「ヒロタ」のチョコシューが … 2001年10月20日
今週、「ヒロタ」がつぶれた。あのシュークリームのヒロタだ。いつも魔が差したように、「ヒロタのシュークリームが食べたい」と思うときがある。風邪をひいて何も食べる気がなくなったとき、ふと、「ヒロタのシュークリーム」と口にするときがある。赤坂見附の「しろたえ」のシュークリームではなくて、「ヒロタ」のシュークリームなのだ。
「買ってこようか」と家内。電車にのって買いに行かせても、いざ、手元にくると食べたくなくなるのが病人の食というものだ。でも弱っているときにも食べる気にさせる食べ物が、本当の食べ物でもある。食べ物というものは食べようと思ったときにはすでに終わってしまっているモノなのだ。
私は中でもチョコシューが大好きだった。焦げ茶色のチョコを表皮にしたようなチョコシューだ。表面のチョコの堅さとシュークリームの表皮のしなやかな柔らかさが何とも言えないハーモニーになっていた。
それに何より、少し小さめのあの大きさがよかった。一口か二口で食べられる大きさが良かった。五つ入りの縦に並んだシューが入ったパッケージで買って食べるときも、太って死んでもいいやと何度もやけくそになって(ちょうどそういった気にさせる大きさのシューが5個入りでパッケージになっていた。一列に少し傾けて小さなチョコシューを五つ並べるこの細長いパッケージがヒロタの成功の秘密だったとも思う)、家族の誰にも食べさせずに隠れて食べていた。現に、高一の息子に「ヒロタが倒産した!」と叫んでも、「それって何?」と、ことの重大さに気づかない。よく考えれば、私ばかりが食べて、息子に食べさせていなかったのだ。たしか、家内に「こんなおいしいシュークリーム、早くから子供に食わせたら、ろくな子に育たない」と言いながら、食べさせていなかった。冷蔵庫に“保管”するときにも「太郎に見つからないように奥にしまえ」なんて言っていた。今となっては後悔。息子の人生にヒロタのチョコシューが登場しない。嗚呼、なんと寂しい人生か。
一時は年間で130億円くらいあった売上が、最近は50億円くらいになっていたらしい。たいへんなことだ。会社更生法の申請らしいから、吉野家のように見事によみがえってほしい。
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