iPhone 3G の「カレンダー」アプリがGoogleカレンダーと同期を取るようになった ― Gmail+Googleカレンダーとの完全同期が可能になった(MobileMeは、もう不要かも知れない) 2008年09月20日
スケジュール管理の課題は、古くて新しい。
どこででもスケジュールを知りたいことはあるし、どこででもスケジュールが決まることがある。特に最近は携帯電話の会話の中でスケジュールが決まることも多い。電話の用件の大半は「会う」こと(電話では済まないこと)だという報告もあった。そしてその電話は現在では「いつでもどこでも」の携帯電話なわけだから、スケジュールは、いつでも知ることができていつでもそこで記入できないと都合が悪い。
スケジュールは、通常、職場の自分のデスクパソコンの「中に」入っている。この場合、会議室では見られない。出先でも見られない。自宅に帰ったらもっと見られない。
そこで90年初頭「電子手帳(→PDA)」が出現。「デスク」と「会議室」と「出先」と「自宅」を「電子手帳」が結んだ。
もともとは、この程度のことは紙の手帳(ビジネス手帳)が連携を取っていたことだったが、当時の「電子手帳」は手元に置いて「連絡帳(特には電話番号の)」の代わりに使われていた(初期の携帯電話の電話番号帳は貧弱で使い物にならなかった)。名刺データベースとしては、紙のビジネス手帳よりは「電子手帳」は遙かに(特にその検索機能において)優れていたのである。これが90年代のスケジュール管理。
90年代後半からは、事情が変化した。インターネットと電子メールの普及である。電話でアポを取る様式が、「電話」から「メール」へと変貌した。
「メール」は、ビジネスマンたちを逆に「机」に張り付かせた。インターネットの黎明期(1990年代後半)には、携帯電話でメールをやりとりする技術は存在せず(iModeの登場は1999年2月)、電子手帳(ザウルス)もネット対応にはかなり遅れたからである。
「メール」のアポに関わる内容を、電子手帳に転記することなく(正確に迅速に)記録するためには、MS-OUTLOOKなどを使って机の上でのパソコンでスケジュール取りを行う習慣が付いていった。
「デスク」と「会議室」と「出先」と「自宅」が電子手帳(あるいは紙の手帳)で結びついていたにもかかわらず、インターネットの普及が、それらをむしろふたたび分離したのである。
今度はどうなったか。今度は電子手帳のスケジュールとパソコンの中のスケジュールとの同期を取ることが必要になった。「会議室」と「出先」と「自宅」が得意な〈電子手帳〉とメールからのスケジュール化が得意な机上の〈パソコン〉との同期だった。
ザウルスもWindowsCE(→WindoesMobile)もOUTLOOK(=パソコン)との同期を取るようになったのである。
今度はどうなったか。この場合の〈同期〉は、ザウルスやWindowsCEのPDA(電子手帳)とパソコンとが手動で同期されることが前提となっていた。〈手動〉ということの根本的な意味は、二つある。一つは同期を取ることを忘れる場合があるということ。二つ目には、同期を取るためにはパソコンと PDA(電子手帳)とが空間的に近接していることを前提とすることである。両者の共通の問題点は〈同期〉にタイムラグがあるということだ。
スケジュール管理という時間勝負の管理に、タイムラグがあるということは致命的なことだ。「電子手帳」時代の〈同期〉の限界がそこにあった。
今度はどうなったか。の衝撃だ(2004年4月)。いわゆるビジネスアプリケーションの中核をなす「メール」処理が世界企業Googleによって〈WEBアプリケーション〉化された。MS-OUTLOOKのようなパソコンローカルにアプリとデータを閉じ込める時代が終わったのである(正確には終わりの始まり)。
ネットに結びついたパソコンなら、他人のパソコンででも自分のメールの受発信ができる。会社と自宅で同じメーラーを使いながらメールの受発信ができる。〈WEBアプリケーション〉は便利だ、という実感が大衆化したのは〈Gmail〉以後だ。
この衝撃の第一は、当初(2004年)、1GBのメール容量を無料保証するというものだった。これにみんなが飛びついた。2004年当時、1GBという容量は破格の容量だったからである。1GBと言えば、たぶん一生使っても使い切れない容量だろうと思っていた。
だとすると学生から使い始め、会社に就職し、会社を転職し、老後を迎え、またそれに応じて何度もパソコンを変えても、メールの送受信をGmailに集約すれば、面倒なメーラーの変更やアカウントの設定をやる必要はない。その意味で1GB容量の無料サービスは大きかった。
しかもこのGmail容量は年々、日々増加しており、今では(今日9/19現在)、なんと7GB!に増えている。というのも2004年、破格の一生ものの容量と思われていた1GBなど、私でさえも昨年とっくに超えたからである。この調子でいけば、7GBもここ数年の内に超えてしまうだろう。 Googleはその意味で日々容量を拡張し続けており、本気で死ぬまでのメールのやりとりをカバーしようとしている。「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家のようなサーバー主義を本気で死守しようとしている。
Gmailが便利だったのは、複数アカウントの設定ができ、時には会社のメールアドレスから、時には他のメールアドレス(たとえば携帯電話)から発信したかのように振る舞えることだった。これはどんなメーラーにも付いている機能だが、いつでもどこでもの(WEBアプリとしての)メーラーにこそ有意義な機能だったのである。
さらにはご存じの通り迷惑メールの強力なフィルター機能。Gmailは毎日のように本メールよりたくさん送りつけられる迷惑メールの99%をシャットアウトしてくれる。Yahoo!mailが足下にも近づけない性能だった。通常のメーラーの転送機能を使うと携帯電話が迷惑メールだらけになって、とても転送する気になどならないが、Gmailこそが安心して転送できる最初のメーラーとなった。こういった諸々の優れた機能がGoogle〈WEB アプリ〉に対する信頼感を形成することになったのである(Gmailの便利な機能はまだまだあるが、論脈からずれるのでここまでにとどめる)。
どこにでも(自分の机、会議室の机、出先の机、自宅など)にパソコンがあり、それらのパソコンの全てがインターネットに繋がっている時代には、1 つの(自分の)パソコンへの入力は、どの(他者の)パソコンへの出力でもあった。また多数の(他者の)パソコンからの入力が一つの(自分の)パソコンへの出力だった。情報共有とは味気ない言葉で言えば、単入力多出力、多入力単出力のことを言う。
YahooやGoogleのような検索サイト、Amazonや楽天のようなショッピングサイトはすでに(言うまでもなく、「インストール」を必要としない)〈WEBアプリケーション〉であったが、〈Gmail〉の出現をもって〈WEBアプリケーション〉の意義=「情報の共有」ははじめて実感的に大衆化されたといっても良い。今となっては90年代後半騒がれた「ロータスノーツ」の「グループウエア」は、一言で言えば〈WEBアプリケーション〉のことだったのである。
〈WEBアプリケーション〉はもともと〈同期〉のアプリケーションだった。逆に〈同期〉という言葉は、WEBアプリに最初から馴染んでいる人たちにとっては死語に近い。
今度はどうなったか。
〈Gmail〉に小躍りしたビジネスマンたちは、MS-OUTLOOKで「メール」をやりとりするのを止め始めた。
今度はどうなったか。
同じように「予定表(スケジュール管理)」が〈WEBアプリケーション〉化された。〈Googleカレンダー〉だ(2006年4月)。スケジュールだけはまだMS-OUTLOOKを使っていたビジネスマンたちも〈Googleカレンダー〉に移行し始めた。カレンダーこそがWEBアプリによって共有化されるべきだったからである。これでMS-OUTLOOKの息の根が止まった。PDAの最後の、最良の商品SONYのCLIEの生産中止が翌年の7月末であるから、〈WEBアプリケーション〉こそが電子手帳の息の根を止めたのである。
この間、並行したのは、携帯電話の電子手帳化だった。携帯でGmailサイトを直接見に行ったり、書き込んだりするのはまだまだ難しい。重いし使いづらい。そこでまずメールをGmailから携帯に転送。そのことによって、どこでもいつでもメールを読めるようになった(簡単な返信も携帯からできるようになった)。
電子手帳に親近感を感じなくなっていた大概のビジネスマンは、メモをメール化し、携帯電話に「メモ」フォルダを作り、携帯メモ化していた。また Gmailの大容量化は、ストレージとしても機能し、ワードやエクセルファイルをGmailで添付ファイル化し、どこに送るともなく(自己メール化し)Googleのメールサーバーの中に“保管”するようになっていた。そうやってビジネス文書を携帯電話でも読めるようにしていた。
ただ唯一、そういった携帯化を阻んでいたのが、スケジュール表だった。前々から携帯用のGoogleスケジュールアプリは存在していたが、表形式(カレンダー表形式)では表示できなかった。使いづらい。任意の日付や月に飛ぶのに手間がかかる。用件や日付、場処など質の異なる入出力を一気に行うことが要求されるスケジュールの管理には現在のGoogle携帯アプリでは不可能だった。
それに現在のモバイル用Googleカレンダーアプリは、何よりも毎回毎回Googleカレンダーのサーバーに読みに行かなくてはならない。これが迅速性を求められるアポ決めには不適。課題はGoogleカレンダーのプッシュ型同期だった。
文字中心のGmailと違って、スケジュール表中心のGoogleカレンダーはなかなか携帯化されずにいた。表形式でスケジュール管理ができ、かつプッシュ配信されるGoogleモバイルカレンダーが必要だった。
今回の iPhone 3G の課題の一つは、肝心の「MobileMe」(http://www.apple.com/jp/mobileme/)サーバーがOUTLOOKの連絡帳、メール、カレンダーとしか連動しないことだ。おかしなことに、 iPhone 3G をフル活用しようとしたら、GoogleメールもGoogleカレンダーも捨てて、一度捨てたOUTLOOKに先祖返りしなくてはならない、という事態が生じた。
OUTLOOKも現在のバージョンからサーバーとのやりとりをするようになったが、今さらOUTLOOKで情報共有する気など起こるわけがない。
私の iPhone 3G は、メールアカウントをGmailで取っている(Gmailと完全同期)。連絡帳、スケジュールだけは「MobileMe」で同期、という変則的な体制だ。OUTLOOKでメール同期をとれば、私の iPhone 3Gメールは迷惑メールの渦で使い物にならなくなるに違いない。今さらGmailから離れられはしない。その意味ではiPhone 3GがGmailアカウントを設定できるというのは良いサービスだった。
携帯電話でGmailアカウントが取れる意義は大きい。たとえば、Gmailから転送されたメールを出先の携帯電話から返信した場合、その再返信は、携帯の方へ返信され、Gmailサーバーには返信されない。Gmail頼りで受発信を管理しているととんでもないミスを犯す危険性が生じる。携帯で返信してもGmailアドレスで返信できる、というiPhone 3Gのアカウントサービスはその意味で文字通りのGmail完全同期を実現したのである。iPhone 3GはGmailマシンなのだ。
iPhone 3Gは、メールの自動フォルダ分けができないと文句を言うユーザーがいるが、Gmailアカウントを設定すれば、どんな携帯電話にもない強力なGmailのフォルダ分け機能がそのまま使える。 iPhone 3G が携帯電話最強のメールマシンに変身する。
ところが、同じようにしてGoogleカレンダーとの同期が iPhone 3G は取れない。正確に言えば、 iPhone 3G の既存の表形式「カレンダー」アプリとの同期が取れない。現在のところ、OUTLOOKの予定表にしか対応しない(それでも WindowsMobileマシンのOUTLOOK同期、いわゆるActiveSyncよりもはるかにすぐれているのは、この iPhone 3G の同期がプッシュ型サーバー同期ということだが)。
「MobileMe」は年間で9800円も使用料がかかる。カレンダーと連絡帳のためだけに9800円も払うのはちょっときつい。20GBのストレージサービス(フォトサーバーサービスも含めて)もこの費用には含まれているが、それでも高い。
私の場合で言えば、Googleカレンダーと同期が取れないためだけに、「MobileMe」を使わざるを得ない、つまりOUTLOOK予定表を使わざるを得ない。二重のストレスだ。
そこで色々と調べてみると、今度はGoogleカレンダーと iPhone 3G を取り持つサービスがあることを知った。
NuevaSync(http://yamashita.dyndns.org/blog/iphone-google-calendar-nuevasync/)というサービスだ。
iPhone 3G 側でMicrosoft Exchangeのアカウントを新たに加えて( iPhone 3G はたくさんのアカウント設定ができて便利だ)、NuevaSyncを設定すると、見事にGoogleカレンダーと iPhone 3G の既存の表カレンダーとが同期する。
iPhone 3G は、Googleカレンダーをプッシュ型同期しつつ、表形式で可視化した初めての携帯電話だと言える(私の知る限り)。
WindowsMobileのActiveSyncと違って、USBケーブルや Bluetoothといった貧乏くさい同期条件なしに、サーバー連動で同期を取るのが、iPhone 3G 同期のエポックメイキング。文字通りいつどこにいても、多人数のスケジュール管理さえも瞬時にできる。
一方に、たとえばPC上のGoogleカレンダーにスケジュールを書き込むと、数分して iPhone 3G の「スケジュール」表にそのスケジュールがぽっと浮かぶようにして自動的に書き込まれる。爽快だ。電子手帳が出現して約20年。文字通りその歴史を生きてきた私にとっては、これこそが理想のスケジュールモバイルだ。
しかも、そのカレンダーアプリがWEBアプリとしてのGoogleカレンダー。
カレンダー管理としては最強の携帯ではないか。もともとGmailに劣らず、Googleカレンダーはカレンダーアプリとしても最強のアプリだった(http://www.ashida.info/blog/2007/10/google.html)。どんな有料グループウエアにも負けない便利さを有していた。唯一の欠陥が、モバイル連動だったのである。
NuevaSync+NuevaSyncのサーバーサービスによって、 iPhone 3G がGoogleカレンダーを完全にモバイル化した。これで、GmailとGoogleカレンダーとの完全同期(プッシュ型の!)が可能になった。「MobileMe」は要らないかも知れない。 iPhone 3G はお遊び携帯のように思われたりもしていますが、実は逆でビジネス携帯として最強なわけです。現に iPhone のOS、 iPhone 2.0ではセキュリティ機能が格段に強化されている。ビジネス用途を見越してのものだ。たぶんアップル社はWindowsPCユーザー(=Google ユーザー)がいる分、 そのモバイルマシンとしてのiPhone 3Gが存在するというようにビジネスチャンスを考えている。
今しばらくは、 iPhone 3G から目が離せない。最近知った情報では iPhone 3G をノートパソコンのモデムとして利用するアプリも出現しているらしい(http://www.ipoday.com/ipodtouch_applications/iPhoneModem.html)。 iPhone 3G はきりがないくらいに日々発展している。新機種競争に明け暮れる日本の携帯電話との違いがここにある。
※なおNuevaSyncのサーバーサービスは、同じくGmailの「連絡帳」と iPhone 3G の連絡帳とのプッシュ同期も取れる。その意味ではもはや「MobileMe」はほとんど不要とも言える。ただ私が試した限りでは、NuevaSyncのGmail連絡帳同期では、連絡帳のフォルダ分類が同期されない。私のGmail連絡帳は、約4000件の連絡先が入っているが、そのくらいの数があるとフォルダ分類が同期されないのは辛い。「MobileMe」はMS-Outlookの連絡帳フォルダ分類と完全にプッシュ同期する。まだ完全には「MobileMe」(年間9800円)と縁が切れない。フォルダ分類のためだけに「MobileMe」を使うのはもったいない気もするが。
(Version 4.0)
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いつも読ませていただいております。
さて、outlookのスケジュールをGoogleカレンダーと同期をとることですが、私の会社では、セキュリティー上の問題からGoogleカレンダーとの接続がシステム上で制限されており、同期をとることができません。MobileMeも同様であります。
私個人もスケジュールをWebに載せることに個人情報漏洩もあり、若干ながら抵抗があります。そのことを考えるとやはりUSB接続による同期は非常に有用かと考えています。
>yamameさん
そうですか。私はその問題はとっくの昔に割り切っています。
「スケジュールをWEBに載せる」どころか、ショッピングをカードでやっているくらいですから、個人情報はバレバレです。ETCもバレバレ。クルマを犯罪逃走に使ったら必ず捕まります(苦笑)。
会社のセキュリティと言いますが、会社のシステム室は何でも見ることができます。会社が一番危ない(苦笑)。
そんなことを考えると、USB接続で何を守っているのか、さっぱりわからなくなるでしょう。
Bluetooth も含めて、ワイヤレス化は急速に進むと思います。
それ以前に、人間が一番厄介なのは、なにをやっても自分自身に自分がばれているということです。私は自分を自分自身から守るセキュリティーには大いに関心があります。