最後の竹中批判(もうこれで終わりにしておきます) 2003年03月05日
この年度末の忙しいときに、どうしてこうなるのでしょうか。まだまだ続いていますが、もうこれで止めます。
●まずは落合さん
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84. Re^11: あしたの経済学 落合 2003/03/04 (火) 19:51
>こんなところで「一押し」するような本ではありません。
おっしゃっている事がイマイチわからないですが、
分かる範囲でコメントを3個。
1.「一押し」は「一推し」のつもりの誤字でした。
2.デフレギャップの存在が問題という事を主張されていますが、
それって当たり前っていうか、
テーマそのもので、議論の余地ないんですけど・・・
3.R・クー氏が、デフレギャップ克服のため今こそケインズ政策、
と主張されていることは、水野氏をご存知なくらいだから
当然知ってますよね。
クー氏は、赤字国債は未来世代への負担先送りにはならない、
とその著書の中で説明していますが、もしそうであったとしても、
現実的かつ具体的な返済計画を伴わないこれ以上の財政出動は、
国民の将来不安を一層かきたてる事で、
かえって需要を萎縮させるリスクを持つと思いますよ。
それについて私の知る限りではクー氏は何もコメントしてない
です。
それから、効果的な国家投資が何なのかについて、
それを決めるのは最後は政治という点に限っては
異論無いというか、当たり前でしょ。
さて、ところで・・・
経済問題で私が一番感じるのは、やはり将来不安。
竹中さんが何を言おうが、日銀が何をしようが、
国債の償還にまっとうな見通しが見えてこない限り
私の財布の紐が緩むことは絶対ありません。
「合成の誤謬」の生き証人の私です(笑)。
結局最後はインフレ起こして楽になるしかないやろな、
というのが、私の回りの大方の予想ですが、
もしそんな事になるぐらいなら、
今すぐ消費税をバイにしてでも財政再建やってもらいたものです。
ただし消費税の特例措置撤廃と
法人税の外形標準課税への変更が先だと思いますけど・・・。
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85. Re^12: あしたの経済学 ashida [URL] 2003/03/04 (火) 22:54
「現実的かつ具体的な返済計画を伴わないこれ以上の財政出動は、国民の将来不安を一層かきたてる事で、かえって需要を萎縮させるリスクを持つと思いますよ」(あなた)。
「今すぐ消費税をバイにしてでも財政再建」(あなた)
この二つの文章で、落合さんも「はんちゃん」と同じ立場に立っていることがはっきりしました。国家財政の再建って、一体誰のためにやるのですか? もしそういった再建が多くの失業者を生むとしたら、それは誰のための、何のための再建なのですか。あなたもまた国家財政を一企業、一家計のお金のやりくりとしか考えていないのです。健全財政か破綻財政か、ということを企業経営の盛衰と同じようにしか考えていない。最初の文章なんかは武富士のローンを個人が借りる際の注意書き(「借りすぎに注意しましょう」)そのものです。それがおかしいと何度も言っているのです。国債が、個人ローンや企業の借金となぜ同じなのですか。私なら、こう言い換えます。「今すぐ消費税をバイにしてでも公共投資」。取り上げて(借りて)、同時に返すのが税金や国債です。国家財政は基本的にプラスマイナスゼロです。
「むしろ、デフレ対策は、デフレに対応できる経済にいかに仕組みを変えていくかが問われており、値段が下がっても下がっても利益を上げられる新しい産業を作れるように支援することが求められている」(水野和夫:三菱証券チーフエコノミスト)。
バカなことを水野は言っています。あなたが「一推し」の水野和夫のように考えると(この思考は、シュンペーターの「創造的破壊」理論 ― たとえば、http://www.bbt757.com/servlet/ShowSummary?prg_id=115を参照してください ― のまねごとにすぎないのですが、日銀の速水優http://www.boj.or.jp/about/hayami.htmも同じ考え方です)、労働者は「値段が下がっても下がっても利益を上げられる新しい産業」のためにどんどん失業していきます。この失業者問題を無視して国家財政論に適用したのが、「今すぐ消費税をバイにしてでも財政再建」という議論なのです。失業者を残して、財政再建してどうするというのですか? 財政の目的は、そもそもが働く意欲のあるものに(その能力の如何を問わず)仕事を与えることです。それに対して能力主義的な経営・労働論がシュンペーターの「創造的破壊」理論です。これは国家論ではなく、狭小な企業論・経営論に過ぎません。
●次は「はんちゃん」
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80. 公共投資 はんちゃん 2003/03/04 (火) 01:58
ashidaさん、こんにちは。「バカを言ってはいけません。」からはじまっての「断定調の歯切れ良い文体」はテンポも良く面白いのですが、どうも思考も断定調で、あまり深く考えた発言ではないな、と思えてきました。
公共投資をスタート点にして連鎖して経済が回る、という考え方こそが、一番問題になっていて、そこから「構造改革しよう」ということで新しい構造を模索しているのに、なにひとつ解決への新たな糸口を導き出していないような気がしますが、なにやら強気ですね。(笑)
ashidaさんは、専門学校の校長先生というお立場のようですから、いつも言いっぱなしの習慣になっているのかもしれませんが、頭ごなしに落合さんの意見を「バカ」扱いするのはマナーとしてもおかしいし、そもそも「バカ」といえるほどの落ち度があるとは私には思えません。(ashidaさんの意見には逆に破綻した点がたくさん見受けられるのですが。)
しかし、いずれにせよ、ashidaさんの書き込みの刺激は面白い問題を提起してくれるし、真剣に考えよう、という気にさせるので、才能のある方だと思います。ぜひ、批判だけでなく、たとえば明日国家の運営を任されたとしたら、各方面になにをどうやって指示して、どうやって国を動かしていくか、という「国の動かし方」について論じて欲しいような気がします。
人の気持ちをひきつけないと、人は動きません。「利権の渦」と簡単におっしゃいますが、利権というインセンティブを動機に人・モノ・金が動くわけで、利権に無関係に人モノ金を動かすことは簡単ではありません。いったいどうやったら「利権の渦」と無関係に「効果的な投資」が可能になるのか、という点も踏まえて、そのあたりを説いて欲しいような気がします。ちなみに、竹中さんは、うまく国民のやる気を引き出すような語り口を工夫していたので、私はその部分に感心しましたが、各論の是非がわからないので、ここでうさみさんを含めてお尋ねしているわけです。
ashidaさんは、この掲示板の内容を著作権者におそらく無断で転載http://www.ashida.info/jboard/jboard.cgiし、そこで「誰でもかかってこいという感じです。」とおっしゃっていますが、そのお言葉に甘えて、また書き込みしてしまいました。不勉強ゆえにわからないことだらけなのですが、よろしくお願いします。
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81. Re: 公共投資 ashida 2003/03/04 (火) 22:51
「ashidaさんは、専門学校の校長先生というお立場のようですから、いつも言いっぱなしの習慣になっているのかもしれませんが、頭ごなしに落合さんの意見を「バカ」扱いするのはマナーとしてもおかしいし、そもそも「バカ」といえるほどの落ち度があるとは私には思えません。(ashidaさんの意見には逆に破綻した点がたくさん見受けられるのですが。)(あなた)
「たくさん」(破綻)と言っている割に、何一つ内容的な話をせず、私の職業について詮索されるあなたのマナーをむしろ私は疑います。「掲示板」で実名を使っている私に「無断転載」なんてあり得ないじゃないですか。私は、○○さんを「バカ扱い」したことなど一度もありません。○○さんの言っていること(=内容)をバカ扱いしただけのことです。“バカな人だな”、ではなく(それは失礼というものです)、「バカを言ってはいけません」です。私は「はんちゃん」が誰であろうが、落合さんが誰であろうが、どうでもいいのです。内容についておかしいと言っているだけです。そもそも「校長先生」は「いつも言いっぱなしの習慣」を有しているなんて、私の「断定」よりははるかに穏やかな言い回しで書かれていますが、「内容」ははるかにグロテスクで下品です。
「人の気持ちをひきつけないと、人は動きません。「利権の渦」と簡単におっしゃいますが、利権というインセンティブを動機に人・モノ・金が動くわけで、利権に無関係に人モノ金を動かすことは簡単ではありません」(あなた)
バカを言ってはいけません。「利権の渦」というのは、われわれ“下っ端”の議論であって、小泉首相の一言(いわゆる「決断と実行」)で済む話です。それが一国の首相(の孤独)というものです。首相とはその国でもっとも孤独な人のことをいいます。フセインなんて(そしてブッシュや金正日も)、今最高に孤独なのではないでしょうか。
「竹中さんは、うまく国民のやる気を引き出すような語り口を工夫していたので、私はその部分に感心しましたが … 」(あなた)
竹中の最悪は、何か。はっきりしています。彼は財政緊縮派に向かっては、効果的な公共投資や規制緩和を、公共投資派に向かっては緊縮財政を、と使い分けているだけの“理論”しかない経済学者なのです。それが彼の“わかりやすさ”の正体です。この“わかりやすさ”は、結局のところ何も決断できない小泉の“理論”的支柱(“ああ言えばこういう理論”、そう言えば、オウム真理教の“ああ言えば上祐”は早稲田でしたが、竹中は慶応の上祐というところでしょうか。竹中の出身大学は一橋ですが)です。
たとえば、「骨太の方針」。「方針」なんて言葉は、すべてを先送りすると言っているのと同じことです。その上その「方針」が「骨太な」訳ですから、もっと何もしないといっているのと同じことです。そもそも小泉が「ハンセン病」訴訟に見事な結論(決断)を出したとき、それは「骨太の方針」があってのことでしたか? 決断(政治の本質)は、〈方針〉(あるいは、“ああ言えばこういう理論”)というものから最も遠いところにあります。
もう一つ、あなたは私よりかなり国家や政治に関心がありそうなのですが、私が「明日国家の運営を任されたとしたら」、やることは二つしかありません。都市圏に対する公共投資と規制緩和です。国債がらみの話になって公共投資に話が限定されましたが、もう一つの柱が規制緩和です。一番良い例が、携帯電話。これは自民党政権ではなく、細川政権がやった最大の功績です。規制緩和は法律一本を変えれば(国債なしに)、それで済みます。それで何兆円もの市場を生み出しています。シュンペーター的なイノベーションや経営の効率化(=失業者の増大)とは全く別の経済がそこに存在しているのです。
もちろん、したがってこの規制緩和は、自民党(+公明党、保守党)では無理です。それは自民党が無能なのではなくて、与党だからです。与党=規制(=権力)とはほとんど同義です。だから、規制緩和はうさみさんの民主党以外にはできません。それは民主党が有能なのではなくて、野党だからです(郵政族がいるのが気になりますが)。細川政権が規制緩和をできたのは、まだ成り立ての与党だったからです。したがって、この不況を本気で脱出する気だったら、「やっぱり自民党だよな、竹中だよな」なんて見識ばることをやめて、黙って民主党に票を入れた方がいいのです。竹中の錯誤は、「構造改革」を「与党」に入ってやろうとしたことです。しかし「構造」(レヴィ=ストロース)とは変化しないものの代名詞です。「構造改革」というのは矛盾した言葉なのです。
黙って民主党に票を入れるのは、かなり我慢のいることですが、それこそが現在の不況論のもっとも実践的で具体的な見識と言えるものです。民主党に票を入れるのに「骨太の方針」なんて必要ありません。「骨太の方針」なんて出していたら、民主党なんて無い方がいいということになるに決まっているじゃないですか。それでも竹中が与党のイデオローグになるよりははるかに賢明な選択(決断)です。
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