家内の症状報告(100)― 現代治療の最前線における多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、どう治療すべきか? 2008年02月20日
記念すべき、症状報告(100)回目の記事となりました。現代のMS/NMO治療のかなり先端の部分を通覧できる貴重な報告となりました。継続的に、毎日のように書いてくださっている「ぱぱ」さん(=ミクシィ(MIXI)ネーム)に、患者、および患者家族を代表して謝意を捧げたいと思います。昨日の私のドタバタNHKニュース出演を見て頂きながらも、こんなまじめなレポートを書いて頂きました。
●2008年02月19日 20:13
久々にまともな時間の書き込みです(苦笑)。
芦田さんの(2)の御質問 ― 液性免疫と細胞性免疫との関係、およびそれに基づく治療法如何?― への回答です。
MSの病理分類の変遷は紆余曲折の歴史がありますが、芦田さんの「CMS/OSMS=細胞性免疫=ベータフェロン有効、NMO=液性免疫=免疫抑制剤=血液浄化法有効という対照関係」という観点の背景には以下の流れがあると思います。
確実な証明があるわけではないものの、一般論としてMSの病因病態は、何らかの感染等により炎症が励起されやすい状態が生じた際に、本来ならば中枢神経系に入れないリンパ球が脳血管関門を通過して脳内に入り、髄鞘を攻撃し脱髄を来たす、そしてその中心的な役割を担うのはリンパ球のうち、CD4陽性 T細胞を中心とした細胞性免疫、と考えられていました。
ベタフェロンはそのT細胞に対して何らかの修飾をする「免疫修飾能」があると推察されており(後だしジャンケンのように、当初からこの期待があったような説明が付け加えられていますが、前述のように、きっかけは1981年のScience誌にあるように「抗ウイルス効果」を期待したものでした)、FDAに認可されたNatalizumabはこういったリンパ球が脳血管関門を越えられないようにする目的で、脳血管関門を通過するために必要なアルファ4インテグリンを阻害する抗体医薬として登場しました。
MSは、(T細胞性の)自己免疫疾患である、という「仮説」は証明されたかのような勢いを持って広がっていました。つまり、T細胞性リンパ球が「加害者」であり、脳内の髄鞘形成細胞(オリゴデンドロサイト、以下オリゴ)はその「被害者」、と考えられていました。
この流れに対し、1996年7月にMayoの医師らが、Brain Pathology誌にMS病巣におけるオリゴの生き死にパターンにはバラエティがあることを指摘。その後2000年6月のAnnals of Neurology誌に同じMayoの医師らが、MSにおいて脱髄進行中の病巣を多数解析し、その分類を下記のように示しました。
Type1=T細胞とマクロファージのみからなる炎症(=細胞性免疫)
Type2=免疫グロブリンと補体からなる炎症(=液性免疫)
Type3=オリゴの自発的死(アポトーシス)による脱髄が主体で免疫グロブリン・補体・髄鞘再生を認めないもの
Type4=オリゴの変性が主体で髄鞘再生を認めないもの
つまり、MSといえば細胞性免疫による自己免疫疾患(Type1)、と考えられていたところに、液性免疫(Type2)の関与が指摘され、さらに、そもそも免疫が主体ではく、オリゴが「被害者」とは言い切れない病態(Type3,4)が挙げられました。
このような病態の差が、ベタフェロンの効果の差(効く人と効かない人の差)に繋がっているのではないかと考えられるようになりました。実際、 2005年8月には同じMayoの医師らがLancet誌において、Type2(液性免疫)のMS患者では血漿交換が奏効することを報告しました。アメリカでは(脳腫瘍との鑑別等を目的として)日本よりも気軽に脳生検を行いますので、脳生検でType分けをすれば、MS治療の個別化ができるのではないかとすら言われました。
この途中経過で前述の2004年4月にオーストラリアの医師がAnnals of Neurology誌に「超急性期」のMS病巣において、免疫反応不在でのオリゴの死、が報告されました。つまり、リンパ球とオリゴの因果関係、或いは「加害者」「被害者」概念が逆転しうることを示した分けです。
ところが、2008年1月のAnnals of Neurology誌に、この1996年から連綿と続いた「MSにはバリエーションがある」という論を全てひっくり返し、かつ、「MSと言えば細胞性免疫である」という仮説をも覆す論文がオランダから投じられ、全ての脱髄進行中のMS病巣は、Type2(液性免疫が主体)である、と指摘された訳です。
付け加えると、2008年2月14日号の(世界一有名な医学誌である)New England Journal of Medicineに、MS患者を対象としたPhase2のリツキサン(日本ではリンパ腫で既に使われている抗体医薬)治験結果(1年間の観察期間)が出されました。2週間を空けてたった2回のリツキサン点滴をしただけですが、1年間の追跡で、投与群での再発は半減していたとのことでした。
簡単に言うとリツキサンというのは、B細胞(免疫グロブリンを作る細胞)を殺す薬です。つまり液性免疫を抑制し得る薬がMSにおいて再発減少に効果を出したということになります。Phase3が終わっていないので、未だ試験途中であり、長期効果を見たものではありませんが、脱髄MS病巣は全て Type2であるとする2008年1月の論文と併せると、MSを細胞性免疫の疾患と考える論拠は乏しくなったように感じます(ちなみに、NMOについては極小数例におけるリツキサンの試験投与の結果が2005年のNeurology誌に報告されていますが、再発を抑制できるのではないかとされています)。
さて、NMOの病理解析ついて、2007年5月のBrain誌には東北大の論文とMayoの論文が別個に登場しています。東北大は、NMOにおいてはAQP4が消失し、MSにおいてはむしろAQP4が発現亢進していること、そしてNMOでは本来AQP4が発現している血管周囲において強い免疫グロブリンと補体の沈着が生じている(液性免疫が生じている)ことを指摘しています。これに対して、Mayoは、NMOにおいてAQP4の消失を認めるのは同じですが、MSではその病巣パターンによってAQP4は発現亢進しているところと、消失しているところがあると指摘しています。ただ、AQP4はアストロサイト(以降、アストロ)に発現していることから、Mayoのグループはアストロが増えている病巣とそうでない病巣の両方を解析しただけのように思われます(MSにおけるアストロの反応や役割については、これはこれで長い議論がありますが、詳論を避けます)。
そもそもMSをType1~4を区分けしたのがMayoですが、気になるType2(液性免疫主体のMS)とNMOの違いについて、彼らは論文でこう指摘しています。NMOにおける免疫グロブリンと補体は主に血管周囲に沈着していたが、Type2のMS病巣では脱髄中の髄鞘のゴミやマクロファージ・オリゴの周囲でこれらを認めたと。また、NMOにおいては脱髄が生じている炎症病巣と、脱髄はないが炎症だけの病巣があったことを指摘しています。つまりNMOにおいては脱髄は副次的な反応かも知れないということを想起させます。
脱髄進行中のMS病巣が全てType2ならば、NMOとMSの「病理学的な区分け」では、どちらも液性免疫が主体的に関与するものの、NMOではその対象がアストロであり、MSではオリゴである、ということになります。NMOではアストロを介した副次的な脱髄が生じ、MSでは直接オリゴ・髄鞘をターゲットとした脱髄が生じるという仮説が考えられます。
アストロは血管周囲で脳血管関門を構成する他に、髄鞘と髄鞘の間にあるランビエ絞輪に足を伸ばしているので、Mayoの見解としては、アストロを攻撃すれば、ランビエ絞輪を経て脱髄に繋がるのではないかと考えているようです。
ただ気をつけなくてはいけないのは、脱髄と炎症の因果関係が必ずしも定かでないのと同様に、抗AQP4抗体によるアストロの炎症、というのが果たしてNMOの「原因」なのかは分からないということです。今のところ、AQP4を欠損した動物(既にマウスが作られている)でNMOになるという報告はありませんし、或いは正常動物に抗AQP4抗体を投与したからと言ってNMOになるという報告はありません。またNMOで生じる病変にAQP4が出ていることは確かであるが、AQP4はもっと広い範囲で検出される、にも拘らず視神経脊髄に集中するのは何故か。
抗AQP4抗体を検出できないNMOないしHigh-risk syndrome of NMO患者は、検査感度の問題で抗体が(実際にはあるが)検出できないだけなのか、或いは抗AQP4抗体が「原因」ではなく、「結果」であることを示しているのか。
東北大は抗AQP4抗体の特異度は100%としているが、NMO-IgGに関する他の論文では100%でなく、NMO-IgG陽性であるCMS患者が記載されている。これは検査特異度の問題なのか、或いはCMSにおいても、脱髄・炎症の結果としてNMO-IgGが出現し得る、つまりかの抗体が「結果」である可能性を示唆しているのか。
さて、
>このコメントは衝撃的でした。結局、CMS/OSMS/NMOの区別が、ほとんど意味がなくなりすべて「液性免疫が主体」の病理だということですよね。そうなるとベータフェロン治療は一体何だったのでしょうか(芦田さんの前回の文章の引用)。
ベタフェロン治療の論拠は「後だしジャンケンのように」細胞性免疫の調節にある、と言われていますが、ベタフェロンがMSにおいてどう効いているかは、前にも述べましたが、「誰も知らない」。細胞性免疫の調節がベタフェロンの効果である、という視点に立てば、芦田さんの驚き、-ベータフェロン治療は一体何だったのでしょうか-というのは良く理解できますが、そもそも謎の薬ですから、実は驚くところではありません。
ただ、敢えて申し上げますが同じ液性免疫を主体とする(かも知れない)MSとNMOにおいて、ベタフェロンの効果が異なってくるという事象は、もっと慎重に解析してから結論を出すべきであろうと思います(EBMに固執するわけではありませんが、「経験論」を一般化するのにも慎重にならねばならないと思います)。
>だとするとCMS/OSMS/NMO治療はまさに闇の中(芦田さん)
アストロが標的かも知れないNMOと、オリゴが標的かも知れないMSで区別できる可能性は残されていますが、免疫を大雑把に(局所でなく全身的に)調節しようとする治療薬(ステロイド、アザチオプリン、ベタフェロン等)の観点からは、個々の標的は関係ありませんから、もし本当に双方が「液性免疫」主体であるならば、個々の患者において治療薬の反応性が異なる理由は全く説明できない(闇の中)ことになります(ちなみにステロイドは免疫云々ではなくAQP4の発現を調節する可能性が指摘されていますが)。なんら(生物学的なエビデンスのない)、「NMOタイプのMSならベタフェロンで悪化するかも知れないらしい」とか「NMOタイプのMSならステロイドが効くらしい」といった情報を手探りにするのみです。
>あなたの切り出した「NMO/MSの専門家」とは、ここにきて(このやりとりもそろそろ終わりかけていると思いますが)、もはや1人も存在していないのではないか、と思うほどです(芦田さん)。
ですから、「患者本人やその家族にとっての「NMO/MSの専門家」に求められる追記条件については、よく理解できます」が、結局のところ、残念ではありますが、「分からないことだらけであることを十分に承知し、あらゆる情報を集約し、あらゆる可能性を考え悩みぬいた上での決断として、その患者に最も適切と思われる治療を選択」、する医師を以て「NMO/MSの専門家」と称する他は現実的にないのです。
さて、ようやく(苦笑)、芦田さんの質問(2)の後半に対する回答です。
まず、直近の現実的な対応として、既に自明とは思いますが、
1) 抗AQP4抗体検査の改訂(できればELISA等の絶対値がでる検査に変更)、感度・特異度の算出とカットオフ値の設定、標準化
2)本邦におけるMS(できれば全例)を対象とした抗AQP4抗体検査
3)Retrospective(既に起こった現象を後から解析するという意味)な評価による、抗AQP4抗体陽性例におけるベタフェロン・ステロイド反応性の症例解析(2005年2月の、かのベタフェロン治験に組み込まれた全症例を抗体検査し、レトロスペクティブに見直しつつ現在までの状況を含めて解析できれば最も良い。
これを行う上では芦田さんが提唱した症例データベースがあれば本当はクリックひとつ二つでできる簡単なことですが…。ちなみにEBMの観点からは、本来は抗AQP4抗体陽性・陰性に分けたベタフェロンあるいはステロイド治験を今からやることが最も望まれるが、現況では抗体陽性患者で参加してくれる人は少ないと思われる)
以上を以て、本邦における診療ガイドラインを策定、一般神経内科医にも浸透させる というものが望まれると思います。
もう少し先のことを考えると、原因を反映した診断基準がないのにEBMの呪縛が解けない(診断基準に縛られてしまい、個々人の病態に応じた治療を選択できない)現況を打破する一案として、検査技術の発展による個別病態の把握が可能になることが望ましいと思います。翻ってMayoがType1~4に分けた時に、病理分類は個々人で違うが、特定個人の中の異なる病巣間では同一、という見解を述べています。つまり、一ヵ所を我慢して生検すれば、全体を反映し、治療法選択が可能になるということでした。しかし実際に生検に応じる患者は少ないと思います(小生なら嫌です)。
現在のMSにおける検査技術は MRIが中心ですが、所詮はプロトンの信号を見ているのみで、例えばプロトンによって細胞性免疫と液性免疫を区別できるかと言えば困難なように思われます。ただ、病態を反映するような新しい造影剤(肝臓癌においてはフェリデックスという鉄を含む造影剤があります、これは肝臓のクッパー細胞が鉄を貪食することを応用している)が開発されれば、不可能ではないかも知れません。あるいはより近接的には脳を包む脳脊髄液で病巣の免疫状態を生化学的あるいは免疫学的に評価できる検査(今でも実は可能と思われますが一般化されていない)が考えられます(ルンバールは嫌われますが、脳生検よりはずっとましかと)。
治療の選択という観点からは、ベタフェロンについては更にその薬効を解析して、どういう機序で効果が出るのか(生物学的なエビデンス)を検討したうえで適応を見分ける必要があるでしょうが、そもそもCMSで30%程度の再発抑制率なので、あまりそこに労力をかけるべきではないかも知れません。
既にFDAの認可が下りているNatalizumab(Tysabri)はCMSで68%の再発抑制率で、脳血管関門のインテグリン阻害という機序よりリンパ球の脳内侵入を止めるという生物学的エビデンスがある(ただしPMLという致死性合併症発症リスクに加えて、最近(2008年2月7日の New England Journal of Medicineに)メラノーマ合併の症例が報告されたので、副作用をコントロールできないと既に第一選択から外されている今以上に衰退するかも知れない)。
「MSはすべて液性免疫主体で再発する」というのが正しいかどうかは今後の展開を見守る必要があると思いますが、この論点からは、2008年2月 14日のNew England Journal of Medicineで発表され、Phase2ながら約50%の再発抑制率を示した、Rituximab(リツキサン)のように、CD20陽性B細胞を殺す、という生物学的エビデンスが明確である(しかもリンパ腫領域では日本でもさんざん使われており認可のハードルが低い)薬剤を、前述の検査技術と組み合わせてより個別化に応じられる医療へつなげることが望ましいと思います。
中には細胞性免疫もちょっと混じった液性免疫というような微妙な患者も出てくるかも知れませんが、Alemtuzumab(Campath- 1H)というT細胞にもB細胞にも(それ以外にも)出ているCD52を標的とした薬剤が既にMS患者でPhase2を終えており、ベタフェロン投与患者の再発率に比して74%の再発抑制率を示した(プラセボとの比較ではないので、実質的にはNatalizumabを凌ぐ効率で再発抑制した)ことが、去年秋にチェコであったECTRIMSで報告されています。
診断基準に縛られ分類されたCMS/OSMS/NMOではなく、病理・病態生理として例えばCD20(Rituximabのターゲット)や CD52(Alemtuzumabのターゲット)が絡んでいるか否かがなるべく簡単に(例えば脳脊髄液検査等で、或いは将来的には新しい造影剤ができれば MRI等で病巣の画像と同時に)検査できるようになれば、治療の選択も合理的なものになってくるのではないでしょうか。
ちなみに、Alemtuzumabについては世界規模でMS患者に治験が計画されており、特定研究班の班長がご自身のHPにおいて(http://www.jk.med.kyushu-u.ac.jp/neuro/official/profcomment/20071118.html)、日本がこれに参加することをまんざらでもないようなコメントをしていましたので、小生としては期待しているところです。
さて、あまり再発抑制、炎症抑止に偏ると、2004年4月のAnnals of Neurology誌に掲載された「炎症は結果かもしれない論」と、連綿と報告されたCambridge大学による「炎症は髄鞘再生に必要かも知れない論」が気になってきます。再発はほとんどなくなったが、後遺障害は全く回復しなくなった、とならないか。
尤も、再発抑制率が100%になれば、初回発病の後遺症以外に加わる後遺症はなくなり、こういった心配は限りなく不要になるかも知れませんが、 100%に到達するというのは何事も例外があり、また実質的にはMSの原因が解明されない限りは困難ではないかと思われるます。また現存の患者における後遺症をどうするかと考えた場合にはやはり髄鞘再生医薬の開発が望まれます。逆に、髄鞘再生医薬が開発されれば、再発は今よりずっと不安の少ないものになると考えられます(再発しても再生させればいいや、と)。
※髄鞘再生医薬の開発の現況と展望については、また後日…。
※追記
抗AQP4抗体もまた、CD20やCD52のような病態生理を反映するマーカーとなるかも知れませんし、そうであれば、AQP4の発現を調節するステロイド(これについてはもう少し生物学的なエビデンスを蓄積する必要があると思います)や、抗AQP4抗体そのものを除去する目的での血漿交換が、個体の病態生理に即した治療として行われることになると思います。ですから、抗AQP4抗体は、ベタフェロンが効く効かないという(重要ではありますが)マーカー議論に留まるべきではなく、抗AQP4抗体が「原因」でないにしても、陽性例における症状の「悪化」に直接的に寄与しているかどうかの確認を経て、病態生理に応じた治療につなげていく必要があると思います。これが可能になれば、Mayo・東北大の貢献は多大なるもので、また実際に彼らはそれを目指して研究しているのだと思います。
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初めてお便り致します。いつも多発性硬化症に関しての詳細な情報を綴ってあり、感心して読ませて頂いております。
さて、私も12年前に多発性硬化症を発症いたしました。その後の5年間で自然治癒した症状を含めると、10回の再発寛解を繰り返し、その間はプレドニン5mgから15mgの内服を継続しておりました。
丁度その時期にベタフェロンが日本でも認可されて私も使用する事になったのですが、結局重篤な肝障害を生じて中止いたしました。
その後はDrug Freeで様子を診る事となったのですが、不思議な事にその後約5年半は全く再発を認めませんでした。
しかし、昨年の1月に視野障害、視力低下をきたして視神経炎を生じ、ステロイドパルスを2クール行うも症状改善せず入院。パルス3クール目を行って、おかげ様でその後症状改善いたしました。
この時に現在主治医の神経内科の先生にも紹介して頂きました。この時点で主治医の先生から、NMOと抗アクアポリン抗体の話を伺い、私の場合は臨床症状やMRI所見からもNMOが疑われるとのことでAQP4抗体検査を行いましたが陰性でした。
私が以前ステロイドの少量を使用していたにもかかわらず、再発を繰り返していた為に、私から希望して再び投薬はせずに様子を診る事としましたが、結局一年後の今年初めに頚髄症状が出現して入院してパルス1クール施行いたしました。以後はプレドニン60mgから漸減し現在20mgの内服です。
今回参考になればとお便りしたのは、一年前には陰性であったAQP4抗体が今回は陽性であったことです。
一年前にはパルスを3クールしていたために、その後採血をした時点では陰性とでたのかもしれません。いずれにせよ、AQP4抗体やNMOの話は、一部の熱心な神経内科の先生方に知られているだけで、神経内科の先生方全てが御存知ではないようです。
また、治療法やそれ自体の意義に関してはまだまだ不明な点も多く、熱心にかかわってくださる主治医の先生と相談しながら今後の方針を探っていく事になりそうです。
私の場合は、薬剤による肝障害をきたしやすく、その点を考慮しながら免疫抑制剤の投与が検討されるものと考えております。不安はありますが、信頼できる主治医の先生と相談しながら治療をすすめたいと思っております。
MSの患者にとって、一番の支えは家族です。家族の支えがなかったら自暴自棄になっていたことでしょう。「気力は生命力である」といつも自分に言い聞かせながら、病気と上手に付き合っていこうと思っております(もう再発しない事を信じて)。いつまでも奥様の心の支えになってください。
そうでしたか。やはり抗体検査は、この症状報告でもご紹介したとおり( http://www.ashida.info/blog/2008/02/_aqp4.html#more )、陰性でも陽性になることがあるのですね。「陰性だったから」と言って、今でもベータフェロンを無理しながら打っている人もいるのでしょうね。
何とかこういったやりとりが全国の患者達に広まる方法はないのでしょうか。ひもじい思いです。厄介な病気ですね。
家内のこと、心配頂いてありがとうございます。後1年早く抗体検査が始まっていれば、と思いますが、今でも間違ってベータフェロンを打ち続けている人たちのことを思うと何とも言えません。
私は、職場の教職員達には、「奥様に冷たい…」と言われており、どこまで「心の支え」になれるか分かりませんが、とりあえず出来ることをやるのみです。
あなたも頑張って下さい。私の感じでは、あと4,5年頑張ればなんとかなるのではないでしょうか。そんな感じがします。医者を選ぶしかありません。信頼に足る医者は全国に10人(あるいは5人)いるかいないかでしょう。
芦田様、こんにちは、はじめまして。
以前からこのブログがあるのを知って、なかなかついていけない頭に鞭打って内容を理解しようと頑張っていた者です。
私は6年前にMSと診断されました。なんとその1年前には息子がMSと診断されていました。その頃は、家族みんなが暗くなるし、2人で入退院を繰り返すし、診断された方も、家族も最悪な状態でした。唯一、旦那様が、明るく元気にしてくれていて本当に助かりました。(でも芦田様のように一生懸命研究してくれるなんてそぶりはありません。
もちろん基礎的な情報ぐらいは知っていますが。)「君たちの病気」と他人事のように言うときもあり、これは自分で知らなくてはといろいろ読んでいます。
抗アクアポリン4抗体検査2007年に二人とも受けました。息子が陰性で、私が陽性でした。
息子はベタフェロンを続けています。私は2003年から1年半やりましたが、注射部位反応がひどくて、主治医と相談してやめました。その後は、コレステロールを下げるスタチンが再発予防になるという研究発表があり、私がコレステロール値が高かった事もあって飲み始めました。
その後、1年に1回ぐらいの頻度で再発していて、2007年に入院してからはステロイド10mg~15mgになって、副作用を減らすようにと、免疫抑制剤と併用し、だんだんステロイドを減らしていこうという事になってきました。
時々血液検査をし、白血球の数を調べながらやっていこうということになりました。MSは再発しなくなったけれど、癌になってしまったなんてね・・・いやですよね。時々自分がモルモットになってしまっているような気分になるときがあって落ち込むときもあります。
でも息子と「MS戦士だね。」なんて言いながら、闘うしかないと今では居直っています。
ただ、思春期に言われた息子はきついだろうなと思っています。今では結構居直ってますけど。
また、勉強させていただきます。どうぞ、奥様おだいじに。旦那様が元気で、理解しようとしてくれる事が一番の幸せだと思います。旦那様も無理なさらないように。ありがとうございます。
この病気は遺伝しないと言われていますが、大変ですね。色々な偶然が重なったのでしょうか。しかも抗アクアポリン4抗体が陽性と陰性(息子さん)ということであれば、別の病気とも言えなくもない(原因がわからないから何とも言えない)。心配や不安も多いでしょうが、お互い頑張りましょう。