続編・おいしい牡蠣フライの作り方 2003年12月28日
大学院時代の後輩から、「牡蠣フライ」記事(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=246.124.43)についての返信がありました。「高橋研」とあるのは、早稲田のフランス文学科教授、故・高橋允昭先生(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp&field-author=%E5%85%81%E6%98%AD%2C%20%E9%AB%98%E6%A9%8B/250-2884862-8301052)の研究室のことです。高田さんは、ソシュール(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB)の研究者で、現在、早稲田の第一文学部・比較文学研究室で仕事をしています。彼の言語哲学よりは、下記の「牡蠣フライ」の記述の方がはるかに起伏に富んでいて面白い。
高田さん、高橋先生がお亡くなりになって、もうここ2、3年集まっていませんね。私は、彼が亡くなったその日に宮川(http://www.terahouse-ica.ac.jp/smiya/index.htm)と一緒に四街道の自宅にいち早く駆けつけましたが、なぜか彼の息子(現在、早稲田の文学部助教授の息子)に恨まれていて追い返されてしまいました。葬式にも行くことができませんでした(これはちょっとした話題になりましたからあなたもご存じでしょう)。いつの世も恩師とその弟子との関係は複雑なものです。しかし、彼の追悼文を書けるのは私しかいないと今でも思っています(いつか書こうと思っています)。
高橋先生と、その息子と3人でデリダが初来日したときに京都に同行し、私の母方の実家の店(http://kyoto.kibune.or.jp/fujiya/)にデリダを迎え、懐石料理をおいしそうにデリダが食べていたことを今でもよく覚えています。またその高橋先生の周りで本当に親しかった人たちと集まりましょう。あなたが、『芦田の毎日』の読者だなんて意外でした。最近のあなたの言語論を聞かせて下さい。また目一杯“攻撃”しますから、しっかり勉強しておいてください。
芦田様,
「高橋研」におりました高田です。『芦田の毎日』,楽しみに読んでおります。
牡蠣フライの作り方,自己流ですが簡便な作り方・留意点を申し述べます。
今書き終えて,こんな長文になるとはとびっくり。少し冗長ですがお暇なときにご覧になってください。
1 まず大事なことは,牡蠣フライ以外の仕込みはすべて終わらせておくこと。揚げてからキャベツを切ったのでは遅すぎます。ビール,ご飯も言うに及ばずで,臨戦態勢,待つは牡蠣フライのみの状態で揚げに入ります。
2 牡蠣フライを揚げようというぐらいですから季節は冬ですよね。でしたら牡蠣はあらかじめ冷蔵庫から出してほおっておきます。あとで短時間で揚げるために,芯を常温に戻しておくのが重要です。ほおっておくには水を切ってざるで(ポイント)。お肉を焼くときも,もっとも大事なことは,あらかじめほおっておくことですよね。
3 キャベツは細目に千切り,水にさらしてざるに上げてよく水を切り,「ざるに入れたまま数十分置く」としゃきっとするようです(ポイント)。一般に生野菜はたべる数十分前に水切りしておくとよいです。洗い立ては水っぽい。手順の悪い素人料理では,生野菜を先に仕上げれば自動的に段取りがつきます。
4 タルタルソースがお好みならインチキな作り方があります。タマネギをアラメのみじん切りにしてマヨネーズをぶち込んで,かき回す。少量の酢。それだけです。あれば黒胡椒は挽きたてを。檸檬もあれば搾る。(高田牧舎のタルタルソースなど油っぽくって食べられません。)タバスコを垂らすのも良。我が家は子供が小さいのでタバスコは個人扶持。
5 牡蠣は生ガキが好きな人なら薄めの酢で洗うのもありです。大根おろしもレモンも一手間多いし,いつもあるとは限らない。酢ならいつもあります。
6 揚げ物の教科書には必ず出てくるバットですが,本当にみんな使っているのでしょうか。私は牡蠣に限らず最初の工程では,ビニール袋に全部入れて,小麦粉をやや大量に入れそれをシャカシャカと振ります(ポイント)。小麦粉を多めにすることで牡蠣をペーパータオルで拭いて水気を取るという工程も要らなくなります。洗い物も少なくなる。難はビニルの無駄と,小麦粉の無駄。小麦粉はあくまで多めで。ここが少しもったいない。もっともバットで小麦粉を付けると十中八九上の方法より小麦粉を無駄にすると思います。ちなみに卵はみそ汁の腕,パン粉は深めのタッパーを使います。パン粉の飛び散りを防ぐのが後始末への配慮。
7 溶き卵は水で薄めることで卵をけちることが出来ます。卵はころもつけの後半で大抵足りなそうな感じになって来ますが,ここにきて一玉割るのはもったいない。序盤に水で調整しておきます。したがってやはり水を拭く工程は要らない。
8 小麦たっぷり,卵べったり,パン粉は多めに。ちょっと押してみたりして過分につけます。私はパン粉の着いた牡蠣を並べた上に皿に残ったパン粉をあけてさらに押したりします。
9 いよいよ揚げです。やや熱めの油(はかったことが無いので定量化できません。箸先がチリリとするぐらい。だめかな。衣のかけらを投げ入れると一瞬で浮いてくるぐらい。沈むようではぬるい)で短時間。牡蠣を投入した順番を覚えておきます(ポイント)。輪を描くようにひとつづつゆっくり入れていって, 一周したらその時点で始めの牡蠣を取り揚げて,次を入れる感じにすればよいのです。したがって牡蠣が一周八つ並ぶ鍋なら20秒間隔で入れていって,最初の牡蠣を取り揚げるタイミングは180秒後(植木算ですね。九つ目を計算に入れています)。この180秒という揚げ時間はいかにも短いようですが「ちゃんとほおっておいた」牡蠣ならこれできっちり火が通ります。大きめの牡蠣なら次の牡蠣を入れる間隔を長め(せいぜい二十秒+)に取る。ひとたび鍋に入ってしまえば後は判らなくなりますから,時間調整は「入れ」で行うしかないのです。
それから牡蠣は投入する際に,頼むぞ,という感じでたなごころで一握りします。意味あるのかな。マイ・ルールですね。衣をなじませるとか理屈はつきそうですが。
10 この牡蠣投入間の二十秒ずつを,仕込みにつかった食器の洗浄に当てる。一アイテム洗ったら次の投入。そんな感じです。食器が足りなくなるので調理台のパン粉をふき取ったり,シンクの中のものを片づけたりします。鍋の上で揚がるのを待っているから油あたりするのです。したがって野菜天とか忙しい揚げ物を作ると製作者が油あたりするのは避けられない。精進揚げはつくるものにはむしろ「油っこい」料理ですね。
11 取り上げるときにきっちり油を切ります。菜箸よりトング。よく振って網の上に置く。荒めの網がいいです。ペーパータオルにいきなり置くと設置面がべったりしがちです(ポイント)。我が家では一番安いタイプのガスレンジを使っていますが,この魚焼きグリルが便利で,あれを引き出してそこに置きます。魚焼きグリルを汚しておくとこういうときにがっかりです。
12 必要なら先の投稿にあったように二度揚げでとどめを刺します。が,私は浅めの揚げが好みなので,油は熱めで1発揚げです。このやり方だと初期のものほど強めに揚がるので,最後にガス全開で温度をぐいっと上げて一呼吸,最後の「八つ」はポイポイ一気にとりあげてしまいます。いきおい最後の一つはずいぶん揚げが甘くなりそうですが,なぜかそういう実感はありません。後のものほど揚がりが早いのではないでしょうか。
13 揚げの前半で妻子を呼んで,初期のものはつまみ食いさせます。多分,これが一番美味しい。揚げが甘い(牡蠣の中心がぬるい)のは最悪ですが,そのチェックにも使えます。もっとも「ほっておく」工程を大事にすればそういうことは殆どないデス。
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