私の不況論 ― 竹中批判 2003年03月03日
私の知人(であると同時に大学の後輩でもある)、民主党のうさみ登(http://www.usami21.com/index.html)の掲示板を見ていたら、竹中の『あしたの経済学』(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=02279831&volno=0000)を薦める発言が目にとまり、ちょっと冗談のつもりで書いた記事が、こんな展開になりました。ご紹介します。なお、「うさみ」さんは時々、私の「毎日」に登場したりしています(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=44.40.1、http://www.ashida.info/trees/trees.cgi?log=&search=%89F%8d%b2%94%fc&mode=and&v=409&e=res&lp=409&st=0)。彼は、あの森田健作と同じ選挙区(東京4区)なのでなかなか勝てません。私は政治や政党活動とは全く無縁な存在ですが、こんな知人がいるのもたまには楽しいものです。再録に際しては、読みやすさを意識して少々修正していますが、ほとんどそのままです。
65.あしたの経済学 はんちゃん 2003/03/01 (土) 05:09
うさみさん、こんにちは。
竹中大臣の「あしたの経済学」の読後の感想はいかがですか? いつもの「きわめて」などのコトバを多用した文体(たぶん談話でしょうね。)で、楽しく読めるし、内容的にもポジティブに日本経済を引っ張っていこうという提言が多く、良い内容だと思います。小泉さんに是非はあっても、この世界的経済学者の命がけの「実践」に、本気で対案を出し、議論できる人ってそう何人もいないような気もしますが。。。。
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66.Re: あしたの経済学 ashida 2003/03/01 (土) 21:26
こんなときに緊縮財政政策を打ち出してはいけません。増税しても、消費税を上げてでも、政府が率先してお金を使うことをしなければ(つまり、増税は財政の健全化のためにではなく、政府が率先してお金をつかうことのために必要なのです)、この超デフレ状況を脱出することはできません。金融政策(銀行政策)などいくらこだわっても意味がないのです。竹中を「世界的経済学者」などと呼んではいけません。専門用語をレトリックのように使うくだらない“学者”にすぎません。
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67.Re^2: あしたの経済学 はんちゃん 2003/03/01 (土) 23:48
ashidaさん、こんにちは。お返事ありがとうございます。
もしかすると、ashidaさんは「あしたの経済学」で竹中さんがなにを言っているのかお読みになっていないのでは。しかも、
> 政府が率先してお金を使う
という方向性は、80年代からずっと続けてきた将来の右肩成長を前提とした借金上積み経営をさらに続ける、ということになりませんか? ここはとても基本的な、おそらく小学校高学年から中学生でも子供によっては考えているかもしれないくらい基本的なポイントだと思います。20年後の国家の財政を正常化するために、今できることをやるべきだと思うのです。税金の収入よりも国債で借りる金額のほうが大きくなってしまった2003年度なのに、いったいどんな財源からどこに投資すれば財政を正常化できるのでしょうか。竹中さんを論破するのは、かなりタフなことだと思います。
>くだらない“学者”
などと揶揄(やゆ)するのはいとも簡単ですが、彼を論破することのできる経済学者が世界中のどこにいるのかできれば教えてください。なお、税金の無駄遣いをやめて、「税金できこりを雇って雇用創出&山を守る」という乱暴な感じの話ではなく、なにが無駄遣いで、きこりを雇うのは本当に無駄遣いではない(コストパフォーマンスに優れているのか)をちゃんと考慮した論調でお願いしたいのです。私はどこか支持する政党とかを持たず、非連続の立場で思考しているつもりです。どなたか説明できる方が日本にいるなら、教えてください。よろしくお願いします。
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69. Re^3: あしたの経済学 ashida 2003/03/02 (日) 02:52
バカを言ってはいけません。緊縮財政主義こそが史上最悪の国債発行を余儀なくさせました。国家の財政の「正常化」は企業のリストラやリエンジと違って、効率経営化にあるのではありません。国家は「失業者」を出すことが許されないからです。失業者は竹中の言う「セーフティネット」論では救えません。もともと「能力がない」から失業者になっているのですから(「効率経営」側からすればそういう“理由”になります)、そんな人たちにいくら再教育しても職などないのです。教育(能力)がないから失業するのではなく、雇用需要がないから失業するのです。それが今言われる「不況」です。
国家の経営の基本は、能力がないひとでも「それなりの」職を与えることにあります。それが国の経済というものです。私なら(くだらない「特区」構想などに寄り道しないで)たとえば、首都高速道路を(土地代と工事代の安い今の内に)一気に拡張整備します。これだけでも、GNPを数パーセント押し上げます。都市の、票にならない、公共投資を一挙に進めるのです。
こういった効果的な公共投資以外に現在の不況を脱出する契機はありません。「セーフティネット」で失業者など救えません。旧労働省はもともと貧乏な官庁で、雇用保険以外にお金の使い方を知らなかった官庁です。そこにお金を投資することは、地方の公共工事に投資するのと同じくらいに意味のないことです。失業者は今の不況には再教育では絶対に救えません。というか、労働者の再教育は労働の配分を変えることはできますが(これが労働省やわれわれ教育機関の仕事ですが)、労働の総量を増やすことはできません。不況時の政府の“経営”は仕事を作り出すことであって、再教育することではないのです。そんなことは、経済学のイロハです。あなたと竹中の発想は、企業経営と国家経営とを同列に扱うところから来ています。国家論に於ける緊縮財政論は、くだらない会社の経理部長止まりの議論です。要するに単に“ケチ”なだけということです。国家は失業者を出せない。そのためには、何をすればいいのか。これが公共経済学の課題です。このことに、緊縮財政論は何一つ答えていません。財政(旧大蔵省)のために国民が存在しているのではありません。国民(労働者の雇用)のために財政が存在しているのです。
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70. Re^4: あしたの経済学 はんちゃん 2003/03/02 (日) 09:36
ashidaさん、お返事ありがとうございます。興味深い内容で、しばらく考えていましたが、実名で書いている内容にしては大胆すぎるような・・・。(笑)
もし国家運営側の立場、たとえばあなたが首相の立場で同じことを国民に言えますか?
「あなたがた失業者は能力がないから失業者になっているのですけど、あなたがたに再教育しても職のない不況なので、「それなりの職」を与えて対応します。」って。(笑)
どうしたのですか? 論理が破綻しすぎているような気がしますよ。
他にも財布に1000円しかなくて、しかも借金が1000円あるし、来月には借金が1200円に膨らんでしまうんだけど、「一気に工場の製造ラインを拡大整備」するために5000円使って、GNPを押し上げる「効果的な投資」をして不況を脱出しよう、って意味のことを書いていますよ。(笑)
もうすこし、実際に国家を運営する側の立場、実際に発言するときの内容をイメージして論じて欲しいのです。人を動かし、国家を動かすための思考や発言のあり方って、ネガティブではサプライズを与えるだけで、長期渡ってチカラを出していく爆発力にはならないないような気がするんですよ。
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73. Re^5: あしたの経済学 ashida 2003/03/02 (日) 12:30
「他にも財布に1000円しかなくて、しかも借金が1000円あるし、来月には借金が1200円に膨らんでしまうんだけど、「一気に工場の製造ラインを拡大整備」するために5000円使って、GNPを押し上げる「効果的な投資」をして不況を脱出しよう、って意味のことを書いていますよ」(あなた)。
こんな読者にしか読まれていないから、竹中はダメなのです。これは、一企業、一家庭のお金の出入りしか考えていません。だから不況になれば(お金が入ってこなければ)、緊縮財政論になってしまうのです。国家経済をこのレベル(主婦の倹約レベルや三流の経理部長レベル)で考えてはいけません。国家が借金(国債発行)をするのは、国民に対してであって、それを使って国家が公共投資をするということは、それを公共投資の形で国民に返すのと同じことです。プラスマイナスゼロです。
公共投資(国債)とは自国民の自己確信の指標なのです。このプラスマイナスを少しでもプラスにするかどうかは、効果的な公共投資を行うかどうかです(たとえば、法隆寺建立やピラミッド建設といった“公共投資”はもう何百年、何千年に渡ってもプラスを生んでいます)。私なら首都高お台場線(レインボーブリッジ)や三号線、四号線、あるいは箱崎インターにもう1レーン(片道三車線)を作ります。そして都市の高速料金を(期間限定でもかまいませんが)無料にします。大阪環状線もおなじように拡張投資と高速料金を無料にします。これで充分です。大都市の渋滞を解消するだけでもGNPは数パーセント上がります。しかもこれは、不況の(土地代と工事費が歴史的に安い)今しかできない公共工事です。これこそが、現在の法隆寺建立、「長期に渡ってチカラを出していく爆発力」(あなた)ある公共投資です。これができないのは、道路族が地方議員で占められているという政治的理由にすぎません。この政治問題に隠れて、竹中(や旧大蔵省派の小泉)の緊縮財政論が前面化しているにすぎないのです。
もう一つ、あなたは私が実名で「それなり」という言葉を使ったことを批判しています。それは全く間違っています。竹中やあなたこそが「セーフティネット」論によって労働者を差別しているのです ― 元々この言葉は日本では、竹中とは仲の悪い金子勝(元法政大学教授で、今は何と竹中と同じ慶応大学にいる)が使い始めた言葉ですが(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=01697782&volno=0000 、http://www.shinshokan.co.jp/sho/j-keirin.html)、二人はこの点ではどちらも無能な経済学者です。
自分たちこそが社会的な勝者であると幻想している人(自分だけは絶対に失業しないと思っている人)の論理が「セーフティネット」論です。「それなり」とは社会には色々な人がいるということです。色々な人がいる(“能力”では測れない色々な人がいる)ということを国家は雇用創出的に(教育によってではなく)保証しなければならない。能力主義的な能力論(=「セーフティネット」論)こそが、国民を企業競争(個別企業の衰退に関わる競争)の論理に組み込む差別主義的な労働論なのです。そういったことが全くわかっていない経済学、それが竹中の経済学です。彼を「世界的経済学者」などとおだててはいけません。小野善康(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_result_book.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&kywd=%BE%AE%CC%EE%C1%B1%B9%AF&ti=&ol=&au=&pb=&pby=&pbrg=2&isbn=&age=&idx=2&gu=&st=&srch=1&s1=za&dp=)や竹森俊平(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=02230946&volno=0000)以下の経済学者にすぎません。
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75. Re^6: あしたの経済学 はんちゃん 2003/03/02 (日) 13:29
ashidaさん、こんにちは。お返事ありがとうございます。深く考えさせられます。
> こんな読者にしか読まれていないから、竹中はダメなのです。
正直、読んでない人はもっと論外だと思いますが。。。竹中に賛成するのか反対するのかどちらの立場の人も必読の内容、タイミングですから。
どうやらashidaさんの考えは、日本は決して倒産しない、という前提で語られているように感じられます。倒産寸前の企業が発行する株式や借り入れって、どうなのでしょう? 日本は日本の経済を維持するためにあたかも企業のように生き残りをかけて競争性優位を持つ必要があるのではないかと思います。倒産するかもしれない危険な国家の国債って、どうなんですか?
おそらく首都高速などの交通の整備もひろく環境の整備として大切なことなのは深く同意しますが、お金を稼ぎ出すチカラを強化することもとても大切なことであり、そのためにヒト、モノ、カネの3つのリソースのうち、ヒトを強化育成していこうと考えるのはごく当然の発想だと思います。それともashidaさんも、うさみさんも、これ以上進歩発展学習の余地はなく、すでに完成されていると思って(思い上がって)いるのですか?
国民の全員が、経済のあまりに順調な伸びを50年味わってしまって、それを前提とした社会で来た。そしたら沈没しそうになってきた。その沈没しそうなタイタニック号を、なんとか沈没から迂回させてみよう、という試みについて論じ、急ぎ実行していくべきだと思うのです。
主婦の倹約のレベルでは企業の復活も国家の復活も論じられないのは明らかなのですが、国家の復活のために企業の生き残りと同じような考え方を適用してみるのはおそらく有効だと私は思います。
総力で工夫し、戦うことで、もしかしたら日本は沈没しなくて済むかもしれない、そう思ってその方法ってなんだろう、と考えています。
社会的な勝者、というお話ですが、現在、日本全体が敗者であるかも、と考えるのが妥当だと私は思います。小泉さんや竹中さんが思い上がっているとは私は思いませんがそこは良くわかりませんね。
>そういったことが全くわかっていない経済学、それが竹中の経済学です。
そのように決め付ける前に、国家の運営に参加することで最強になっている最先端の経済学者の話が平易な表現で書いてある本をぜひ読んでみてください。
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76.Re^7: あしたの経済学 ashida 2003/03/02 (日) 14:13
「どうやらashidaさんの考えは、日本は決して倒産しない、という前提で語られているように感じられます。倒産寸前の企業が発行する株式や借り入れって、どうなのでしょう?」(あなた)。
わかっていない。なんで、また一企業の借り入れ論になるのですか。国債は自己借金だと言っているでしょう。私の論理は明白です。好況時には緊縮財政を、不況時には公共投資を、それだけのことです。それが(あえて言うなら)国家のバランスシートです。
「日本は日本の経済を維持するためにあたかも企業のように生き残りをかけて競争性優位を持つ必要があるのではないかと思います。倒産するかもしれない危険な国家の国債って、どうなんですか?」(あなた)
まだ、企業倒産と国家倒産を同じレベルで考えていますが、国家の“倒産”とは、「インフレ」のことです。なぜ、この経済学があなたにわからないのか?
「おそらく首都高速などの交通の整備もひろく環境の整備として大切なことなのは深く同意しますが、お金を稼ぎ出すチカラを強化することもとても大切なことであり、そのためにヒト、モノ、カネの3つのリソースのうち、ヒトを強化育成していこうと考えるのはごく当然の発想だと思います。 それともashidaさんも、うさみさんも、これ以上進歩発展学習の余地はなく、すでに完成されていると思って(思い上がって)いるのですか?」(あなた)
その脳天気な考え方こそが、能力主義だというのです。全員が「進歩発展学習」をしたところで、低位の人間は必ず存在します。そもそも「進歩」「発展」という概念そのものが相対主義なのですから。問題は、雇用需要がないのだから、低位の人間は必ずあぶれるということです(1位がいたら、必ずビリもいるということ)。それが〈失業〉です。したがって問題は相対主義的な教育ではなくて、雇用創出なのです。
「そういったことが全くわかっていない経済学、それが竹中の経済学です」(ashida)。そのように決め付ける前に、国家の運営に参加することで最強になっている最先端の経済学者の話が平易な表現で書いてある本をぜひ読んでみてください」(あなた)。
他人(ひと)に本を薦める前に、その本を読んで感激しているあなたが何を言うかがすべてです。たとえば、「留学はすごく勉強になるよ」と薦めてくれる帰国大学院生が、あるいは「MBA(経営修士)は取得しておいた方がいいよ」と薦めてくれるサラリーマンの先輩が、とてつもなくくだらないことを言ってたり、してたりしていたら、あなたは留学する気やMBAを取る気が起こりますか? その人そのものが何を言うか、どうその人を自分が評価しているのかなしには、その人がどこで何をしていようがどんなエライ人を知っていようが関係ありません。つまり竹中を薦めるあなたは竹中なのです。つまりあなたが竹中現象です。〈他者〉とはいつもそのように存在しています。竹中を擁護したいのなら、あなた自身が私の国家経済論に対峙する必要があります。それがあなたが私に竹中を薦める意味でなくてはなりません。
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77. Re^8: あしたの経済学 はんちゃん 2003/03/02 (日) 14:26
ううむ。天気が良いし、出かけるところなのですが、ashidaさんの書き込みに気づいておもわずカキコ。(勉強になります。)
>国家の“倒産”とは、「インフレ」のことです。
ここ、あとで勉強しておきます。倒産=インフレ?
>全員が「進歩発展学習」をしたところで、低位の人間は必ず存在します。
「底上げ」という意味では良さそうに思うのですが、ここももうすこし考えてみます。
>竹中を擁護したいのなら、あなた自身が私の国家経済論に対峙する必要があります。
読む「こと」をすすめているだけです。信者でもアンチでも読むべきタイミング、内容だ、といっているだけですよ。反論する前に、相手が何を主張しているのか「聞くこと」は重要だと思うのですが。というか、最新の発言を聞かず読まずして否定しているのはナゼ? (でも、ashidaさん面白いから楽しみにしています。)
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