症状報告(12) ― 料理、受付、再退院 2003年05月01日
料理の腕前の本質は素材と味付けだと思っていたが、最近はそうではないような気がしてきた。いかに温かいものを温かいままに食卓に出すかどうかがすべてだ。
たとえば、“ステーキ”と“それに添えるもやし炒め”と“バター明太子ほくほくポテト”と“サラダ”を食卓に出すとき、どういった順番で作れば、食卓上一番暖かい状態(サラダはいいとしても)でそれらを食べることができるのか。
今回の自炊(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=135.124.4)で、この組み合わせを3回体験しているが、毎回、この組み合わせは気が狂いそうな状態になる。もやし炒めが(取りかかりの)最後だが、この最後は、ステーキの最後とほとんど同時でなければならない。それを気にしていると今度はジャガイモの柔らかさが気になる。ほくほくポテトにするには、まるごとのジャガイモを入れるので、カレーのジャガイモのようには簡単には柔らかくならない。まるごとのジャガイモをゆでるには思ったより時間がかかる。かといって柔らかくしすぎてもダメ。それに最後のバターと明太子をジャガイモの上に上手に置くのもむずかしい。切れ目の入れ方を失敗するとジャガイモがバラバラになる。そうこうするうちに、ステーキの肉ともやし炒めが冷め始める。これらすべては温かくないと話にならない。私自身が(ただ単に作り手ではなく)食べようとしているわけだから、余計に緊張する。
とはいえ、息子と私の二人分を作るだけでもこれだけ緊張するのだから、4人家族、5人家族ということになると、よほど大きなガスレンジがないと不可能なことだ。一家の主婦は、どうやって、暖かい食べ物を食卓に並べているのだろう。私にはアクロバットとしか思えない。
こういった〈並列処理〉というものに男は慣れていない。受付仕事や事務仕事というものが大概のところ女性であるのは、それらの仕事がたいていは〈並列処理〉を強いられるからだ。電話は鳴る。面前の顧客応対はしなければならない。ルーティンワークもある。突然の仕事を勝手な男性社員から依頼される。これらを“論理的に”完結することは不可能で、まるでキッチンの〈並列処理〉を行うかのように、すべてを同時進行しなければならない。それが受付業務というものだ。私は、受付仕事の人材を採用するときには、「あなたは料理を作るのが好きですか」と必ず聞くことにしている。
料理を上手に食卓に出すことができる人は、〈並列処理〉ができるからだ。論理的(リニア)に考える人は、受付をやらせると一週間も経たないうちに頭がパニクッて音(ね)をあげる。「私だって、自分の仕事があるんだから」などと言い出す。この女性は、たぶん料理も下手なのだ。食卓にはさめたもやし炒めしか出てこない、と思った方がいい。
追伸:ところで、家内の再退院が決まりました。5月3日だそうです。
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とても共感してしまいました。
そうです、主婦はおいしい料理を温かいまま出すことに全力を尽くします...笑
そして、温かいうちに食べ始めてほしいなぁと、切に願っているんです...www