「ユビキタス」社会と「P2P」、そして「XML」 2003年06月05日
私の友人の一人から、私の「ユビキタス」論(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=160)について、以下のような返信がありました。私よりははるかに専門的で有益な指摘なので、ご紹介します。私ならば、原稿用紙100枚くらいの社会学的な論文が書ける楽しい内容をあっさりと説明してくれました。勉強させてもいらいました。
彼は、私が大学時代のアルバイト先で英語(中学英語)を教えた教え子です。慶応の大学院へ進み、流体力学を専攻していました。今は、○○○○○に勤めていますが、それは言えません。ところどころ、専門用語が出てきますが、自分で調べてみてください。簡単に調べる(検索する)ことができるのも、インターネット時代です。でも専門用語がわからなくても充分にわかりますよ。
●返信(1) ― P2Pの世界
うちもBB Phoneに入っています。
「芦田の毎日」(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=160)に書かれているように、Yahoo BBのADSLモデムにはルーター機能がないので、うちではモデムの後ろにルーターをかまして、複数のPCから同時にインターネットにアクセスできるようにしています。
最後の方で「ユビキタス」について触れていますが、これなんか芦田先生の考える「ユビキタス」に(少し違うかもしれませんが)近いものだと思います。
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/2949/
これは、最近流行のP2P(Pear to Pear)型のファイル交換システムです。
例えばAさんがFというファイルをダウンロードしている場合でも、F以外のファイル(の断片)も自分のPCにダウンロードされているかもしれません。そして、どこかのだれかが、そのファイルの断片を必要としていれば、Aさんの知らないうちにそのデータがダウンロード(Aさんから見るとアップロード)されているかもしれません。
つまり、世界中の無数のPCが1台のPC(ファイルサーバー)であるかのように振舞っていて、自分が必要なファイルがあれば必要なときにそれをダウンロードできるようになっています。ただし、すべてのPCが24時間接続されているわけではないので、いつでもダウンロードできるとは限りません。また回線の速度にも依存するので、大きなファイルであれば、数時間以上もかかることもあります。
このシステムを活用して、ソフトのオンライン販売をしている会社もあるみたいですが、もちろん違法な使い方をしている人たちもいます。最近のテレビで予告されている映画自体も行き交いしているようです。その様をみるとブロードバンドのすごさが実感できます
●返信(2) ― XMLの世界
「芦田の毎日」(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=160)の中で触れられているアプリとデータの一体型というのは、JavaというよりはむしろWebアプリケーションの特徴だと思います。
今後はもう少し進んで、手元にあるデータを開くのに必要なアプリケーションが手元にない場合には、オン・デマンドでインターネットから取ってくる、ということが可能になります。つまり再び、データとアプリが別々に存在する(できる)ことになります。これを実現するための技術がWebサービスです。
また、現在のWindowsのファイル・システムは、ファイル名(と日付)だけでしかファイルを区別していないので、検索もファイル名でしかできません。コンテンツで検索しようとすると、非常に大変です。ファイルには、テキストや画像、音声など、さらには各アプリケーション別にいろいろなデータ形式があるので、すべてのコンテンツを検索できるようにするには、すべてのデータ形式に対応する必要があり、それは不可能です。今後はファイルシステムが現在のデータベースのようになり、「ファイル」という単位ではなくデータそのものが格納されることになりそうです。検索するときもコンテンツで検索します。
一方、XMLは「共通データ形式」という評価が固まっています。その目的は、まさに芦田先生の言うように「ユビキタス」です。今までは、ワープロ文書はWordでしか、表はExcelでしか開けませんでした。すると、例えば社内の届出(住所変更などの)などは例えば次のような処理が強いられることになります。
(1)社員が指定の書式の文書で、新住所を会社に提出します。
この文書の雛形はWord文書かもしれないので、PC上で住所を入力して印刷します。
(2)届出を受け取った会社(人事部)は、そこに書かれた住所を社内の人事データベースに反映させるため、端末から入力します。
これは、Wordの文書データ形式とデータベースのデータ形式が異なるために、その変換を今までは人間が行っていた、ということを表しています。
これが、共通のXMLというデータ形式にすべてのアプリケーションが対応すれば、Wordで入力したデータをそのままデータベースに登録できることになります。データを入力する人と、データベースに登録する人は同じ人である必要はありません。
今までも、テキスト形式にすればアプリケーションの垣根を越えてデータを交換できましたが、それとXMLの違いは、XMLではその中のデータそのものに意味づけされているということです。例えばこの値は住所だ、などです。テキスト・ファイル内のデータは「意味」を持っているわけではありません。
したがって、XMLの方向性は、まさに芦田先生が指摘しているように「データ形式の統一」と考えていて間違いないと思います。この秋に出てくるOffice2003では、WordやExcelなどのデータを完全な形でXML形式で保存できます。またそのようにして保存したXMLファイルを開けば、docやxls形式のときとまったく同じ状態が再現されます。
ファイルシステムのデータベース化と、XMLによるデータ形式の一元化が実現すれば、「ファイル」という単位ではなく、コンテンツ中心の世界が実現できそうですよね。(返信・終わり)
●芦田・付記
なお、こういった高級な議論のあとで、こんなことに触れるのは場違いかもしれませんが、その私の「ユビキタス」論(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=160)の中で、明確な誤りが一つ。中途半端な誤りが一つ。計二つありました。
一つは、『シグマリオン?』(http://www.wince.ne.jp/hpc2000/sigmarion.htm)では、SONYの『WEBPOCKET』(http://www.webpocket.net/ja/index.html)』は利用できないことがわかりました(これは、重大な事実です)。SONYに電話をかけて色々TRYしてもらったり、DOCOMO中野坂上店のスタッフを中心に試行錯誤して頂きましたが(私も加わって)、やはりダメでした。IDとパスワードでWEBPOCKETの中には入れ、ファイルとフォルダの階層構造もすべて見えるのですが、最後の段階でファイルが開きません。悔しい思いをしました。
こうなったら、今月6月21日発売予定のザウルスSL-C760(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/030516.html、http://digit.que.ne.jp/visit/index.cgi?Linux%a5%b6%a5%a6%a5%eb%a5%b9%2fSL%2dC750%a1%a2760%a4%ce%b3%b5%cd%d7)に期待するしかありません(今のザウルスSL-C700もまた、IDとパスワードでWEBPOCKETの中には入れますが、直前で「メモリーが足りません」ということになります)。SL-C760はどうでしょうか。でもダメだろうな。
もう一つの間違い。MY YAHOOは、「別にYAHOO BBの会員であろうがなかろうが、誰でも使えます」とのこと。私が言いたかったのは、誰でも使えるMY YAHOOのメールには、いつもわけのわからない広告が金魚の糞のようについてくるが、会員であれば、もう一つのアドレスを得ることができ(@ybb.co.jp)、このアドレスでやり取りする場合は、広告は付かないということだった。スミマセン。言葉足らずでした。
この記事へのトラックバックURL:
http://www.ashida.info/blog/mt-tb.cgi/214