Ample make this bed.(エミリィディキンソン) 2004年09月26日
ディキンソン詩集を岩波版(対訳ディキンソン詩集http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/5/3231010.html)、思潮社版(ディキンスン詩集http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=00953139&volno=0000 、http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4783725012/qid=1096207919/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-8962577-3917036)、双方とも読んだが(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=344)、亀井俊介(岩波版)の解説も新倉俊一(思潮社版)の解説もくだらなかった。それに、二つの詩集共に、この Ample make this bed の詩がない。こうなったら、私自身でこの詩を解説するしかない。
●Ample make this bed.
Ample make this bed.
Make this bed with awe;
In it wait till judgment break
Excellent and fair.
Be its mattress straight,
Be its pillow round;
Let no sunrise' yellow noise
Interrupt this ground.
●この詩の若干の“解説”(私は詩そのものはあまり読まないが)
sunrise’ yellow noiseは、世間の喧噪(あるいは世間そのもの)とほとんど同じことを意味している。このnoiseという言葉に対立して使われているのが、excellent and fair な judgementという言葉。
日常的な(=この世の)善悪や正否、名声や不名誉、人間的な幸不幸、そういったもの(これらがnoiseと言われている)を一切超えて(excellent)、世俗的、社会的な偏見や偏りのない公正な(fair)審判が下る。その審判の時空(bed、ground)は、どんなそういったsunrise’ yellow noiseにも邪魔(interrupt)されはしない。
邪魔されはしないことの様相が、眠りの比喩(bed、mattress、pillow)、しかも深い眠りの様相(ample、with awe、straight、round)と共に語られている。
sunrise’ yellow noiseに耳を傾けてはいけない、耳を傾けないように、bedを「ゆったりと広く(ample)」「畏敬の念をもって(with awe)」準備し、「マットをまっすぐに伸ばして(straight)」そして「まくらもまたふっくらと(round)」用意しなさい。そうしてsunrise’ yellow noiseに惑わされないように深い眠りにつきなさい。ディキンソンはそう言っている。
最後のthis ground(=this bed)は、その意味では、アマーストのどこかの墓地を指しているのかもしれない(ディキンソンの詩には、墓地や死を隠喩するものが多い)。曙光に惑わされない墓地の静寂。sunrise’ yellow noiseに惑わされないように(yellowは、yellow sunriseでそれ自体朝日の光を意味するが、キリスト教的には、yellowは、ユダの着衣の色を意味し、臆病、卑怯、精神の退廃などを意味する場合もある)、お墓の中に眠る死者のように深い眠りにつきなさい。ディキンソンはそう言っている。
一方で、bedを周到に用意しなければならないほどに、sunrise’ yellow noiseの誘惑は強い。死者の深い眠りのように眠るすべ(ample、with awe、straight、round)を準備することなしには、真の審判は訪れない。眠るように心を静めること、それが、Excellent and fair な審判が下る条件なのである(そうやって、ソフィーは深い眠りについた。深い眠りのみが、審判を導くかのように深い眠りについたhttp://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=340.334.2)。ディキンソンはそう言っている。
みなさんも、sunrise’ yellow noiseに惑わされるときには(ほとんどわれわれの日常はディキンソンの言うこのsunrise’ yellow noiseに包囲されているが)、静かに、この詩を暗唱しましょう。こころが落ち着きます。
Ample make this bed.
Make this bed with awe;
In it wait till judgment break
Excellent and fair.
Be its mattress straight,
Be its pillow round;
Let no sunrise' yellow noise
Interrupt this ground.
※ついでにこの詩に似た詩一編を選んでおきましょう。
魂は自分の社会を選ぶ ―
それから ― 扉を閉ざす ―
お偉い多数派には ―
もう姿を見せぬ ―
動じない ― 馬車が来て ― 簡素な門の前で ―
止まるのに気づいても ―
動じない ― 皇帝が靴ぬぐいの上に ―
ひざまずいても
私は知っている ― 魂が大勢の中から ―
ひとりを選び ―
それから ― 石のように ―
関心の弁を閉じるのを ―
(『対訳 ディキンソン詩集』亀井俊介訳 岩波文庫87頁より)
※このブログの今現在のブログランキングを知りたい方は上記「教育ブログ」アイコンをクリック、開いて「専門学校教育」を選択していただければ今現在のランキングがわかります。
この記事へのトラックバックURL:
http://www.ashida.info/blog/mt-tb.cgi/87