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 家内の症状報告(122) ― NMOに対するリツキサンの効能(Neurology誌、2005年) 2008年08月31日

今日はかの医師からこんなメールが届きました(前回 http://www.ashida.info/blog/2008/08/121.html#more の続きです)。以下全文紹介します。2005年のNeurology誌に紹介された、NMOに対するリツキサンの効能をめぐる論文の紹介です。

●是非あなたのブログ(『芦田の毎日』)でWeb公開して頂きたい情報があります。

それは、あなたのブログで教えていただいた2005年のNeurology誌に載った、NMOに対するリツキシマブ(リツキサン)の効果についての論文です(あなたはもちろんFull Textをお読みになった事と思いますが・・・)。→http://www.ashida.info/blog/2008/03/post_277.html

数日前、論文のコピーが手元に届きましたが、それを読むとNMOに対するリツキシマブ(リツキサン)の治療効果は目を見張るほど素晴らしいものでした。

あなたもブログの中で述べておられますが、リツキシマブ(リツキサン)はCD20+ B細胞(成熟B細胞)を選択的に殺す薬です。成熟B細胞を殺す事により、抗体産生による液性免疫を低下させる訳です。

以下簡単に論文の概略を述べます。

アメリカのサンフランシスコMSセンターで、8人のNMO患者にリツキシマブ投与による治療が行われた。

8人全ての患者が、従来のステロイド・インターフェロン・免疫抑制剤(アザチオプリン、ミトキサントロンなど)・免疫グロブリン点滴・血漿交換などの治療を受けていたが、これらの治療にも関わらず神経症状が悪化していた。

それぞれの患者は週に一度、計4回のリツキシマブ点滴を受けた。副作用は軽微なもので、点滴中の発熱が1例と副鼻腔炎が1例に認められ、重大な副作用はみられなかった。

2回目の点滴終了時には末梢血液中の成熟B細胞は検出できなくなり、その効果は6ヶ月から12ヶ月持続した。

第1回目のリツキシマブ投与後、再び末梢血液中に成熟B細胞が出現した場合、希望者はリツキシマブの追加投与(2週間の間隔をあけて更に2回点滴)を受けた。

リツキシマブ治療の結果、8人中6人は1年間再発を認めなかった。再発率は治療前 2.6回/患者数/年から治療後 0回/患者数/年へ減少した。

1年の経過観察で8人中7人が神経症状が改善した。その中には劇的に神経症状が改善した例があった。例えば、ある26才の女性の場合、頸髄の脊髄炎のため、四肢麻痺・顎から下の知覚障害・膀胱直腸障害をきたし2.5ヶ月間もCCUで人工呼吸器を装着されていた(EDSS=9.5)が、治療後日常生活が自立できるまで改善した(EDSS=6)。※EDSS(Expanded Disability Status Scale)については→http://www.ms-gateway.jp/scripts/pages/94.php。ちなみに私・ジャイアンの家内のEDSSは7.5です。

一方で、リツキシマブ治療後も対麻痺の神経症状が改善しない患者が1人いた。リツキシマブ治療前の平均EDSSは7.5であったが、治療後の平均EDSSは5.5まで改善した。

EDSS(障害度)はMS/NMOの神経障害の程度を表す尺度で、一般の方にはわかりにくいのですが、EDSS=0(正常)からEDSS=10(死亡)まで、0.5毎にランク付けしています。

リツキシマブ治療前のEDSS=7.5が、治療後EDSS=5.5まで改善したということは、治療前には2~3歩しか歩けず車イスに乗るのに介助を必要としていた人が、杖なしで100m歩けるようになったということです。

特に注目されるのが、EDSS=9.5の女性がEDSS=6.0まで改善した例があったとの事で、これは死に瀕した全身麻痺の状態で人工呼吸器で命を保っていた人が、杖をついて自力で100m歩けるようになったということです。この女性にとっては、リツキシマブ(リツキサン)はまさに「奇跡の薬」です。

リツキシマブ(リツキサン)は現在日本でも悪性リンパ腫に対する抗がん剤や臓器移植後の免疫抑制剤として、保険診療での使用が認められている薬です。もし今、NMOの治療に使用するとすれば、自由診療(自費)になりますので、薬価が高いのが難点です(1本20万円以上しますので、治療には軽自動車が買えるくらいの薬代がかかります。しかし、効果が一年続くとすれば、我慢できないほどの額ではないのかも知れません)。

個人的には、リツキシマブ(リツキサン)は今後MS/NMOの治療の切り札になるかもしれないと感じます。日本でも、一日も早く臨床試験を行って、保険診療での使用ができるようにしてもらいたいと切望します。

以上がかの「医師」のメール全文です。ご参考までに。

ただし、2007年の論文では無効例の報告(?)もありそうですが(http://www.ashida.info/ms/rituximab_for_nmo_case.pdf)、そもそもどんな薬効もこの病気の場合、全ての患者に有効と言えるものはないので、リツキサンの投与の希望を捨てる必要はないと思われます。この無効例の論文紹介は例の「パパ」さんからのものです。

(Version 1.0)

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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感想欄

初歩的な質問で恥ずかしいのですが、リツキサンのことは、芦田さんの以前の症状報告でも拝読しましたが、再発抑制の薬と思っていました。特にNMOの。

現在MS、NMOの治療薬は、再発抑制のみで、固定した症状を改良するものは無く、現状維持がベストだといわれました。がっかりしますが、、

この治験が真実ならば本当に素晴らしいことなのですが、本心からですよ。

この治験の対象者は、どういう方でしょうね。数種の治療をして効果なかった病人と記載されていますので、再発直後の方とは限らないのですか? 

EDSSが大きく改善されていますが、重篤な再発で元に戻ったということか、それ以前に戻って過去の症状まで、回復したような感じさえします。

特に9.5→6.0は驚きです。たまに初期MSでパルスで奇跡的に回復したというのも読んだことありますが。

1年に1回は治療しなければならないとすると、やはり再発抑制のほうでしょうか?

因みに私は、抗体は陰性で、ステロイドが、あまり効かない体質のようです。この薬で、過去の障害にも効果が出るという可能性があるとうれしいのですが、、、早く臨床実験をして欲しいものです。高価な薬といっても、既に認可の薬品(抑制率20-30%その他副作用あり)と同じか安いくらいではありませんか?

投稿者 匿名希望 : 2008年09月01日 21:09
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