何が失政か(国民負担率が0.4ポイントも上がる…)? 2001年03月20日
もうすぐ参議院での予算審議も終わる。今回の予算委員会は、まったくくだらなかった。野党が「予算だけは通す」ということを前提に戦ったからである。
森総理の失政が見えているものだから、余裕の対応だったのかもしれない。しかし「失政」とは何か? 国民支持率が低いということが失政なのか? そうかもしれないが、支持率が低いことの意味は何か? そもそも政府の政策の最高表現である「予算案」を丸飲みして、「失政」とはどういうことなのか? こんなバカな「失政」批判はありえない。現在の不況政策を批判するのに、機密費問題や諫早湾の干拓問題を取り上げねばならない意味がどこにあるというのか。そんなバカなことをやっているから高市早苗のようなお嬢さん議員に「森政権のどこが悪いのよ」などと居直られるのだ。
そんな予算委員会の質問の中でも印象的だったのは、自由党の鈴木淑夫の質問(2月9日)だった。彼は、今回の予算案が、4月からの雇用保険料の値上げを含んでいることを指摘し、実質的に2.4兆円の所得税増税を行っていることを批判していた。来年度は国民負担率(国民所得に対する税金+保険料支払いの比)が0.4ポイント(36.5から36.9に)あがるらしい。この数字は、悪名高い橋本財政再建政策での七兆円増税が国民負担率を0.5ポイントあげたこと(翌年からマイナス成長になってしまった元凶)を考慮に入れれば、放置できない数字だ。介護保険が昨年10月から(65歳以上の人は)倍になっているのだから、去年末から今年にかけて実に「4兆円以上」(鈴木淑夫)の増税を、森政権は行っているのである。
この個人消費(高度資本主義の景気の生命線である個人消費)に直接影響する大増税を行っていることが、森政権の国民支持率の低下の最大の要因であって、失言や機密費問題はそのあだ花にすぎない。こんな「予算」を「予算だけは通す」と言いながら黙認して、野党は政権党の何に反対するというのだろうか。
加藤紘一も、「国民支持率が低い」という指摘だけで立ち上がったがために、派閥を超えた政策論争を展開できなかった。それが敗因だったのである。要するに、加藤は野党的だったのである。国会内で仲間の〈議員の数〉が少ないときに勝てる要素は国民支持率ではなくて、政策論争を挑むことである。人を頼りにすると裏切られるが、政策は裏切らない。
かつて武村が、小沢と対決して新党「さきがけ」を作ったとき、(小沢の)政策はいいが、「手法がよくない」とわけのわからないことを言っていたのを思い出す。政策が一致するというのなら、対立する能力(資格)はすでにないのだ。だからこそ、武村新党は解体してしまったのである。政策がなかったからだ。加藤と同じように武村も単なる心理主義的(人間主義的)な対立を画策しただけのことなのである。
自民党は、すでに完全に末期症状を呈している。なぜか2ヶ月前からテレビで野党と同席する(公開議論する)ことがなくなった。報道2001(フジ)、日曜討論(NHK)、サンデープロジェクト(朝日)では、同じ時間に同席しているのに、最初に自民党議員が、あとには野党議員がずれて登場する。自民党議員が同席を拒んでいるのだ。党内では箝口令が厳しく敷かれているらしい。議論すると損だ、と自民党(あるいは与党)自らが思っているのである。こんな政党はもはや「国民政党」ではありえない。同席(公開議論)させられないテレビジャーナリズムも情けないが ― あの田原総一郎でさえ、菅直人が、生番組ゆえに直接、政調会長の亀井や公明党の冬柴書記長に議論を売るのを、気を使って阻んでいた。田原総一郎も所詮その程度のジャーナリストなのである ― 、自民党もここまで落ちぶれてしまったのである。
すでに自民党は、小渕政権で終わっていた。小渕の死は、自民党の死だ。なぜ小渕は死んだのか。答えははっきりしている。公明党と連立政権を組んだからだ。かつて中曽根康弘が自民党を離党して、反自民政権を組織した小沢を批判して「小沢君は公明党と組むという政治家としての禁じ手を使った」と言ったときがあったが、その禁じ手を使っているのは今では自民党自身だ。もともと「是々非々」を党是としていた政党が政権党になること自体が矛盾だ。政権につくということに、「非」はあり得ないからだ。政権政策を持てない党が与党になること自体が、小渕総理の命を縮めたのである。そこまでしてしか、自民党が政権を保持することができなくなっている。たぶん、自民党がテレビ番組で野党と同席できないのは、政権政策が不可能になっているからだ。
私の勝手な理想は、自民党と民主党が連立政権を組むことだ。そこで、派閥の再編がおこり、再度、“自由”党と“民主”党に分裂すればいいのである。
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