎるくらいです。「あと2、3年」で結果が出てしまう、という感じではないでしょうか。

 これは、全入時代を見据え、大学に代わる高等教育の柱を構築してこなかった専門学校の、当然の「運命」のようにも見えます。

 70年代に生まれた専門学校(専修学校専門課程)は、その当初の使命としては大学へ行けない人たちに「専門」教育を受けさせる学校でした。

 しかし昨年4月に大学の応募数と募集数とが数値的には一致した。ここで専門学校の歴史的使命は終わったわけです。

 その時の課題は、高校の出口のところで、大学か、専門学校かを対等に問われてもいい学校にまで専門学校が出来上がっていなければならないということです。

 しかしそうはなっていない。

 現在の情況は、(大学ばかりを薦める)高校の先生の悪口を言うか、(低位学生を教育できない)大学の悪口を言うか、(公費助成をしない)文科省の悪口を言っているだけです。

 自分たち専門学校がこれまで何をしてきたのか、何をこれからなし得るのかの内省が出来ていない。
 
 大学とは別の高等教育の柱を今こそ示さなくてはならない専門学校は、その時にこそ、混乱し、あいまいになり、右往左往しています。

 これでは専門学校の再生はありません。熱意と戦略のある専門学校関係者が今こそ大同団結し、新しい高等教育の柱をせめて予感だけでもさせるくらいには、示すべきです。

この研修はそんな研修にしたいと思っています。

投稿者 ashida : 2008年10月03日 06:36

お忙しいところ、返信していただいて有難うございます。

返信の文章中に、「大学とは別の高等教育の柱を今こそ示さなくてはならない専門学校は、その時にこそ、混乱し、あいまいになり、右往左往しています」とありますが、まさに、これが現在の問題です。

しかし、既存の専門学校に大多数は、この問題の解決策を打ち出すことはできないと思います。

生き残れるのは2~3割くらいかな?
もっと少ないと考えています。

「息の長い人材能力の形成」ができる教育システムの構築が必要と思いますが、トップに立つリーダー、学科長、教務主任、職員の「教育に対する能力」が必要だと言えます。

授業料を戴いて生活を形成してるプロだから、備わっていて当たり前かもしれませんが、無いのが今の専門学校の教員です。

「2~3年」、芦田先生が言われているように、そのくらいかもしれませんね。

6~7年前に、先生の学校のシステムを知って、学校訪問をして、直に話を伺いました。

最初はそこまでやるのか?と思いましたが、私が、教育の世界から離れて、外部の視点から見ると、このシステムの素晴しさを理解できました。

社会に通用する人材、社会が必要とする人材を育てようとする最適な方法論だと痛感しました。

真似をする学校は出てくると思いますが、完成させる学校は皆無だと思います。

生意気な文章を羅列してすいません。

しかし、5年前、先生のところに伺って話されていたような時代になりましたね。

今後も楽しみにこのブログを訪問させていただきます。有難うございました。

投稿者 masa : 2008年10月03日 08:48
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