いつまで経っても家族は揃わない ― 10年ぶりに届いた手紙 2005年12月23日
今日は、明日の家内の帰宅を前に、寝室の整備。作りつけの本棚を取り去り、書斎机(しかも両袖付き!)を取り去り、ベッドも取り去ってしまった(http://www.ashida.info/blog/cat8/)。本棚と机は、18日の日曜日に知人にただであげて、ベッドも今日、宅急便が取りに来て、別の知人宅へ配送料だけを頂いてただで上げてしまった。もったいない。
今日の作業は、新しい本立ての設置と本立て側壁面(ベッドの頭が並ぶ側)の木パネル化。壁紙になっていたところを今回木パネル(45センチ角パネルで縦木目パネルと横木目パネルを交互に貼り合わせた意匠)を貼ることにした。少し壁面が豪華に見える。
しかし、私はこの準備で大変。11:00から職人さんが3人来ている。その間に、宅急便がベッドを取りに来たのが正午前。実は、今日10:00にクルマの洗車コーティングの予約をオートテック(http://www.ashida.info/blog/)にしていて、先にクルマを持ち込んでいた。私は毎年一回はコーティングをするが、オートテックは1万円でコーティングしてくれる。こんなに安くていいのかという安さだ(例のニコルhttp://www.ashida.info/blog/2005/12/post_62.html#more で頼むと6万円はする)。屋根がある駐車場ならたしかに1年間は水洗いだけで済むから、こんなにありがたいことはない。しかも4,5人で取り組んでくれるから、1時間で済む。だから人気があって、年末は2週間くらい前からでないと好きな時間にはやってもらえない(たとえ平日であっても)。私も、この日は混むだろうと思って11月末に電話をしておいた。さすがに空いていたが、いつの時間がいいのか、こう聞いてみた。
「あなた受付されているけど、実際、作業もする人ですか」
「ええ、やっていますよ」
「午前と午後なら、どちらがいいのかな。僕は午後、持っていきたいのだけど、午後一なら、昼食後でおなかが一杯。動きつらいってこともあるよね。けれど夕方になるとさすがに疲れるでしょ。一日のうち一番力を入れて洗えるのは、どの時間ですか?」
「それはやっぱり朝一番ですね」
「10:00ってこと?」
「そうです」
「眠たいけど、頑張って磨いてくれるのなら、しようがないか」
「ですね。10:00にされますか」
「10:00でいいよ。お願いします」
ということで、10:00に決めた。1時間も待ってはいられないから、自転車を借りて自宅に戻り(オートテックは、長い待ち時間を必要とするお客さんには、自転車貸し出し無料サービスを行っている。私のように自宅が近い人でなくても、蘆花公園やドンキホーテくらいまでなら遊びに行ける)、職人さんたちを待つことにした。
時間通り、職人さんたちが来られたが、こういった備え付けの設置は本当に時間がかかる(結局夕方の6時までかかった)。まず、部材の移動・配置や道具類の移動・配置で実際に作業にかかるまでに1時間はかかる。今日は私の知らない職人さんが1人混じっていたが(私の家の備え付け調度類はオリバーという家具・インテリアメーカー(http://www.oliverinc.co.jp/)の河合さんが一貫して担当している)、こういった作業は、まず職人さんに気に入ってもらうことが先決。「きょうはよろしくお願いします」
そうこうするうちに、先のオートテックから「お車のポリマー加工出来上がりました。引き取りお待ちしています」。「河合ちゃん、クルマ取ってくるから、家よろしく」「わかりました。作業続けています」。
クルマはぴかぴかになっていたが、戻ってくると、宅急便のお兄さんたちがベッドを運ぼうとしていて、「芦田さん、大変」と河合ちゃんが寄ってきた。「何よ」「ベッドの搬出途中で、廊下の電球を割っちゃったんですよ」「今、宅急便のお兄さんたちが電球を買いに行こうとしていますよ」
「ちょっと待って。この廊下の電球はただの電球ではないのよ。イオンライト(http://www.ashida.info/blog/2005/01/hamaenco_5_4.html)と言ってマイナスイオンを発生する特殊なライトなのよ。一個100万円もするよ(冗談風に)。どうしてくれるのよ」「さすが芦田さん、廊下の電球まで他人と違うものを付けて。よかった。僕(河合)が宅急便の人じゃやなくて」
そうこうするうちに、宅急便のお兄さん松田さん登場。「まことに申し訳ありません。ただいま電球を買いに行ってきますので」「いや、これはイオンライト(http://bs-soft.co.jp/eonlight/)と言って、特殊なライト。電気屋では売っていない」
「どういたしましょうか」「宅急便(ヤマト運輸)だったら全国のネットワークを使えば、すぐにでも見つかるから手配してよ。ここにその製品の箱があるから、これで探してください」
「そうですか。ちょっとお待ち下さい。会社と連絡を取ってみます」。
5分経過して戻ってきた。「お客様の方で、お買い求め頂いて…」「それで領収書を送っていただければ、なんて面倒くさいことはやらないよ」「そうですか。困りましたね」「だったらさ、今日の2万円近くのベッドの配送料から、このイオンライト代を相殺してよ。それが一番早い」。「わかりました。会社に電話させてください」
10分経過して松田さんが戻ってきた。「配送保険料やマット代金、組み立て費用などをお引きして今回7600円にさせていただきます。それでよろしいでしょうか」。一万円以上安くなった(実際のイオンライトは実売価格で4000円前後だろう)。「それでいいですよ。たいへんだね。ライト一つで赤字になったんじゃないの」「いえいえご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」。
割れる瞬間を目撃していた河合ちゃんによればヤマトのお兄さんたちは、たしかに「上のライト気を付けて」と声をかけながらマットを動かしていたらしい。「でも上部は移動の時は、よくやるんですよ、失敗」。「左右は気を付けるんですが、上はよく当たったりするんですよ」「あ、そう」。さすがに河合ちゃんも家具の移動を請け負っている人だから詳しい。
ライトは割れるし、本や引き出しなどに入っていた小物類は散乱しているし…。そもそも他人(職人さんであれ、業者であれ、お客様であれ)を家に入れる、ということはいつでもアクシデントが起こるものだ。
ところで、この書斎+寝室の大改革の際に(昨夜から)荷物を整理していたら、面白いものを見つけて思わず吹き出してしまった。
息子の太郎が、小学校の時に私の「父の日」に書いてくれた手紙だった。私にはこの手紙の記憶がほとんどないが、久しぶりに1人の家の中で大声を出して笑ってしまった(その息子はサッカー合宿でいない)。今、メールで家内に問い合わせたら小学校4年か5年の時のものらしい。
以下はその原文通りの内容。
お父さんへ
仕事、毎日ごくろうさまです。
ぼくも毎日がんばっていますが、
100点8回連続はきびしいです。
今5回ですが、社会のテストがかえってくるとその記録は消えてしまいます。
京都府を「京都県」と書いてしまいました。
でもがんばっていくので、お父さんもがんばってください。
太郎より
たしかに「100点論」というものを小学生の息子にした覚えがあって、「99点と100点とは意味が違う。99点は努力したら何とかなる点数だけれども、100点は神様にでもならない限り取れない点数。100点と99点との差は1点ではなくて100点と0点くらいの差があるのよ。だから99点で、惜しかった、なんて思うのはサイテー。99点は0点と思え」と言ったような気がする。そしてその勢いで、「100点を連続8回取ってみろ」、と言ったのもかすかに覚えている。
この手紙自体はまったく覚えていないが、しかし結構まともに、この私の話を聞いていたのか、と今頃になって知って、大笑いだ。私の笑い声がその息子もその息子の手紙を大切に保管していた家内もいない家の中で響いていた。
子供の頃の会話というのは、ほとんど覚えていないが、子供はその覚えていない会話の中で育っている。考えてみるとそれは恐ろしいことだ。オトナになってからの家庭内での行き違いというのは、ほとんどがこの記憶の落差の中で生じていると言っても良い。高笑いできる手紙だったからよかったものの、見なかったことにしよう、なんて手紙だったら…、と思うと、ぞっとする。そしていつでも、そんな(見たくもない)“手紙”(遅れて来た手紙)が家の〈中〉のそこかしこにあることを拒めはしない。
子供はいつも親の無意識の中で育っている。今日も朝のテレビで、子育ての母親が、お父さんを「あなた、子供の近くでたばこなんか吸わないでよ」「咳をすると風邪が移るでしょ」なんて大声で(しかも本気で)怒っている。こんな会話を幼児の頃から聞かされ続けた子供がまともに育つわけがない。子供は両親の会話(発言の内容ではなくて、発言のやりとりのモード)を聞いている。〈たばこ〉や〈風邪〉という単独の事柄よりも、はるかに影響力があるのが両親の会話の風土だ。この風土こそが親にはいつも無意識なままに留まる。子育てを意識している言葉は、実際には子育てにはほとんど影響を与えない。そもそも〈子育て〉なんてものは存在しないのだ。
明日は、クリスマスイブ。久しぶりに3人が揃うが、揃ってもさまざまな断層のある3人がそこにいる。家族が“揃う”なんてことは、もともとあり得ないことなのかもしれない。そう言えば(よく考えれば)、「クリスマスイブも、大晦日もどちらも自宅にはいないけど」、と息子が入院中の家内にメールしていたらしい。私は即座に「大晦日だけは許さない」と伝えろ、と言っておいたが、「自分で言ってよ」と家内に言われた。家族内のコミュニケーションは本当に揃わない。何が「お父さんもがんばってください」だ。
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