政治家の〈語り〉とワールドサッカーオマーン戦 2004年02月19日
昨日は、ある代議士の「励ます会」に、ご本人にじきじき「招待」されて(ワールドカップ予選が重なっているので「絶対に無理」と心を込めて真剣に断ったのだがダメだった)、はじめて、この種の会合に“参加”した。会場は、1000人を超える大盛況。私は人並みを避けてむしろ演台のマイクからほんの4,5メートルの真ん前に腕組みしながら陣取った。代議士とも合図をし合える距離だった。
これは、思いの外いい勉強になった(ワールドカップ予選並みの勉強ができた)。政治家の祝辞というものは、祝辞中の祝辞だ。元総理を始めそうそうたるメンバーが4人,5人と次々に10分おきくらいに祝辞を述べていくのだが、これは祝辞のバトルとでも言うべきもので、聞いているこちらがどきどきするくらいにうまいヘタが見えてくる。「ほー、そう落とすのか」という展開が、(先を見ようと思えば見える)書き言葉よりははるかに緊張感がある。政治家の語りというのは、(文芸批評などと違って)大衆評価(大衆にもわかる優劣)の極限なのだ。ここでいう〈大衆〉というのは、〈知識人〉の対立概念なのではない。演説を〈聴く〉人間はすべて〈大衆〉なのだ。
この大衆評価の鍵を握っているのは、事例(たとえ)の使い方である。
1)ことわざや書物の言葉の使い方
2)エピソードの使い方
3)個人的にしか知らないことの暴露
4)世間の話題
5)自分の経験
ざっと、五つの内容を引きながら(事例にしながら)、言いたいこと、伝えたいことを聴衆の目を見据えてしゃべり続ける。演説や祝辞の(大衆にでもわかる)うまいヘタは、事例が事例のままにとどまって、実体化しないというのが(ただ単にネタにとどまって、外面化してしまう場合)、ヘタな場合の演説になる。「へぇー」とうなる場合というのは、事例がそのまま伝えたいことに飛躍する瞬間だ(事例自体が事例のように見えて実は主題だったというように)。「励ます会」などの場合は、ヘタな演説(祝辞)というのは、励ます相手をネタにして、自分の思想を述べる場合。これはダメ。相手に言及することがそのままその本人のエピソードでもあるようにして一体化しなければ、祝辞にはならない。これは大変な芸だ。
文芸批評(あるいは〈批評〉)でも、事例主義とテマティスム(主題主義)とはいつも対立する方法論だが、これは(所詮)書き言葉の上での方法論的な対立にすぎない。つまり方法上の選択の余地のある(時間猶予のある)対立にすぎない。
しかし政治家の演説については、その対立(事例主義とテマティスム(主題主義)との)の度合いが、そのまま演説の優劣を決めてしまう。大衆的な規模で(有無を言わせず)即決してしまう。こんなことをよくもまあ毎日やってられるものだ。
この場での演説の優劣は、そのまま政治の世界の階級(総理、大臣、幹事長 … というように)と直結していた。つまり、語れない政治家は成功しない。それが、私の収穫だった。
※ところで、「励ます会」と同じ日にしっかりと録画をして、50分遅れで生放送のように見たワールドカップ予選オマーン戦(http://news.fs.biglobe.ne.jp/special/jleague.html)について、一言。私は前々からサントス(http://www.go-alex.net/index.html)が許せない。
後半戦の最後半でもう時間もないというときに、引き分け狙いのオマーンの選手が時間稼ぎのように日本選手とせりあってマウンドに倒れたとき(倒れて動けなくなったとき)、中田がそれを見てわざと(国際的なルールに沿って)ラインの外にボールをけり出した。それを三都主がわざわざ中田を呼んで文句を言っている(テレビカメラはなぜかこの様子をしばらく伝えていた)。
たぶん「時間もないのに、なんでそんなバカなことをするんだ」とでも言っていたのだろう。中田は、みんな必死で戦っている大事なときにそんなことで怒ることこそ、ばかげたことだ、とでも言うかのようにいなしていたが、たぶん心の中では「殺してやろうか、三都主」と思ったに違いない。私は中田が好きではないが、このときの中田がすごくおとなに見えて、なぜか泣けてきた。
それにしても私が三都主を許せないのは、このことなのではない。彼は、アジア人(日本人を含めて)をバカにしている。彼は、アジアのチームとやるときには、必ずボールを長い時間持っている。くだらない足技で、自滅したりもしている。
ところが、ヨーロッパのチームと戦うときには、極端なくらいにボールを持たずにすぐにパスする。「井の中の蛙」が「大海」をよく知っているかのように、すぐにパスをする。三都主は差別の対象にしか、自分(自分の技術)を見いだせない三流のプレイヤーなのだ。日本選手たちよ、三都主なんかにパスをしてはいけない。
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