スーツ選びは、糸の数 2000年12月06日
ワイシャツがそろそろなくなってきて、教え子の勤めている小田急ハルクに(久しぶりに)行って来た。私は、首周りが44.5㎝もあるので、既製のワイシャツが駄目。情けない。いつも教え子割引のきく小田急でワイシャツを作っているが、電話で頼もうと思ったら、いつもの色がもう絶品になっており(私は、いつも少し濃いめのグレーを愛用しており、みんなから飽きられている)、行って再度色を決めるしかなかった(もちろんまたグレー系にしようと思っていた)。
帰りにせっかくハルクに来たのだから、と思って(魔が差して)、スーツ売り場に行ったら、これがいけない。気に入ったのがあって、どうしようか、と迷う。店員がよってきたので、「これ、糸の数、多いですか?」と尋ねる。私は、スーツ選びには、必ず糸の数を聞くことにしている。スーツが良いか悪いかはほとんど糸の数できまるからだ。夕方、帰路につくサラリーマンの後ろ姿を見て下さい。膝の後ろの部分がしわになっているスーツ(パンツ)があるでしょう。あの原因(のほとんど)は、糸の数が少ないからです。手を机の上に置いて肘を曲げたときにできる折れ皺が何とも言えないまろやかな(?)ループを描けるのは、糸が多いスーツを着ているときです。朝から、深夜の飲み会を経て、帰路でどしゃ降りの雨に見舞われても、パンツの線が消えないのは、糸が多いパンツをはいているときです。スーツは、糸の数がすべて。形でも色でも値段でもありません。
この糸の数を着る前(買う前)に見破るのは難しい。よく、おやゆびと人差し指で袖口を挟んでこする人がいますが、これではなかなかわかりません。私も必ずやりますが、5万円以下と10万円以上のスーツでも、この“診断法”では難しいと思います。
まず、店員に「これ、糸の数、多いですか?」と聞きます。それで、何のこと(そんなこと聞いてどうするの)? と戸惑いをおぼえる店員がいたら、そんな店のスーツは全部、糸が少ない、と思った方がいいです。すぐ立ち去ること。
この質問にのってくる店員がいれば、その店はまとも。すくなくともその店員はスーツ選びのパートナーになり得るということ。小田急の、その店員(岩井弥生さん!)はきちんとのってきました。「糸の数って、どうやってわかるの?」と私。「こうするんですよ」と言って、その彼女は、袖口より少し上のところをつかんで両手でもみくちゃにしました。「皺の戻り具合でわかりますよ」と。「なるほど」。これは「普通かな」。それでも、この「普通」は79000円もする。10万円以上のスーツを横に並べてもらったが、見かけでは(私には)わからない。「糸の数という点では、ここにおいてある10万円以上のスーツは、スーパー1200の数になります」と言う。「何、そのスーパー1200って言うのは?」。初めて聞いた言葉だ。「糸の数(細さ)を示す、業界の指標で、数が多ければ多いほど、糸は細く多くなります」と言う。「でも10万円以上でも(他店や他のブランドでは)1000以下のものもあります」。「10万円以上では1200はないと」とも付け加えてくれる。いい勉強をさせてもらった。しかしそうは言っても、「やっぱり金をかけないと駄目なのかな」と暗い気持ちになる。
でも私には、こういうものにお金をかける気がしない。靴と時計と洋服に金をかける人の気がしれない。いくら大切にしても必ず傷が付くからです。この3つは、時間がたつと駄目になる(傷んでいく)というよりは、使ってすぐにでも傷がつく、という宿命をもっている。これにお金を使うというのは(基本的にけちな)私にはわからない。
とはいえ、お金持ちというのは、こういったすぐにでも傷がついて使い物にならないものにでも、お金を使える人たちのことを言うのだろう。それを「ステイタス」というのだ、と(ついこの間)教えてくれたのは、テラハウスのDTM系の講師をして下さっている桐谷浩司(元ズーニーブーバンドリーダー)氏だった。なるほど、「ステイタス」というのは、そういうときに使う言葉なのか、とヘンに納得してしまった。
79000円のスーツでさえ、教え子の社員割引セールで59000円で買う私に「ステイタス」はほど遠い。嗚呼…。
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とても面白かったと 思います。先生が ものを 大切に するところも綺麗に撮られた写真もいろいろ勉強に なります。